第一章
革命
第3話 バベルの塔
しかし、先ずは計画を練らねばならなかった。そして、非常事態に備えて
だが、相手は天を貫く核シェルターの様なビルだ。GCAタワーは、高さは約1,656m、一面ガラス張りのビルだ。厳密に云うと『GCAタワー』は4つのタワービルが合わさった物の総称だ。
互いに支え合う様に螺旋状に建てられ、緊急時には、ガラス張りになっている外壁に搭載されている『センサー』に反応して、シェルターが起動し、外壁が黒に染まる。
無論、シェルターは内部の至る所にも在り、位置を把握しなければ建物内に閉じ込められ、直ぐに捕まるだろう。
そして『バウンダープロジェクト』の情報は『73内戦』等の情報が保管されている『情報管理室』に保存され、門外不出だろう。それ自体が在るのは明瞭だが、しかしそれの詳細な場所は誰にも知られていなかった。
つまり、元警備会社なだけもあり、警備は世界一厳重と云っても過言ではない状態だ。
ビル内にもビル外にも、義体化した戦闘のプロフェッショナルが
それが一番安全、
しかし、その場合。タワービルの情報を最低限把握し、人ひとりの全ての情報を詰め込み、同伴者も必要だ。1人じゃ怪しまれるからな。
何方にせよ。先ず、1〜2ヶ月で用意、準備し、潜入。1ヶ月間で内部構造を把握し、データを盗む必要がある。
幸い、
「情報屋‥‥仲間‥‥道具も必要か。」
情報屋は直ぐに見つかるだろう。ただ、そこまで厳重なタワービルだ。一般人の情報は信憑性に欠ける。だが、その情報の量が多くなればなるほど、信憑性は高くなる。金はかかるが仕方ない。命には変えられない。
道具は盗むか、改造するか、自作するしかない。既製品では無駄が多い。アシがつく可能性もある。これも金がかかるが承知の上だ念には念を入れなければ、死ぬ事になるだろう。
仲間は普通、見つからない。しかし、金に飢えた者やイカれた奴なら仲間に出来るだろう。だが、やはりこの仕事は素人には任せられない。
--では、『何でも屋』ならどうだろうか?
何でも屋は
無論、
だから、大人の何でも屋は経験が豊富だ。もしかしたら引き受けてくれる奴も居るかもしれない。奴等の中には腕が立つ奴も居る。
--希望的観測ではあるが、賭けてみる価値は有った。
足取りを掴まれない様に行動するのは苦労した。追っ手の視界から完全に消え『此処に居る』様にみせる必要があった。ただ、時間がなく、準備があるので「追っ手が思い込むまで」と云う訳にもいかなかった。
幸い、情報屋は至る所に居た。信憑性は高くなるが、それは『可能性が高くなった』だけで『真実』ではない。尚且つ、非常事態の為の準備も必要だった。
何でも屋が居る貧民街「Sklave(スクラベ)」に隠れ家も買った。産業廃棄物や壊れた電子機器が放棄されたゴミ山があり、それを漁り、改造し、商いとしている者の多い貧民街なら俺の行動も怪しまれ難いだろう。そして、それ故に混雑している為、多少は捜索の手も止まると思ったのだ。
しかも、何でも屋は金が無い時、道具を自作し、仕事をするらしい。俺は『新顔』だが、ここでなら、違和感なく作業を進められそうだ。
そして『同伴者役』だが、コレは先ず、自分を新たなVIPに仕立て上げ、同伴者はボディーガードや家族を演じて貰う必要があった。無論、この『役』には教養が必要だ。
何でも屋は
何でも屋は大勢居たが、しかし条件も厳しく。『GCAタワーに忍び込む』と云う前代未聞の仕事を受ける人は見つからなかった。しかし、此処まで俺が軽々と仲間を募れたのは、彼等が何でも屋だったからだ。
金が1番の彼等には、金を握らせ口外しない事を約束させる。もし、追手らしき人物に言われたら其奴を紹介し、情報を吐かせた上で処分し、高額の"ボーナス"を払う約束だ。出費はさらに
そして、同伴者が見つかったのは3日後だった。意外と早いとも思えるが、命を落とす危険性が常に在る仕事だ。3日間、
3日目の朝、また俺が同伴者を見つける為に貧民街へ足を運び、交渉していると三人組の何でも屋が話しかけてきた。
匿名で仕事をしたいとの事だった。名前をα(アルファ)、β(ベータ)、Δ(デルタ)と名乗った。仕方がなかった。前代未聞の計画なのだ。匿名で仕事をする程、警戒するのは当然だった。
俺は三人と軽く話し合った後に契約した。次は無いと思っていた為、何でも屋と云う時点で即決だった。
αは気の強そうな男性、丸刈りでガタイは良く、筋肉質、サングラスをかけ、ドッグタグを着けていた。
βは男勝りな性格の女性、短髪で細身だが筋肉質、αとは相棒で、よく一緒に仕事をしているとの事だ。
問題はΔだった。彼は、何を考えているのか分からない男性だった。と云うのも顔は笑っているが、それが『仮面』を着けたような笑顔で、眼には何か‥‥一つの
Δはα、βに俺が仲間を探していると云う事を伝え、俺にコンタクトを取ったらしい。
α、βは別の『シマ』の何でも屋だと聞いたらしい。初めは信じていなかったが、話を聞くと信憑性が高くなり、信じたのだそう。
Δも「この
と言ってきた。明らかに怪しいが、大人であるα、βがΔを信じたのだから、ある程度は信じておこう。しかし、彼には特別注意を払うのが得策だな。
無論、追っ手と云う可能性もあるが、追っ手ならば俺が家に帰ってきた所を待ち伏せして仕留めればいい。まぁ、家には罠が仕掛けてあるが、それに気付いているなら、罠を回避しながら待ち伏せる事も可能だ。
それをしていない時点で、追っ手と云う可能性はかなり低い。しかし、低いだけで可能性はゼロじゃない。用心しなければならなかった。
契約内容を一通り話し終えた俺は、三人を自分の家に案内し、仕事内容を説明した。
「先ずは事前準備だ。作業場には道具がある。足りない道具もある。だが、買う事は出来ない、アシがつくからだ。道具は自作するか代用してくれ。」
αが退屈そうに言った。
「俺はここまで詳しくはない。きっと、どこかで手が空くだろう。そう云った場合は何をすれば良い?」
その質問は粗方予想していた。そして、予想通りだった。彼は何方かと云えば戦闘担当と云う感じだった。一方、βの方はそれを補う様に少し知的なイメージを持つ人物だった。
「情報屋に情報を買うなり、仲間に聞くなりして、情報を集めて欲しい。電話はこの無線を使い、連絡を取る。周波数は‥‥」
そうして
【休載中】 罠師 〜外伝〜 Drug&Shot 空御津 邃 @Kougousei3591
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