気が遠くなる

何処か遠くに行きたい。


僕は時々、いやここ最近は、ほぼ毎日思ってしまう。

ある人は「休んだ方が良い」と言う。

また、ある人は「かまってちゃんは面倒だな」と言う。

また、ある人は「行きたいなら行けば良いじゃん」と言う。


正直、どれも正解で、全て不正解だと僕は感じる。

人間の心なんて、その一瞬一瞬で全然違う顔を見せるから。


だから僕はそんな事を考える必要のない世界に行こうと思う。


でも、やっぱり怖いから一回バンジージャンプで練習してみた。

数十メートルの高さから飛んでみたら何か変わるかもしれないから。


結果は変わらなかった。



いや、一つだけ変わったことがある。

高いところから飛ぶ恐怖はなくなった。



本当にビルから飛び降りるとなったら新しい心の一面が見られるかと思ってた。

でも、屋上に立ってみても今回だけは心は新しい顔は見せず、バンジージャンプの時と同じ表情で僕に微笑みかけてきた。


だから僕は少し残念だなと思いながら新しい一歩を踏み出した。


実際にビルから飛んだら意外と地面まで時間が掛かってしまった。

気が遠くなる感覚を最後に僕は『無』となった。


最後の最後で、また新しい心の表情が見られた気がして嬉しかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る