第12話 突然の告白

「別にそれは……もう治った事だし、そもそも俺がはしゃぎすぎたせいでもあるからな。別に気にしてないよ」


「ほんと?」


「うん。それより、お冬さんは冬っていう立場で日本各地の気温や積雪なんかを管理する立場なんだろ? そんなちょっとした事で、わざわざ俺ひとりを気にかけるほど暇じゃないんじゃないのか?」


 という素朴な疑問を投げかけたら、彼女は透き通るような白い頬をほんのり紅く染め、もじもじしながら俺の顔を見つめてきた。


 何だろう。一体、その視線にはどういう意味があるのか。


「あのね……あたし、あの日の浩ちゃんを見てたら、いつの間にか浩ちゃんの事が好きになっちゃってたんだ」


「なっ、ななな何だって!?」


 お冬さんによる突然の告白に、一瞬頭の中が真っ白になった。


 江崎浩介。俺は頑固な性格が災いして、生まれてこの方、一度たりとも異性に「好き」と言われた事がない非モテ野郎である。


 ゆえに恋愛経験がゼロの俺は、彼女による「好き」という言葉を聞いた瞬間、まるで火がついたかのように顔が火照ってしまったのだ。


「あんなに冬の事が嫌いだった浩ちゃんが子供みたいにはしゃいでるのがとてもかわいく思えて……好きになって。だから、もっと一緒に遊んでほしくって、たくさん降らせちゃったんだ」


「そうだったのか。だからあんなにいっぱいの雪を……」


「でも結果的に、浩ちゃんに迷惑かけちゃったよね。あたしの事、改めて嫌いになっちゃったでしょ?」


「い、いや、嫌いになんかならないよ。むしろ、正直に謝りに来てくれて嬉しいくらいさ」


「ほんと? よかった……」


 お冬さんは、今にも泣き出しそうだった顔を明るくし、ホッとした様子を見せた。


「嫌われたままお別れすることになったらどうしようと思って、今日までずっと不安だったの」


「お冬さん、結構繊細なところあるんだな」


「そうだよー。これでも女の子なんだからね」


「まぁ寒いのは苦手だけどさ、雪遊び自体は楽しいから好きだぜ。さっきも話したけど、子供の頃は雪合戦とかで遊んだりしたしな」


「そうなんだ」


「ああ。だからあれくらいの雪なら、いつでも大歓迎ゴホッゴホッ」


「ど、どうしたの浩ちゃん! 大丈夫?」


 初めて告白してきた相手を意識しすぎたあまり、口が半開きになっていてノドが乾燥していたなんて、とても言えなかった。

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