第2話 冬の訪れ

 およそ四ヶ月ほどのつまらない冬も、三月の下旬に入り、彼岸を過ぎれば終わりを迎える。


 待ちに待ったぽかぽかとした暖かい春が、ようやく訪れるのだ。


 三月の上旬に高校を卒業した俺は、都内の大学へ進学するために親元を離れ、ちょっと狭い1Kアパートの一室へ引っ越して、一人暮らしを始めた。


 慣れない都会の地理と空気と物価に日々戸惑いながら、入学式を翌朝に控えたその日の夜。


 俺は期待が半分、不安もまた半分の複雑な心境で、なかなか寝つけないでいた。


 こんなにドキドキした気分になるのは久しぶりだなぁ、母親に手を引かれ、初めて小学校の門をくぐったあの少年時代以来だろうか。


 ダメだ、あれこれ考えたり、思い出したりしていると、余計に目がさえてきた。


 何か、眠気を誘うようなものが必要だな。


 睡眠薬なんて持っていないし、そこまでして無理に寝付かせないといけないほど深刻な事態でもない。


 携帯電話をいじってネットでも見ていれば、そのうち眠くなるだろう。


 俺は、窓側にある机に置いた携帯電話を手に取るべく、毛布と掛け布団を剥いで体を起こした。


 と、その時である。


 体を起こした俺の視線の先には、いつの間にか、銀色の長い髪をなびかせ、真っ白のキャミソールワンピースを着た、俺と同い年くらいのかわいい女の子が座っていた。


 ――誰だこいつは?


 まさかこの部屋に自分以外の誰かがいるとは夢にも思っていなかったので、驚きのあまり、全身が金縛りにあったようにこわばってしまった。


「こんばんは」


「…………はい?」


 何だこの状況は。


 真夜中に見ず知らずの女の子が、間違いなく施錠をしたはずのこの部屋へ入り込み、笑顔で挨拶をしてきたのだ。


 これが不気味と言わずして何と言おうか。

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