シャワーを浴びる前に読む話

俺はシャワーを浴びるのが好きだ。


1日の疲れと汚れがどんどん落ちていき、綺麗なカラダとスッキリした気持ちになる快感が何ともたまらない。



ただ、シャワーを浴びる度にいつも何とかならないかと思うことが一つある。


それは、頭を洗っている最中、背中がガラ空きになり、後ろが無防備になること。


頭を流してる時も背中が見られたら良いんだが、残念ながら背中に目は付いてないし、水の中で目を開ける事も不得意だ。


いっそ、床全面に鏡でも引けば何か変わるかもしれないが、床が鏡だと少し恥ずかしさが出てしまう。


そんな事を毎回思いながらシャワーを浴びている。

今日もいつも通りにシャワーを浴びていた「はず」だった。


しかし今日は背中に伝う雫の感じがいつも違って感じた。

俺は急に怖くなって、恐る恐る後ろを振り返った。

でも、後ろには特に変わった所もなく、誰かがいた形跡もない。


俺には幸い、幽霊を見る力はないから幽霊がいたとしても気付かない。


なんだ、気のせいか。


そう思い、ゆすぎ残した頭のシャンプーを落とすためにまたシャワーを浴びると、先ほどと同じような感じを背中に感じた。


やっぱり、何かがおかしい。

そう思って、また後ろを振り返る。

でも、やっぱり後ろには何もない。


なんなんだろう?


俺は仰ぐ形で首を伸ばした。



その時だった。



天井からじっとこっちを見つめる目と合ったのは。


「あーあ、見つかっちゃった。」



そう言うと天井裏の物体は天井から飛び降りて、あっという間に消えていった。


俺に恐怖と床に血の跡を残したままで。

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お気の召すままに 乃木希生 @munetsu

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