第52話 2号君改造計画3だぜ!

 ミサイルのテストをして数日。ついに俺の2号君の改造が終わった。改造じゃなくて修理して追加武装を取り付けただけだろうって? そういうのは言いっこ無しだぜ! 改造という単語のもつ語感と、そしてロマンが大事だからな。


 実際にどんな感じで仕上がったのかといえば、基本的には2号君そのままに、砲塔左横に4連装ミサイルランチャーを取り付けた。そしてこの中には全長2m、直径7、6cmのミサイル型体当たりゴーレムが入っているんだ。下側の2発のミサイルはぴかぴか弾。上側の2発のミサイルは通常弾になっているぜ。実際の91式よりもちょっと長いが、まあ、それはよりスピードがでるようにというわけだ。


 ふっふっふ、そしてそう、気づいたか? ぴかぴか弾搭載ミサイルを、わざわざ2発搭載しているのだよ。これは俺の魔力もがんがん伸びていて、ぴかぴか弾を2発までなら撃っても問題なくなったからなんだぜ! くう、最高だぜ!


 あとは、そうそう、壊れた箇所に関しては食料庫と冷蔵庫はともかく、砲塔旋回装置なんかは全部ミスリルで修理したんだぜ。ミスリルだと魔力の消費が大きくなるんだが、俺の魔力が成長していることもあり、ミスリルをもっといっぱい使っても大丈夫だろってことで、壊れた箇所から随時ミスリルに交換しようって話になったんだ。ふっふっふ、いずれフルミスリルに改造してやるぜ。とはいえ、そうそう壊れないだろうから、そうなるのはずっと先だろうがな。




 そんでもってジンクの武装ゴーレムも順調に改造が終わった。ジンクの武装ゴーレムは剣と盾は完全にダメ、全身の装甲もボロボロということで、うん、こっちは改造っていうか、ほとんど作り直しだった。


 だから、ジンクの武装ゴーレムはなんと、全身ミスリルという非常に豪華な出来上がりになっている。ちょっとずるいよな。でもまあ、これは仕方の無い処置だ。前回みたいな戦い方をする場合、関節にせよ装甲にせよ。どっか弱い箇所があると、そこがボトルネックになって、そこに応力が集中して簡単に壊れちゃうらしいんだ。ジンクの武装ゴーレムの場合、モノコックだしな。というわけで、結局全体の強度をあげるしかなかったってわけさ。


 んで、ジンクの武装ゴーレムにも、当然対空用の追加装備が付けられた。ジンクの武装ゴーレムの追加装備はその名もクローミサイルだ。このクローミサイル、武装ゴーレムの右腰~右背中に取り付けられており、普段はちょっと大きな箱みたいな感じなんだが、展開するとまるで追加の腕のように、武装ゴーレムの右肩上に現れるんだ。


 いままでは無骨ながらもオーソドックスな雰囲気だったジンクの武装ゴーレムが、この装備展開時には一瞬でゲテモノ風なシルエットに早変わりだ。いや、ジンク本人の美的センス的には有りってことらしいからいいんだけどさ。なんか、俺の美的センス的にはさ、どっからどうみても悪役のロボみたいに見えるんだよな。だって、よりによって右肩から腕が1本生えるって、結構極端なシルエットじゃないか? しかもこの腕、腕部分はともかく、手の部分は本来の手よりでかいんだぜ? 


 まあ、見た目の話は置いといて、性能としてはなかなかの優れもののようだ。簡単に言っちゃうと、この追加腕の肘から先がミサイルになっていて、ターゲットをロックオンすると、そいつ目掛けて飛んでいくってわけだ。そんで、飛んでいった腕と飛んでいかない肘の部分がワイヤーで繋がっていて、ターゲットを掴んで引きずり落とすってわけだな。


 手は大きい上に、わにのあごみたいに閉じる方向に関しては強力な関節がついている。おまけに手の表面にはミスリル製の返しの付いた突起がたくさん生えてるから、1度捕まったら逃げるのは困難というなんともたちの悪い兵器になっている。


 もちろん武器の性質的に、単純な対空装備というだけじゃなく、対地上兵器としてもつかえるぜ。ジンクの武装ゴーレムでは捕らえにくい高速で移動する獲物を捕獲し、引きずり寄せることも出来るってわけだ。


 ちなみにワイヤーの長さは1kmだ。だから当然この兵器の射程も1kmだ。んで、ワイヤーは細さと丈夫さを両立しないといけないってことでワイヤーの素材は当然のようにミスリル製だ。細いと当然強度が問題になるんだが、ミスリルとジンクの金属強化魔法の腕によって、その問題はカバーできたって話だぜ。ちなみにこのワイヤー、収納されているのは右腰のあたりだ。んで、発射の時はクローミサイルの勢いで勝手にでていって、敵を捕獲すると釣りのリールみたいな装置で巻き取るんだそうだ。




 俺とジンクはお互いの兵器の出来栄えをそれぞれチェックしあう。なにせ今日やっと完成したからな! とはいえ、作ったのはどっちも父ちゃんの工房だから、お互いの兵器を作るのを横で見てたのでそこまで新鮮味はなかったりするけど。


「ジンクのクローミサイルは、普通に照準があるんだっけ?」

「ああ、そうだ。アイアンみたいにミサイルゴーレムに気軽に命令できたらいいんだけど、そうはいかなくってな。普通にロックオンして発射するタイプだ」

「なるほどな~。って、あれ? 左側に付いてる機関砲も新しくなってる?」

「ああ、新しくして貰ったぜ。口径そのものは30mmと今までと一緒なんだが、銃弾に魔法がかけやすい工夫と、切り札としてミスリル弾を装填出来る様にしてもらったんだ」

「なんだと!? 俺のアイデンティティーが!」

「アイアンみたいに2属性融合魔法は無理だけどよ。金属強化魔法だけなら俺のほうがちょっと上手いだろ? それようってわけさ」

「でもよ、金かかるぜ。特にジンクのは機関砲だ。発射レートだって高いだろ?」

「あくまで切り札だよ。セレクト式になってて、通常の金属弾、ミスリル30%弾、フルミスリル弾と、切り替え可能なんだ。まあ、割合としては8:1:1だから、基本は普通の金属の弾撃つけどな」

「なるほど」

「それよりアイアン、2号君なんだけど、左側にだけミサイル4つも積んで、バランス悪くねえの? 俺の武装ゴーレムは今回の改造で、重量バランス的にはむしろ良くなったけどよ」

「ああ、そいつは平気だぜ。今まで両側にスモークディスチャージャーが付いてただろ? そいつを、ミサイルランチャーをつけるに当たって、左側にあった分を右側に移動させたからな、トータルでの重量バランスはそこまで悪化してないはずだ」

「ミサイル4発とスモーク6発だと、ミサイルのほうが重いと思うんだが」

「そんなことないぜ。なにせスモークはピンチの時用ってことで、とにかく性能重視で、値段とか他のことを無視した高性能品だったからな。地味に重かったんだよ」

「なるほど、そういうことか」

「ふう、でもやっとだな。これで半日帰りなんていわずに、弁当もって文字通り日帰りで一日中狩りが出来るな!」

「ああ、本当だな。なんだかんだいって、俺達2人だけでの狩りはまだいったことないからな。明日が楽しみだ!」


 俺とジンクは、新しい相棒と共に、これからの狩りの日々に思いをはせていた。のだが、そんな俺とジンクに、ラピおばちゃんから無慈悲な一言が放たれる。


「あ~、2人とも、盛り上がってるところ悪いんだけど、兵器造りとかしていたこともあって、ぜんっぜん勉強がはかどっていないんだよね」

「「え・・・・・・」」

「だから、これからは午前中は勉強ね。狩りに行くのはお昼食べて午後からにしなさい」

「「ええ~!!」」

「ええ~! じゃない。アイアン君だけじゃなくて、ジンクまで最近サボり気味だったでしょう!」

「「むぐぐぐぐ」」


 どうやら俺とジンクが思う存分狩りを出来るようになるには、もうちょっとかかりそうだった。


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