9 君に届け!
僕の気持ち、どうしても伝えたいんです。-何、このメール。
★
現代はSNSがすごく発達してきて、婚活でもなければならないツールです。
婚活サイトも専用のメールツールを常備していますし、お見合い相手との連絡も、SNSやメールがメインという方も多いと思います。
まあ、実際。ありがたいツールではあります。
何せ直接電話となると、面倒くさいと言うのが本音の私としても、婚活相手の交流はSNSが主です。
ほぼ初対面との相手に、いったい何を電話で話せと!?
気まずい会話に時間を費やすならば、もっと他にやりたいことがあるっ!というのが私の本音なんで、電話よりは時間を気にせず、相手の反応を常に敏感に感じる必要もないSNSは、恰好のコミュニケーションアイテムなのです。
ただ、それでも。
このSNSとなると「文字」だけでの交流となり、それはそれで、難儀なこともあるのです。
彼は、これまた仲人さん経由で知り合った方でした。
仲人さん経由のお見合いは、「とにかく会ってみないとわからない」ので、私は日程が会えばお会いするようにしています。
で、その方とはいつものように仲人さん同士で最初は会って、お話しをします。
歌が好きでなんと合唱団にも入っているという彼は、初対面の私に、笑顔で言いました。
「この後、カラオケボックスはどうですか?」と。
まあ、しかし。
この見合いをしていた頃は、「婚活サイトで知り合った相手を殺害」する事件が騒がれていまして。
仲人さん同士経由のお話しと言えど、妙に警戒をしていた私は、
「すいません、人前で歌うのは恥ずかしくて……」
と、お断りしてしまいました。
まあ正直申しますと、ほぼ初対面の人と二人っきりになるのは勘弁して欲しかったんです。
ちょっと横道に逸れますが、このことを幼馴染(女です)の子に言ったところ、
『そりゃあ、好みじゃなかったんよ。あんた、キムタク並みに美形やったら、行こうと思ったろ?』
とのことでした。まあ……否定はしません。(ちなみにこの時の話は、前の章に出て来たイリノオモテヤマネコ級に貴重だったイケメンさんよりは、前の話になります)
もう、このパターンでここまで読んだ方なら、わかりますよね。
って言うか、上手く行っていたら、私は今でも独身街道ばく進していません。
まあそれはそれとして。
彼とは食事をしてお別れしたんですが、とりあえず、お付き合い開始と言う事でメールアドレスを交換しました。
そして、その翌日。メールは来ません。
『次も食事で~』と言っていたのですが、数日経っても来ませんでした。
どうしようかなーと私が思っていたところ、ちょうど仕事に行く前で、外は空が真っ青で綺麗でした。
「空が綺麗だな」と思った私は、そんな文面を打って、メールを交換するきっかけにしようと思いつきました。
思い付いたら、早速実行です。
「こんにちは。今日は空が綺麗ですよね」
とメールを打って、車に乗りました。
返信が来るかな?と思いましたが、その日はメールの着信はありませんでした。
でも、その次の日もさらにその次の日もメールは返って来ません。
これはもう駄目だな、と思っていたところ。
彼と食事して一週間目に、仲人さんから連絡がありました。
『彼から、メールか電話ありましたか?』
「あ、ないですね。こちらから、一度送ったんですが」
『それなんだけどね。彼から、『一度わけのわからないメールが送られて来たけど、関係ないから返信しなかった』って言われたって、あちらの仲人さんがおっしゃっていたのよ』
そう来たか、と私は思いました。
「私はメールのきっかけになるのかなと思って送ったんですけど……」
とりあえず、仲人さんには前向きな対応をしたということは、伝えておかなければなりません。これは、大事です。仲人さんとて、人です。自分が紹介した相手と積極的に交流を持とうとしなければ、その人に紹介しようかと思わなくなって、紹介してもらえる数は減ってしまいます。
『そう……。でも、彼の方が「同じ趣味じゃない人とはやっていけない」って感じで言われているんですって』
「じゃあ、仕方ないですね」
私は、ため息を吐きながらそう答えました。
相手にも、選ぶ権利があります。
「いきなりカラオケボックスに誘われて、抵抗があったのも事実ですし」
『あら、そうなの? 抵抗あるの?』
「初対面の人と二人っきりで個室は、ちょっと……」
『そう……仕方ないわね。ご縁がなかったのよ』
まるで就活の時のお祈りメールのようなことを、仲人さんは言いました。
しかしこの言葉も、嘘ではないのです。
「ご縁がなかった」としか言いようのないことが連続で起こるのが、婚活。
まあ、しかし。「同じ趣味でないと」と拘る彼と、新しい関係を交流しながら作り出して行きたい私とでは、確かにご縁がなかったとも言えるでしょう。
ただし。この顛末を話した時の、職場の人生の先輩方の意見は、全く私とは別でした。
「はあ? あなた、『空が綺麗ですね』というメールば送って、何ばしたかったと?」
「いえ。ただ、メールのきっかけになればなあと思って」
「そぎゃんメールば送って、相手に何ばして欲しかったとね。そりゃ、相手も困惑しなはっよ」
「初対面の人と二人っきりで個室は、ちょっと……」
『そう……仕方ないわね。ご縁がなかったのよ』
まるで就活の時のお祈りメールのようなことを、仲人さんは言いました。
しかしこの言葉も、嘘ではないのです。
「ご縁がなかった」としか言いようのないことが連続で起こるのが、婚活。
まあ、しかし。「同じ趣味でないと」と拘る彼と、新しい関係を交流しながら作り出して行きたい私とでは、確かにご縁がなかったとも言えるでしょう。
ただし。この顛末を話した時の、職場の人生の先輩方の意見は、全く私とは別でした。
「はあ? あなた、『空が綺麗ですね』というメールば送って、何ばしたかったと?」
「いえ。ただ、メールのきっかけになればなあと思って」
「そぎゃんメールば送って、相手に何ばして欲しかったとね。そりゃ、相手も困惑しなはっよ」
「言いたいことば書かなんば、何のためのメールたい」
人生の先輩方、容赦なしです。
でも、これ、その後に参加した婚活セミナーのメールの書き方講座でも不評でした。
「正直、どう返事をして良いか、わからない」
とは、参加された男性の方の意見。
「そうなんですか?」
「うん。怖いよ、どんなことを期待して書いたのか、全然わからないから、どうも返事ができない」
そう言われて、私はうーんと考え込みました。
つまるところ。私はどうやら歌好きのお見合い相手には、「何を考えているかわからない」と思われたのかもしれません。
まあ、「カラオケ一緒に行かない」とのことで、「ないわー」となっていたのかもしれませんが、メールの書き方一つで、色々と深読みされるとは思いませんでした。
私の場合、別に「そうですね」だけで良かったんですけどね。
ただ、私も似たような目には、合ってはいるんです。
その方とは、会ったことすらありませんでした。
これまた婚活パーティーに行った時に、結婚相談所の方に紹介してもらった方です。
ちなみに。
結婚相談所の方が行う婚活パーティーは、イン・ザ・ドア方式狙いが多いです。
つまり、婚活パーティーで人を招いて、本当は自分の結婚相談所に入って欲しいんです。
その方が、実入りが良いですからね。
さて、本題に戻りますが、相談所の方は、男性でした。(今まで出てきた方たちは女性です)
「あなたにぜひ紹介したい人がいるんですよ」と言われて、
「相手にメールアドレス教えて良いでしょうか?」
と聞かれたので、了解しました。
婚活ですから、断る理由はありません。
「よろしくお願いいたします」
だから、そう言って頭を下げました。
さて、それから市内を散策しまして、帰ることにしました。
車で自宅へと戻っている時に、メールの着信音が鳴ります。
何だろう、と思ってコンビニに寄って、車を止めました。
そして、画面を見ると、こんなメールが来ていました。
『はーい★ 僕は今回紹介された〇〇〇〇とだよ。
僕のことは、タッチー(仮称)と呼んでね★
あなたのことは「カクッチ」(仮称です)って呼ぶね。
カクッチはどんな所に行きたい? 今日今から電話で話せるかな??』
って感じの内容でした。(うろ覚えの記録から書いたので、事実とは違いますが、印象的にはこんな感じでした)
ドラマ「太陽に吠えろ!」で有名な刑事さんの殉職シーンで、「なんじゃこりゃあ!」て叫ぶシーンがありますが、まさにそのメールを読んだ私の感想は、それでした。
もうね、嫌悪感しかなかったです。
何故に、見も知らぬ他人に、こんな内容のメールが出せるのか。
しかも十代の若者ならともかく、四十代過ぎの男性ですからね。
駄目だ、と思いました。
初対面の礼儀作法を守れない人は、とにかく私は本能的に駄目みたいです。
でも、この当時はまだ若かったので、さらに嫌悪感がひどかったのかもしれません。
しかし、もう駄目だと思った私は、すぐさま結婚相談所の方のメールアドレスにこのメールを添付して、「すいません、こういう非礼な方はさすがに無理です」と送りました。
そうしたら、おそらく結婚相談所の方から言われたのでしょう。
自宅に戻った後に、再度メールが来ました。
「先ほどは、失礼しました。僕の名前は〇〇〇〇で……」
と、きちんと体裁が整えられたメールが来ました。
でも、私はもう見る気もしませんでした。
多分、メールがああいう内容であるならば、実際会っても同じような態度にされるに違いない、と思ったからです。
これはもう、好みの問題ですからね。
何とも言えませんが、私はそう思ってしまいました。
だから返事をしませんでした。
そうしたら、何と。結婚相談所からも電話が入るようになったんです!
こちらとしては、もう一度お断りをしたので、何回も同じことをするつもりもなかったんで、こちらも無視しました。
着信拒否して、おしまいです。
「嫌だ」とお伝えした以上、その人を進めて来る結婚相談所は信用できない、と判断しました。
まあ、これも。
今から思えば、もうちょっと話を聞いておけば良かったのかなーとも思いますが、結婚相談所に入る時は、「信用できるか」「できないか」は重要な問題なので、これはこれで正しい判断だったかもしれません。
しかし、メールと言うものは、「文字」だけで表現するからこそ、その人の本性が出るのかもしれませんし、表現しにくいものなのかもしれません。
ただ、いくら気軽に送れるからと言っても、相手のことを考えるのは常識の範囲。
最後に出て来る方は、そのことを踏まえてのお話し。
でも、ちょっと特殊な事情がある方でもあります。
何と、メールやラインを使ったことがなかったのです。
この方とは、結婚相談所でお会いしました。
話はスムーズになりました。なかなか変わった経験をされていて、面白いなと思いました。
で、次に会う約束をするために、携帯番号とメールアドレスを交換することになったのですが、前のページのことが発覚。
しかし、初対面の人と「何電話で話すんですか?」と言うのが常々の私は、「すいません、できればメールでお願いします」と頼みました。
我儘だとは思っていますが、けっこうこれは、個人的には重要なんです。
何せ夜はゆっくり過ごしたいし、朝は家事なんかもある。
周りの友人達もメールやラインで交流している私は、電話はけっこうきついんです。
けれど、彼は
「わかりました。ショップに行って、メールのやり方を聞いてきます」
と、言ってくれました。
「すいません、ありがとうございます」
私の我儘に付き合ってくれた彼には、感謝でした。
そして、次の日。
仕事でバタバタとしている時に、ポケットに入れた携帯が鳴りました。
仕事上、携帯はポケットに入れとくことが多いです。
仕事の真っ最中でしたが、ポケットから携帯を出して見ると、知らない携帯番号です。しかし、仕事先の携帯番号は必要最低限に登録しないことにしている私は、登録していない人かもしれないな、と思って出てみました。
「あ、もしもし」
相手は、彼でした。
何故に、私の仕事中とわかって電話してくるのか。
「すいません、仕事中なんでメールでお願いします」
そう言って、すぐに私は切りました。
ポケットに携帯を入れながら、おいおいおい、と思いました。
この時間帯は仕事中だって、昨日会った時言っただろうがっと突っ込んでいました。
ただ、そうは言っても。
「電話したい」と言った彼に、我儘を付き通した立場ではあります。
やはり仕事が終わった後は、きちんと電話に出て、申し訳ないが、メールを使って欲しいと伝えることが大切だな、と思い直しました。
しかし、それでも携帯はなり続けます。
おいおいおい、ともう一度私は突っ込みをして、電源を切りました。
とりあえず、この時は携帯を使う必要はなさそうだったので、良かったのですが、そうは言っても携帯にいつ連絡が入って来るのかはわかりません。
こりゃあ、結婚相談所の人に言って、仕事中に電話をかけてくるのは避けてもらうように伝えてもらうしかないなあと思い、仕事にまい進しました。
それでもって。仕事から帰って来て、ぽちっと携帯の電源を入れた瞬間。
ずらっと画面に映るは、着信記録。
このまま着信拒否しちゃろかな、と思いましたが、それはそれで礼儀に反します。
と、その時。携帯が鳴りまして、画面を見たら結婚相談所の方でした。
「こんにちは。彼から『あなたからの連絡がない』ってお電話があったんだけど、どうしたの?」
「いや。昨日、『今日がお休みだから、ショップに行ってメールのやり方を聞く』っておっしゃってたから、今日の夜にでもメールをするつもりではいたんですよ。でも、仕事中に電話がなったんです。それも、何回も」
「えっ? 本当!?」
苦情めいた私の言葉に、結婚相談所の方も驚いていました。
「彼は何て言っていたんですか?」
「何も。あなたと連絡が取れないってだけ」
「取れませんよ。仕事中ですもん」
私は、ため息と共に言いました。
「とりあえず、お断りして良いですか?」
この時点で、私は彼の印象はマイナスになっていました。
確かに、メールをお願いしたのは私の我儘です。
でも、だからと言って仕事時間だとお伝えしているのにも関わらず、電話をかけてくるのは、明らかにルール違反だと思いました。
「待って。あなたも『電話をしたい』と言った彼に、『メールで』って言っているのよ? 私から彼に言うわ。それで様子を見てくれる?」
けれど、結婚相談所の方はそう私に言いました。
結婚相談所の方の言う通りではあるのです。
私は、彼に我儘を通しています。
「わかりました。メールは朝でも大丈夫だけど、電話は仕事が終わる七時以降にして欲しいと伝えてください。でも、電話に出られないこともあるので、申訳ないですが、メールの方が望ましいです」
「わかったわ」
そうして。
次の日。
来ました、メール。何通も。ほとんど、空メール。
最初こそは真面目に見ていましたが、やはり朝の忙しい時間なので、バタバタとし始めて放置。
そうは言っても、お返事はしなくてはならないなと思い、ぱかっと携帯を開いて、メールの内容を確認することにしました。
そして、書かれていた内容は。
「メールください」
………。
うん。どうしようかなーと、思いました。
メールが苦手な彼が、きっと一生懸命に打ってくれたんでしょう。
努力の末の成果です。でも。
「メールください」
この文面にどんな返事をして良いのか、わかりませんでした、私。
そうして。やっぱり「ないな」、と思いました。
良いも悪いもないんです、こういうのは。
彼は努力をしてくれた。
でも、私は彼へのコミュニケーションをどう取って良いかわからない。
多分、こういうのを「合わない」と言うのでしょう。
だから。きちんとお断りをしないといけないな、と思いながらお仕事に出かけました。
そして、お仕事が終わる夜七時。
しかし、当然仕事は終わりません。
まあ、社会人ですから。そんなもんです。
が、七時なったとたん、鳴り響く携帯の音。
はいいいい!? と、なりました。
確かに、私は夜の七時までは仕事だと言いました。言いましたよ。
ですけどね。ふつーに考えたならば、わかりますよね?
確かに仕事は夜の七時までですが、そんなにすぐに帰れるわけねーだろーがっっっ。
と、私は鳴る携帯の電源をオフにして、ポケットに突っ込みました。
それに、「できればメールの方が望ましいです」とも言ったでしょうがぁぁぁ!となったとたん、罪悪感は見事に吹き飛びました。
「俺の話を聞け」という歌詞のある歌がありましたが、そのフレーズが繰り返し頭の中に流れます。
まあ、それはさておき。
とにかく急いで仕事を終えて、「すいません、やっぱり無理です」と結婚相談所に電話をかけようと、自宅に帰りました。
そうして、ぱかっと携帯を開きますと。
案の定、彼からの着信がずらり。
そして、メールも着ています。
書かれた文面は、「電話ください」
……。うん、たぶん一生懸命に打ってくださったんでしょう。
それは、わかります。それは、理解できます。
ですが、相手の状況を考えずにかけられてくる電話を相手にするほど、私は暇じゃない。
と、言うか。めんどくさい。
ええ。我儘を言った自分もいけなかったですが、もう、本当にそれしか感じませんでした。
もういいか、と思いました。
こんな気持ちでいること事態が相手に対しても失礼ですし、私の中では「もう結構です」という気持ちが強くなってしまった以上、決着をつけることにしました。
とりあえず、結婚相談所の方には
「すいません、やっぱり無理です。本日は夜の七時に電話がかかってきました。確かに仕事終了はその時刻ですけど……。お断りをします」
と、メールを送りました。
反応は、すぐにありました。彼からも、連絡が行ったのかもしれません。
「わかりました。彼にはお伝えしておきます」
との返事に、長いため息が出たのも事実です。
婚活とは、いろんな人達に出会うものです。
そんな人達に誠意ある対応をしつつ、自分に負担をかけないようにする。
なかなか、難しいと私も思います。
でも。うん、でも。正直に申しましょう。
それを考えている時点で、「ない」です。
それを考えてるってことは、「この人とはないな」と思っている証拠です。
もちろん、それを一回目のお見合いで判断することはしない方が良いですが、三回会って、「直接電話で話すのは負担だ」と思ったら、やっぱりそれは「ない」のです。
でも、この事実は、けっこうきついです。
自分の狭量さを感じることは、きついですよ、やっぱり。
婚活の一番きついところは、連続で断られることではないです。
自分の狭量さを自覚させられること、これが一番きつい。
まあ、でも。
女性が男性に嫌悪感を持つのは、本能的なものもあるそうです。
遺伝子的に避けるべき情報が書き込まれていて、その遺伝子を持っている人に嫌悪感を持つようにできている、とのこと。
だから。ある意味、仕方のないことなのかもしれません。
と言うか、好みの関係もあるので、やっぱり本能に従った方が良いっ! てことで。
だって。本能には逆らえませんからねっ!
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