第51話 2号君改造計画2だぜ!

 2号君改造計画と、ジンクの武装ゴーレム改造計画を立ててから数日。父ちゃん達と細部をつめていたのだが、1つやっておくことがあった。そう、その兵器が使えるものなのかのテストだ。


 俺の2号君の場合、もちろん対空ミサイルのことだ。対空ミサイルを取り付けるのはいいものの、そもそもこの世界のミサイルの誘導システムがどうなっているのかを俺は知らない。いや、ミサイルそのものがあることそのものは知ってたんだぜ。なにせテレビで見た軍の武装ゴーレムの中に、ミサイル搭載型があったからな。ただ、俺の思っていた91式携帯地対空誘導弾と同じように使えるのかわからないってことで、今から母ちゃんにミサイルの仕組みについて解説してもらうところだ。


「さ、アイアンちゃん。授業を始めますよ!」

「は~い。でも、対空ミサイルの話なのに、なんで母ちゃんが講師なんだ? この手の兵器は父ちゃんが好きそうなのに」

「ふふふ、それはね。ミサイルの誘導技術は、ゴーレム技術の応用だからなのよ」

「ゴーレム技術・・・・・・。なるほど、そういうことか!」

「あら、流石アイアンちゃん。もうわかっちゃったようね」

「ああ、つまり、カメラを搭載したミサイル型ゴーレムを作って、そいつに見たものに対して体当たりするようなプログラムを組めばいいってことだよな?」

「ええ、そういうことよ。もちろんそのための羽とか推進装置が必要になるし、人型じゃないから、いつもの私達の動きをコピーする方法では制御できないから、それはそれで大変なのよ」

「うん、わかったぜ! うおお! 燃えてきたぜ! ありがとう母ちゃん!」

「あ、ちょっと~」


 俺は外に飛び出して、まずは畑の土でミサイルゴーレムを作ることにした。カメラは無いものの、羽を動かすくらいのことは出来るはずだ。う~ん、だめだな。畑の土だと、薄い羽を作れない。ここはやっぱり金属で作るべきだな。そうと決まればくず鉄置き場から、鉄をもらってこよう。


 俺は金属加工魔法を駆使して、まず棒状の本体を作る。さらに、大きめな羽を4枚、小さめの羽を4枚と全部で8枚の羽を作り、父ちゃんに言って本体と羽をくっ付けるための回転式の関節をもらって来た。これを組合せてっと、うし、ミサイルゴーレムの完成だ。魔力を流せば、うん、問題なく羽が動くな。本来の羽は、発射後に展開したはずだけど、今はいいや。


 んで、え~っと、カメラで敵を捕らえるとして、動きを制御するには、確か前に付いてる4枚が操舵翼で、後ろの4枚が安定翼だったはずだから、こっちに行きたい時はこの前の羽とこっちの前の羽をこうやって動かして、え~っと、バランスが崩れそうになったら後ろの羽をこう動かす? うう~む、意外と難しいな。


 だが、そう簡単にあきらめん。俺とて元日本男児だ。戦車好きとはいえ戦車ゲームとかばっかりやってきたわけじゃない。飛行機ゲームだって当然やってきた。どの羽をどう動かせばいいかくらい、ある程度はわかるってもんだぜ! でも、意外と難しいな、大きい固定翼が無い分こっちのほうがコントロールがシビアな気がするぜ。


「あ、ここにいたのね。アイアンちゃん、話は最後まで聞きましょう」

「うん、ごめん。でも母ちゃん、この羽を動かすの、結構難しそうなんだけど」

「1から作ろうとすると大変なのは当然よ。でも、いまアイアンちゃんの持ってるミサイルみたいな、一般的な形状のミサイルなら、既存のプログラムがあるから、それを使えば楽勝なのよ!」

「そんなのあるんだ?」

「もちろん! 軍の武装ゴーレムだってそういうのを使っているの。だから、ミサイルを扱う上で一番重要なのは、姿勢制御プログラムとかそういう部分じゃなくて、標的をミサイルに教えるほうなのよ!」

「それって、あの標的に向かって飛んでいけとか、そういうこと?」

「ええ、そうよ」

「でもそれってさ。そんなに難しいことじゃないよな?」

「それはそうよ。個人の技量に大きく左右されるなんて、兵器としての安定性が悪いじゃない」

「それもそうだな」

「というわけで、練習用のミサイルゴーレムを借りてきてあるから、それで練習しましょう」

「そんなのまであるんだ」

「ええ、そうよ。そうじゃなきゃ軍人さんだってミサイルを使えないもの」

「おっしゃあ、わかったぜ!」

「じゃあ、まずは私がお手本を見せるから、アイアンちゃんは見ててね」

「おう、わかったぜ!」


 母ちゃんはそう言うと倉庫から長さ1m、直径20cmくらいの羽が8枚あるタイプのミサイルっぽいものを持ってきた。そして更に、畑の土を丸めて、こちらも直径20cmくらいの球を作り出す。


「この畑の土が標的で、いまからこのミサイルを当てるからね。魔力の流れとかをちゃんと見ててね」

「おう!」


 俺は母ちゃんとミサイルを凝視する。母ちゃんは畑の土の塊を空へぽ~んっと放り投げる。するとすぐさま母ちゃんからミサイルに魔力が流れる。恐らくいまの魔力でミサイルへ指示を出したんだな。そして、45度くらい違う方向へミサイルを力強く投げる。投げられたミサイルはすぐさま方向を変えて土の塊を追いかけて、見事に命中。土の塊を貫いた。


「おお~! 当たった!」

「当然よ~。じゃあ、今度はアイアンちゃんやってみてね」

「おうよ!」


 俺も母ちゃんと同じく畑の土の塊を作って、それを放り投げる。そして素早くあの土の塊に飛んでいけとゴーレムに指示を出す要領でミサイルに魔力を流し、土の塊に対して30度くらいの角度で放り投げる! すると、俺の投げたミサイルは土の塊目指して方向転換くるんと向きを変え、見事に土の塊を貫いた。


「おっしゃあ!」

「あら、流石アイアンちゃんね」

「ふっふっふ~。でもさ、このくらいだれにでも出来るんじゃないの?」

「それがそうでもないのよ。ゴーレム技術は私達には普通のことでも、一般的なドワーフの視点からすると、難しいことのようなのよね」

「そうなんだ」

「ええ、だから、だれでも使えるように、専用のロックオン装置を普通は付けるのよ」


 なるほど、確かに普通ミサイルって機械的にロックオンするもんな。


「後は取り付け位置なんだけど、アイアンちゃんが魔法をかけやすいように、アイアンちゃんが普段座っているコマンダーシートの周辺に取り付けたいの。だから、砲塔の左側の外面に配備したいのだけど、いいかしら?」

「もちろんいいぜ! ロックオンのためのスコープとかは入らないとしても、発射のためのボタンは付くの?」

「ええ、もちろんよ。魔力も流さないとだから、トリガータイプの発射装置を付ける予定よ。もちろん、グリップ部分から魔力を流しやすい細工をしてね」

「なるほど。そだ、そのグリップって、固定するんじゃなくて、ケーブルで多少の遊びをつけることは出来るかな?」

「ええ、可能よ。でもどうして?」

「ミサイルを撃ちたいときって、基本対空戦闘になるんだけど、砲塔の中からだと標的が見にくいだろ? だから、砲塔上部から顔を出して獲物を把握したいんだよ。だから、砲塔上部からでも撃てるようにしたいんだ」

「そういうことなのね。もちろん可能よ。ただ、相手の姿形が完全にわかったら、敵を直接視認中じゃなくても撃てるから、それは忘れないでね」

「もちろんだぜ!」

「とはいっても、ミサイルの旋回性能と、カメラの稼動範囲の関係で、あまりきつい角度からだと旋回しきれないから、気をつけてね」

「うん、ちなみにどのくらいの角度で撃つのがいいんだ?」

「出来れば真っ直ぐ正面に捕らえたほうがいいわ。ミサイルのカメラの動作範囲は真横までは動くものが多いけど、発射の時点で限界まで旋回していたら、それ以上曲がってくれないからね。ちなみに旋回性能はアイアンちゃん次第よ」

「おれ次第?」

「ええ、ミサイルは速ければ速いほど曲がらなくなっちゃうのよね。羽以外にも、推力偏向ノズルとか、ミサイルを急激に曲げる技術はあるけれど、どうしても速さによる限界があるの。だから、アイアンちゃんがミサイルの推進剤に混ぜる火魔法の強度で、最高速度と旋回性能がきまるの」

「なるほど。でも、基本はぴかぴか弾の予定だから、速くしたいかな」

「ええ、それがいいと思うわ。そのほうが威力も出るし、敵に防御魔法を使う時間を与えにくいからね」


 こうして、このミサイルが十分に使えるものと確認した俺は、さっそく2号君へ取り付けるための作業を開始するのだった。


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