第22話 神様のしわざ

「でね、『そんなに人間が好きなら、人間として一生を終えるがいい!』って言われて、ついさっき〝冬〟から大学生の女の子に転生したんだよ。すごいでしょ」


「はあ、すごいと言うかなんと言うか」


「うふふ。あたし、今は〝氷野真冬ひのまふゆ〟って名前なんだ。見て見て!」


 そう言って、お冬さんは学生証を取り出し、嬉しそうに見せつけてきた。


 彼女の学生証には名前のほか、生年月日や所属する学部と学科、果ては発行日と有効期限までしっかりと記入されている。


 それは奇しくも、俺と同じ年齢、同じ学部だったのである。


 一体何をどうやったのか知らないが、とにかく冬の神様は、俺に気を回して、彼女をこの大学に入学させてくれたようだ。


「本当に人間になったんだ……」


「そ。これからは、ずっと一緒にいられるね、浩ちゃん!」


「お。おお」


 好きになった人と悲しい別れをしたと思ったら、急転直下。


 今度はずっと一緒にいられる、という事実を彼女の口から聞けて、嬉しくなって自然と顔がにやけてしまった自分がいた。


「……あ」


「ん? どしたの?」


「いや、お冬さんが人間になったのはいいけど、住むところとかは決まってるのか?」


「んーん。あたし、ここへ来たばっかりだから何も分かんない」


「おいおい、じゃあどうするんだよ。実家とか無いのか?」


「実家ってなーに?」


「その様子じゃ実家なんて無さそうだな。じゃあホテル暮らし? というかお冬さん、お金持ってるのか?」


「何も持ってないよ。今のあたしが持ってるのは、この服一着だけ」


「えぇ?」


「それにあたしが住むところなら、浩ちゃんのお部屋があるじゃん」


「なっ。なーにを言っとるんだ。そんなのダメに決まってるだろ!」


「何で?」


「まだ早いよ」


「早い? じゃあ夜ならいいって事?」


「いや夜はもっとダメだろ……ってそういう問題じゃなくてだな」


「でも冬の神様は、浩ちゃんに面倒を見てもらいなさいって言ってたよ」


 冬の神様……。


 あなたがお冬さんを同じ大学へ入学させる根回しをしといてくれたのはありがたいが、肝心な衣食住に関しては、どうしてこんなにアバウトなんだ。

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