気の向くままに

毎日、決まった電車に乗る。

不思議な事に常に同じ位置が空いている。

毎日毎日、同じ景色を眺める。



その中で唯一、毎日違う顔を見せてくれる庭があった。

その庭のおかげで私は時間の流れを認識できた。


草が伸び、

ツボミとなり、

花が咲き、

枯れて散る。


私が同じ電車に揺られて5年間、毎日違う顔を見せてくれた庭があった。



6年目、私は急な異動を命じられ、この電車に乗るのが最後になった。



最後の車窓から見える庭を目に焼き付けようと電車に乗ると、いつもの定位置が空いていない。


新しい景色を探せと言われているような気がした。


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