第11話 勝利のお昼寝だぜ!
俺とジンクはガリウムのおっちゃんに連れられて、ジンクの家のリビングに来ていた。俺とジンクがソファーに座ると、ガリウムのおっちゃんがジュースを出してくれた。だが、俺はといえば、眠い。初めてジンクの家に入ったのだから、ちょっと探検したいところなのだが、もうやばいくらいに眠い。
「そういえば父さん、なんであそこにいたんだ? 仕事してるのかと思った」
「ああ、仕事をしていたんじゃがな、訓練場の結界がオンになったから、様子を見に来たんじゃよ。そうしたらジンクとアイアン君がラピと戦っておったからな。そのまま見学していたというわけじゃ」
「そうか、でも助かったよ」
「うん・・・・・・」
「気にするな。それに、わしが介入せんかったら、エメラさんが結界を張っておったじゃろうしな。それより、2人とも見事じゃったな、まさかラピを退けるとは思わなかったぞ」
「ああ、まさか母さんに怪我させることが出来るとは思わなかった」
「おう・・・・・・」
「アイアン君、大丈夫か?」
「ああ・・・・・・」
だめだ、スーパー眠い、これはもう、耐えられそうにない。俺はソファーに横になると、そのまま意識を手放した。
「おい、アイアン?」
「アイアン君?」
「すか~、すぴ~」
「なんだ、寝たのかよ。驚かせやがって」
「しかたあるまい、あの魔法大砲の威力はすさまじかった。相当無理をしていたのだろうな」
「ああ・・・・・・。正直、俺にはあそこまでの火力はだせない」
ジンクはちょっと悔しそうにする。
「ジンクよ、気にするな。それは得意分野の違いじゃ、エメラさん似のアイアン君と、わし似のお主とでは、得手不得手が違いすぎる。わしやお主は身体強化や防御に長けておるが、エメラさんやアイアン君は放出系の魔法に長けておるだけの話じゃ。実際、最後の攻撃、アイアン君の魔法砲弾に耐えられる強化を、お主は大砲に施せたではないか」
「だけど父さん。アイアンの炎の強化魔法や、火炎放射の魔法、あれも俺には耐えられなかった」
「それも気にするな。わし等が得意とする身体強化魔法は、肉体が成長しきっていない子供の内はどうしても効果が低くなる。そうあせるな。最後の魔法大砲も、今のお主レベルの身体強化魔法があれば、大人の肉体になっただけで、十分耐えられる」
「そうなのか?」
「ああ、わしの体なら、お主の身体強化魔法があれば、髭一本燃えはせん」
「そうか、そうだな。まだまだ俺も子供だしな」
「うむ、それに、わしは守備一辺倒じゃったが、お主の体捌きやスピードは、ラピに通じるものがある。まだまだこれから強くなれば良いさ。それに、お主はわしに似て体がでかい。大きくなるにつれ、図体のでかさというメリットが、確実にお主に味方するじゃろうからな」
「ああ、父さん、また特訓に付き合ってくれよな」
「もちろんじゃ、ダンジョン行きも決まったことじゃしな、ラピにも付き合ってもらって、より本格的にやろう。じゃが、お主もそろそろ限界じゃろ?」
「ああ。やっぱわかっちゃうか」
「当たり前じゃ、わしは父親じゃぞ。お主もしばし眠っておれ、昼飯になったら起こしてやる」
「じゃあ、一眠りしてくる」
こうして俺とジンクは眠りに付いた。しばらくすると、母ちゃんとラピおばちゃんも言い合いが終わったのか、リビングに入ってきた。
「お、ガリウム、ここにいたのか」
「ああ、2人とも寝たぞ」
「あら、ガリウム君、ジュース出してくれたのね。ありがとう」
「いや、気にするな」
「それにしても、ジンクとアイアン君はすっかり仲良しになってくれたようだね」
「そりゃそうよ。私の息子に、ラピちゃん達の息子なのよ。絶対仲良くなったわよ」
「これなら、もっと早く引き合わせてもよかったのかもね」
「でも、アイアンちゃんもジンク君も、小さい頃は寝てばっかりだったでしょ~」
「そうだったね、ジンクのほうが1個上で、最近はそこまで寝てないから忘れちゃってたけど、ジンクも身体強化魔法を使ってすぐ寝ちゃう子だったからね」
「ラピよ、これからはお主もジンクの特訓に付き合わんか?」
「そうだね、あたしの腕も、だいぶ鈍っちゃったしね」
「それもそうじゃが、アイアン君に負けたのが少し気になったようでな」
「アイアン君に負けた? 負けたのはあたしなんだけど」
「うむ、それがじゃな、どうやら先ほどの戦いで、アイアン君に負けたと思っておるようなんじゃよ」
「負けたのはあたしなんだけど・・・・・・」
「まあ、聞け。ジンクは赤子の頃から身体強化魔法を発動させまくっとったから、魔力は6歳の子供にしてはかなり多いうえに体も大きい。実際、わしの6歳の頃どころか、10歳の頃と比べてもジンクは強いじゃろう」
「そりゃあそうよ。そういうことはちゃんと教えてきたし、実際ジンクは6歳としては魔力体も肉体もすさまじい強さでしょ」
「ああ、実際ジンクの強さはかなりのものじゃ。じゃが、最後の魔法大砲や、火炎放射魔法なんかは、現時点ではジンクでは防ぎきれん。魔法大砲は小回りの効かない大型兵器じゃからともかく、火炎放射魔法は小回りの効く技じゃ。1対1でもあれを防げなければ、わしやジンクのようなタイプでは勝ち目がない」
「それは、身体強化魔法を得意とするジンクが、放出系魔法を得意とするアイアン君相手に、体の出来てない子供の頃に不利なのはしょうがないんじゃない?」
「じゃが、それは大人の理屈じゃろう? ラピも子供の頃、エメラさんとの差が気になり、猛特訓してたそうじゃないか」
「それを言われちゃうと、辛いわね」
「そこでじゃ。ジンクに、わしの防御だけじゃなく、ラピのスピードと攻撃力も教えてほしい。アイアン君の魔法は、現状のジンクの魔力と体では防ぎ切れん。じゃが、お主の速度なら、防げなくとも避けれるじゃろう」
「わかったよ。まずは怪我をさせないためにも、ガリウムの防御術を重点的に学んでほしかったけど、もう次のステップに進んでもいいのかもね」
「そうね、私も賛成よ。ラピちゃんのような速度重視の戦法は、ミスや想定外が致命的だからね、ラピちゃんみたいに用意周到なタイプじゃない限り、あまりお勧めしたくない戦法だけど、ジンク君にはガリウム君譲りの防御力がもうあから、戦い方の幅を広げるためにも、速さを足すのはいいことだと思うわ。最悪逃げるのにも使えるものね」
「うむ、そうと決まれば午後から早速訓練をするか」
「そうだね、ラピはどうする? アイアン君の回復力がよくわかんないんだけど、一緒に飯食って特訓していくかい? 一緒にダンジョン行かせるんだろう?」
「そうね~、1度家に帰ってタング君も呼んで来ていいかしら? 1人仲間はずれにすると、拗ねちゃうかもだから」
「ああ、もちろんいいさ」
「お、タングがくるのか、なら、一杯やらんとじゃの」
「ガリウム、あんた、昼飯から飲もうってわけじゃないわよね。午後にジンクの特訓しようっていいだした、張本人がさあ」
「う、うむ、昼飯から飲もうなどとは考えておらんわい。タングも特訓に付き合わせて、特訓終わりの風呂上りにと思ってるのじゃよ」
「ふ~ん、まあいいわ。それじゃあ、お昼作って待ってるから、お昼までにタンクを連れてきてね。そうそう、あくまでもメインは2人の特訓だからね、装備もきちんと持ってきなさいよ」
「わかってるわよ~。それじゃあ、行って来るわね」
こうして、俺とジンクが寝ている間に、午後の予定は決まったのだった。まあ、ジンクと午後も遊べるのなら、俺としては何の不満もないがな。
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