第26話 新しい戦車6だぜ!
お次は大本命の76mm砲だが、その前に昼飯だ。俺はジンクと一緒に昼飯を食べる。
「なあジンク、ジンクも武装ゴーレムであの手の的を攻撃したりしたのか?」
「おう、俺もやったぜ。剣や装甲、関節に全力で金属強化魔法をかけて、思いっきり切りかかったぜ。下から2番目までなら1回の攻撃で破壊できて、3番目の的は3回ってところだったな」
「すげえな、たった3回の攻撃で3番目が壊れたのか。俺なんて30発もかかったのに。ちなみに4番目はやった?」
「おう、たしか30回くらい攻撃したかな。結構頑丈だったけど、何とか壊せたぜ」
「ほ~、すげえな」
「それで母さんに、4番目くらいのランクのモンスターだと、このくらいの攻撃はしてくるけど、これを受け止めるか、あるいはかいくぐって30回も切れるのかって言われて、武装ゴーレムぼろぼろにされた」
「お、おう、そうだったんだな。まあ、俺の大砲の威力を楽しみにしててくれ」
「ああ、わかったぜ」
さて、昼飯も食い終わったし、あとは寝て起きれば大本命の76mm砲か、く~、今から楽しみだぜ! やべえな、興奮しすぎて寝付けねえかも知れねえ。
魔法大砲も魔法機関銃と同じく、砲弾に魔力を込めやすい仕掛けや、銃身を守る仕掛けがしてあるんだよな。炎金属融合魔法をかけるから、同じ魔法にみえて、レベルは魔法機関銃よりも高いんだ。それだけじゃねえ、薬莢とその中の火薬も魔法対応型にしてあって、薬莢内の火薬に爆発魔法をチャージできる様になっているし、その爆発の威力に耐えられるよう、薬室なんかも強化魔法がかけやすくなってるんだよな。
あと、砲弾も3種類もあるんだぜ。まずはAPCRだ。戦中の戦車が対戦車用に積んでいたやつで、日本語だと硬芯徹甲弾だな。この手の対戦車用高性能弾は、普通の戦車にはあんまり配られなかった砲弾らしいんだけど、我らがへるにゃんなんかの対戦車車両には優先的に配備されてたって話だ。とはいえ、2号君のAPCRは一味違うぜ。2重構造になっているのは同じだが、内部が重金属、外部が軽金属という構造じゃあない。内部に炎と金属の融合魔法を閉じ込め、外部は金属強化魔法をかけることにより、内部の炎金属融合魔法のエネルギーを保持する構造になってるんだ。これにより発射後も、重要な炎と金属の融合魔法の拡散を防いでくれるってわけだ。いままでは魔法をかけ終えてた瞬間から炎金属融合魔法の拡散が始まってたらしくて、無駄な魔力も多かったんだってさ。まあ、この外部にかけてる金属強化魔法も、俺が魔力を流すのを止めると、どんどん弱くなっていくみたいだから、弾の準備をしたらすぐ撃たないといけないんだけどな。
次に榴弾だな。これも普通の爆弾じゃないぜ。内部の火薬に爆発魔法をチャージでき、更に外部には金属強化魔法をかけれるようになっている。目標は爆発の破片で下から2番目のランクのモンスターを倒し、出来れば3番目にもダメージを与えることだな。
最後にキャニスター弾だ。これは所謂ぶどう弾ってやつだな。ライフリングで回転するのを防ぐためにスリップリング付きのサボに入れられている。対応する魔法は金属強化魔法だけだ。こいつも対雑魚用だが、ダンジョンなんかでの対モンスター戦はどうしても接近戦になりやすいからな、榴弾よりも使いやすそうだぜ。
すやすやすや・・・・・・。
う~ん、寝る前はいろいろテンション高かった気がするんだけど、流石は5歳児ボディだな、興奮して寝付けないとか一切なく、いつも通り爆睡だったぜ。ま、これで魔力もばっちりな状態で発射試験が出来るな。うし、外行くか。
「あら、アイアンちゃん、ぐっすり眠れた?」
「おう、ばっちりだぜ!」
「それじゃあ、早速はじめましょうか」
「まず何から撃てばいい? 右から3番目?」
「いいえ、3番目は融合魔法なら簡単に穴が開くと思うから、4番目にしましょう」
「わかったぜ!」
4番目か、機関銃じゃあ絶対に壊せないやつだな。そしてジンクが30回攻撃しないといけなかった相手か、ふっふっふ、やってやるぜ!
俺は2号君に乗り込むと、ローダーゴーレムにお願いしてAPCRを装填してもらう。そして、大砲や砲弾に魔法をかけていく。ほほう、これが魔法大砲か、砲弾への魔力のかけやすさがだんちだな。何にも無しだと数10秒はかかる俺の炎金融合魔法が、たったの5秒で終わっちまったぜ。こいつはまじですげえな、感動ものだ。っと、感激してる場合じゃねえ、さっさと撃たないと維持に魔力を消費するからな。さくっと撃つぜ! くらいやがれ!
ぼっふ~ん!
俺の撃った砲弾は見事に右から4番目の的を貫通し、バックストップの土の山にふかぶかと突き刺さった。俺はラピおばちゃんと戦った時みたいに、砲弾が爆発するんじゃないかと構えたが、何も起きなかった。
「あれ? 爆発しないの?」
「ちゃんとした魔法砲弾は爆発しないわよ?」
「そうなの?」
「ええ。だって簡単に爆発しちゃったら、威力が分散しちゃうじゃない。以前ラピちゃんに撃ったときに簡単に爆発したのは、それだけ無駄が多かったってことね。あと、この砲弾はちょっといい金属使ってるのよ!」
「いい金属?」
「ええ、ミスリルが10%くらい入ってるの」
「え、じゃあもしかして、高級品?」
「そこまでじゃないのよ。10%だからね。でも、後でちゃんと回収しましょ。ミスリルの成分だけでも再利用しないとね! じゃあ、次にいきましょうか」
「おっけいだぜ!」
なるほど、俺の魔法が普段よりかけやすかったのは、魔法大砲の影響だけじゃなく、砲弾のおかげでもあったようだな。さて、それじゃあ、最後の的をぶち抜くとしますか! 俺はAPCRを装填して魔法をかけ、最後の的である一番左、モンスターのランクでいえば下から5番目の的目掛けて発射する。
ぼっふ~ん!
俺の撃った砲弾は見事に的に命中する。まあ、200mくらいしか離れてないし、的はそこそこ大きいから、はずしようが無いんだけどな。だが、そこにはキズ1つ無い5番目の的がたっていた。
「まじで!? 効かないの?」
「う~ん、やっぱりアイアンちゃんの魔法でも、ミスリル10%じゃあターゲットファイブは厳しいかな?」
「なあ母ちゃん、これ、何発撃てば貫通しそう?」
「そうねえ、30発? う~ん、もっとかしら?」
「そんなに硬いのか~。この魔法大砲なら消費魔力も少ないし、10発は撃てると思うんだけど、壊すには30発以上か、だいぶ足りないな」
「そうねえ。よし、秘密兵器を使いましょう!」
「秘密兵器ってなに?」
「ぴかぴか弾よ!」
ぴかぴか弾って、この隅っこにあるやつかな?
「ぴかぴか弾ってこれ?」
「そうよ。ミスリルが10%混じってる砲弾じゃなくて、それはミスリルが主成分の砲弾なのよ!」
「なんか高そうだぜ!」
「ええ、実際高級品よ! ただ、高いのは加工費じゃなくて、素材の値段だからね。回収できれば問題ないわよ」
「なるほど、じゃあ遠慮なく使わせてもらうぜ!」
「ええ、ばっちり撃っちゃって! ただ、さっきの砲弾よりも魔力をいっぱい込めれるから、気をつけてね」
「ああ、わかったぜ」
ふっふっふ、すげえな。ちょっと魔力を流しただけでこの砲弾が魔力との親和性がめちゃくちゃ高いのがわかる。つい笑っちまったぜ。っと今はこいつの実力を見せてもらうのが先だな。俺はぴかぴか砲弾に魔法をかけていく。魔力の流れ的にもAPCRの金属違いってとこだな。だけど、すげえぜこいつは、さっきのよりもはるかに魔力が流しやすい。そして母ちゃんのいうように容量も多いな、魔力をガンガン込めれるぜ。俺は10秒くらいかけてようやく炎金属融合魔法をかけ終えた。ふう、チャージには時間が掛かっちまったが、魔力はさっきの7倍くらいは込めれたかな? つまりこれ、1発しか撃てないってことか。いざという時の切り札ってところかな? ん~、でも、計画的に使わないと魔力がそもそも確保できないな気がするな。っと、そんなことり早く撃たないとだ。さっきの砲弾より、魔法のキープに使う魔力も多いぜ!
「母ちゃん、撃つぜ!」
「ええ、いいわよ!」
「ファイアー!」
どっお~ん!
すさまじい爆音が鳴り響き、視界が発射炎で完全になくなったかと思ったら、すさまじい衝撃がきて思いっきり戦車の中で吹っ飛ばされた。
ごん! ごん!
ばふ~ん!
「いってえ~、なにが起こったんだ?」
「さっすがアイアンちゃん、すごい威力ね! あら? アイアンちゃん大丈夫?」
「うん、あちこちぶつけちゃったけど、身体強化魔法とかは常にかけてるから、大丈夫だぜ。それより、的は壊れた?」
「ええ、見事に壊れたわよ!」
「よっしゃあ!」
おお! まじか!? 普通の弾だと30発撃ってもダメそうなやつが、一撃とは、ぴかぴか弾すさまじいな! そして俺は外に出る。すると、すぐにジンクがやってきた。
「すげえなアイアン、なんだよ今の」
「今のは秘密兵器のぴかぴか弾だ!」
「ぴかぴか弾? よくわかんないけど、でもすさまじかったぜ」
「そうなのか? 2号君の中にいたうえに、発射の衝撃でこけてたからどうすごいのかわかんなかったぜ」
「そうか? じゃあ教えてやるよ。見てみろよ、あのバックストップ」
「あれ? 山が変な形になってるな」
「ああ、アイアンの砲弾が的をさくっと貫通して、勢いそのままにバックストップの土の山に、深々と刺さったんだよ。その時の衝撃で、土の山がちょっと崩れたぞ」
「ほ~、それであんなことになってるのか。あれ? でもそれだと弾頭の回収が面倒だな」
「回収するのか? まあいい。次は音とマズルフラッシュもすごかったぜ。魔法サプレッサーをつけてたみたいだけど、威力に耐えられなくてぶっ壊れたみたいだな。いい音だったぜ! あと、マズルフラッシュも50mくらい派手に出てたぜ」
「そうだったのか! なるほど、どうりでやたらとうるさくて眩しいと思ったぜ」
「あとは2号君の跳ね上がりだな。撃った瞬間に車両が思いっきり跳ね上がったんだぜ? 拳銃じゃあるまいし、なんでそんなに跳ねるんだよってくらいに跳ねてたぜ!」
「俺が派手に吹き飛んだのはそのせいか。ちょっと2号君軽すぎたのかな?」
「かもな、10トンだっけ? 流石に軽すぎね? でもまあ、ここまで実力に差があると、逆に気持ちいいな」
「ん? 実力差なんて無いだろ?」
「いやいや、大有りだろうが。最後の一撃がミスリルの力だとしても、その前の4番目の的はアイアンが1撃、俺は30回だぞ?」
「いや、そもそも4番目を撃った砲弾も、普通の砲弾じゃなくて、ミスリル10%配合の合金だって母ちゃん言ってたぞ」
「そうなの?」
「おう、10%でも結構違うみたいだから、ジンクの武装ゴーレムも、剣をミスリル合金にしてもらえば、一気に強くなるんじゃねえの?」
「なるほどな。でも、ミスリルか~、10%とはいえ、母さんが許可くれるかな?」
「なにかまずいのか?」
「ああ、あそこみてみ?」
ジンクにいわれるがままに視線を向けると、なにやら母ちゃんと父ちゃんがラピおばちゃんに怒られていた。
「なんで父ちゃんと母ちゃん怒られてるんだ?」
「たぶん最後に撃ったミスリル砲弾のせいだな」
「ミスリルってまずいの? 高価なものってのは知ってるけど、使うのがまずいようなものじゃないんじゃないか?」
「そうでもないんだよ。ミスリルをはじめ、魔法金属ってのは、通常の金属よりも魔力を大量に込めて、高威力に出来るようになるだろ?」
「ああ、それは思ったな。ミスリル砲弾1発で10%砲弾7発分くらいは魔力を込めれたからな」
「でな、そうなると持久力が極端に落ちるんだよ」
「まあ、当然だろ?」
「ああ、当然のことだ。でも、それって危ういんだってさ。魔力をごりごり消費するミスリル武器を持って、そんな武器が必要なほど強力なモンスターのいる危険地帯に行く。そうすると、最初は良くても、すぐに魔力切れになって動けなくなって、モンスターにやられるってパターンがよくあるんだとさ」
「ふむ、でも切り札にはいいと思うんだが? 俺の場合まだ1発しか撃てないから切り札にもしにくいが、ジンクの金属強化魔法なら、そこそこ維持できるだろ?」
「その考え方が母さんは気に入らないんだとさ。切り札がないとまずいところに行くな、まずい状況を作るな。それが母さんの方針だからな。今の俺達の実力でミスリル武器が必要なモンスターと戦うのは、明らかに無謀だろ? なにより、人型のモンスターの手にいい武器が渡ると、他のハンターにも危険が及ぶからな。ハンターギルドでも背伸びした装備の使用は控えるように言ってるんだってさ」
「その理屈はわかるんだけどさ、2号君はジンクの武装ゴーレムと戦うための戦車だぜ? モンスターと戦う予定はないぞ?」
「・・・・・・なあアイアン、お前馬鹿だろ? 対俺対策でミスリルまで持ち出すか?」
「ぴかぴか弾は父ちゃんと母ちゃんがいざというときにって、用意してたやつだよ。そもそも、10%弾すら俺知らなかったし。ジンクの武装ゴーレムのときと同じで、俺は2号君の外枠しか造ってねえんだから」
「そうなのか? 悪かったな。でも、母さんは俺の武装ゴーレムとアイアンの2号君を連れて、ダンジョンに行く予定みたいだったぜ? だからあんなことになってるともいえるが、まあ、付き合えや」
「そうなの? まあいいぜ、付き合ってやるよ」
ダンジョンか、久しぶりだな。でもその前に、ジンクのぼろぼろの武装ゴーレムの修理だな。破損箇所が外装だけならいいんだけど、関節とかにダメージあると、直るのにちょっと時間かかるんだよな~。
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