6 あなたを抱きたいです!
「あなたを抱きたいです!」-いや、その後どうするか考えてる?
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前の章を読んだ方は、「同居が嫌で断ったんなら、相手には自分の両親と同居して欲しいの?」と思うかもしれません。
いえ。
私は、「同居」が嫌で前の章の方をお断りしたのではありません。
「女性が全て捨てて当然」と考え、自分が捨てることは一ミリも考えられない、その意識ゆえにお断りしたのです。
それにさらに言うならば、実の両親と「同居」しようとは露にも思いません。
確かに、私は三世代の家族構成で育ちました。
母は、父の両親―つまり、私にとっては父方の祖父母と同居しています。
祖父は寡黙な人でしたが、祖母はかなりプライドが高く、勝気だったため、母はそれはそれは苦労していました。
ですが、母は祖母が亡くなるまで同居を続け、介護もしました。
前の章を読んだ方は、「同居が嫌で断ったんなら、相手には自分の両親と同居して欲しいの?」と思うかもしれません。
いえ。
私は、「同居」が嫌で前の章の方をお断りしたのではありません。
「女性が全て捨てて当然」と考え、自分が捨てることは一ミリも考えられない、その意識ゆえにお断りしたのです。
それにさらに言うならば、実の両親と「同居」しようとは露にも思いません。
確かに、私は三世代の家族構成で育ちました。
母は、父の両親―つまり、私にとっては父方の祖父母と同居しています。
祖父は寡黙な人でしたが、祖母はかなりプライドが高く、勝気だったため、母はそれはそれは苦労していました。
ですが、母は祖母が亡くなるまで同居を続け、介護もしました。
そして、同居をするということは、その父と夫となる方の調整役にならねばならないのです。
結婚相手に同居を望むのであれば、何があってもその方の味方でいること、そしてご両親と相手の方との調整役をきちんとしなければならないのです。
できませんよ、そんなの。
常に味方でいることはできますが、あの父と夫となる人との調整役なぞ、できるはずがないです。
なので、私は自分の両親との同居も望んでいません。
でも。
婚活で「同居」を望んでいる男の方って、それを軽く考えていらっしゃるみたいなんですよね。
多分、こう考えているみたいなんですよ。
『嫁が来れば、何とかなるって』
その方と知り合ったのは、お見合いではなく婚活パーティーでした。
当時の私は、お見合いだけではなく婚活パーティーにも出かけていました。
で、その方とはカップル成立までには至らなかったのですが、パーティーを主催した結婚相談所の仲介で連絡を取るようになったのです。
この時のことがご縁で、今の結婚相談所にお世話になるようになったのですが、それはそれとして。
彼は、とてもイケ面でした。他の婚活パーティーに参加した時、「王子様みたい」と他の参加者の女性に言われたこともあるそうです。
なるほど、一見するとまずはスポーツマンタイプの方でした。
爽やかに整った顔立ち、適度に引き締まった体。
身長はそんなに高くありませんでしたが、それでも気になるほどではありません。
では何故、そんな彼が婚活パーティーに出ているのか。
その理由は簡単でした。
彼は、まず結婚後もご両親と同居をすることを望んでいらっしゃいました。
そして何よりも。
まだお若い年代でしたが、高校卒業後すぐに結婚したそうで、離婚した元妻との間に、中学生のお子さんが二人いたのです。
はい。
ここまで来れば、皆さんご理解されたと思います。
婚活の条件で、まず注意物件とされるのが「同居希望」
そして、その次に注意物件とされるのが、「子どもあり」
その二つの注意条件を彼は背負っていたのです。
なるほど、と思いました。
確かにあれだけ外見のスペックが高いのに、どうりで女子が寄ってこないはずです。
「子どもあり」は仕方ないとしても、「同居希望」は、彼の意識が変わればどうにでもなりそうです。
「え? でも、俺の母親って普通の人だよ。同居するのに、何の問題もないよ 」
だが、しかし。
彼は、爽やかにそう言い切っていました。
その爽やかさは、まるで5月の風のようでした。
でも言っている内容は、ちょっと待たんかいっ!でした。
「俺の母親は普通の人」って、それは当たり前です。
だって、「母親」なんですから。
我が子に酷いことをする母親は、あまりいません。
まるで、聖母のごとき姿に子どもには―特に息子には見えるでしょう。
で・す・が。
「嫁」にとっては、あなたの「母親」は赤の他人です。
たまたま、息子が「嫁」として選んだ他人にしかすぎません。
それは、「父親」にしても同様。
「同居」を結婚の条件にするならば、両親と結婚相手を仲介する覚悟がないといけません。
少なくとも、私はそう思っています。
ですが、彼はそんなことは微塵も考えていなかった。
しかも、彼は離婚原因は奥さんの浮気だったと言います。
「いきなり、家を出て『離婚したい』って言われたんだ。子ども達もあっちに行くって言って、家を出て行ったわけ」
これだけ聞けば、彼はとてもかわいそうな境遇に聞こえます。
「母はずっと孫と住んでいたのに、会えなくなってかわいそうだった」
その時のことを思い出したのか、彼の爽やかな容貌に影が差します。
ですが、私は先ほど衝撃発言を聞いています。
「奥さんにも、何か思いがあったのかもしれませんね」
なんとなく、そんな風に言ってしまいました。
「え、それはないでしょう」
しかし、彼は、キョトンとした表情で私に言いました。
「父親も母親も普通の人ですよ? 問題なんてあるわけないです」
おいっと、私は突っ込みそうになりました。
「父も母も嫁にはよくしていました。仲も良かったですし」
おいおいおいおい、ちょっと待たんかいっっっ。
私は辛うじて、この突っ込みを口に出しませんでした。
何の問題もないならば、元奥さん出て行きませんってば。
確かに直接の原因は、元奥さんの浮気かもしれません。
けれど、そこに至るまでには、積み重ねがあったはずなのです。
何かしらの出来事と思いの積み重ねがあって、元奥さんは彼に「見切り」をつけたのかもしれません。
浮気した母親に子どもが付いて行くというのも、何かしら理由があるはずなのです。
まだ幼かったから、という理由があったとしても、父より母の方が断然子どもに関わっていた証拠とも思えます。
もしかしたら、彼の言う通り、奥さんは、周りは良くしてくれたのに、裏切ったのかもしれません。
「だから、安心してよ。父も母も付き合っている人ができたって言ったら、とても喜んでいたから」
しかし。
そう言って爽やかに笑う彼を見ていると、とても元奥さんだけが悪いとは思えませんでした。
この人は、自分が見たいようにしか周りを見ない。そうとしか、思えませんでした。
ただ、そうは言っても。
彼は、イケメンです。
はあああっっっ!?と言われるかも知れませんが、イケメンとお付き合いできると言うことは、なかなかできません。
イケメンと言うのは、好条件の一つ。
好条件と悪条件が同時に混在しているのが、婚活と言うもの。
その中でイケメンと言う好条件は、希少なのです。それこそイリノオモテヤマネコ並みに貴重なのです!!
容姿は、それだけに拘るのは、婚活現場でも愚かとされます。
しかし、他は好条件なのに、容姿に生理的嫌悪感があったために断ると言う話もあるのです。
正直、迷っていました。
ここでは好き放題に言っている私ですが、婚活市場での自分の立ち位置はわかっているつもりです。
ですが、ね。
まあ・・・・・・賢明なる皆様なら、おわかりでしょう。
ええ、私は彼をぶっ飛ばしました。希少なイリノオモテヤマネコをぶっ飛ばしたのです!
(注意。現実には、ぶっ飛ばしていません)
理由は簡単です。
彼は、「嫁が来たら、全て解決する」と思っていたからです。
ワケガワカラン、と思われた方、もうしばらくお付き合いください。
事の起こりは、彼からのメールでした。
彼には月に一・二回会い、メールで毎日連絡するという交際を続けていました。
仕事に行く準備をしていた時、彼からのメールが届きました。
「あなたを、抱きたいです」
メールには、そう書かれていました。
さて、このメールを読んだあなたは、どんな感想を抱かれましたか?
「かっこいい!」でしょうか?
「はい?」でしょうか?
私ですか?
後者でした。
何故ならば、彼が会うたびに、勝手に盛り上がっていくのがわかったからです。
彼は、私に「子持ちで離婚した俺と結婚していてくれて、両親と同居してくれる人」と幻想を抱き、早く次の段階に行きたいようでした。
でも、私は子持ちは仕方ないけれど、同居は無理だと考えていました。
いや、「自分の方には何の問題はない」と、爽やかに言い切ってしまう人ですよ?
両親と私の仲介者になど、なれるとは、とても思えません。と言うか、なれないでしょう。
そうなれば、別居は必須事項です。
私は、仕事先の人生の先輩達(アラフィのお姉さま方)に相談してみました。
「そりゃ、言わにゃんたい。『同居嫌』って言って、相手の出方ばみなっせ」
「ばってん、気を付けなっせ。多分、嫁ば来て、良か稼ぎ手が増えたと思っとるかもしれんよ」
さすが、人生の酸いも甘いも噛み分けて来た、人生の猛者達です。
言葉の重みが違います。
って言うか、グサグサ来ます。
その言葉を胸に、私は仕事から帰って来たら、早速メールを打ってみました。
「朝のメールって何?」と。
「あ、気に障った? でも、あれが俺の正直な今の気持ちだから!」
と言うメールがすぐに帰って来ました。
まるで胸を張って、どうどうと言っている姿が見えるようです。
「でも、結婚となると、私は同居は嫌なんですけど。それは大丈夫ですか?」
けれど。
この文面のメールを送ったとたん、メールは返ってこなくなりました。
忙しいのかもしれないと、しばらく待ってみましたが、返って来ません。
私は、追加で送ってみました。
「私は、結婚する人と二人で新しい生活を築いていきたい。だから、自分の親との同居も望みません。同居するということは、相手と親の仲介役をやると言うことです。その覚悟、ありますか?」
とりあえず、本音をぶっちゃけてみました。
どう考えても、彼のご両親との同居は無理なのですから、もう隠すことはできません。
「あ、気に障った? でも、あれが俺の正直な今の気持ちだから!」
と言うメールがすぐに帰って来ました。
まるで胸を張って、どうどうと言っている姿が見えるようです。
「でも、結婚となると、私は同居は嫌なんですけど。それは大丈夫ですか?」
けれど。
この文面のメールを送ったとたん、メールは返ってこなくなりました。
忙しいのかもしれないと、しばらく待ってみましたが、返って来ません。
私は、追加で送ってみました。
「私は、結婚する人と二人で新しい生活を築いていきたい。だから、自分の親との同居も望みません。同居するということは、相手と親の仲介役をやると言うことです。その覚悟、ありますか?」
とりあえず、本音をぶっちゃけてみました。
どう考えても、彼のご両親との同居は無理なのですから、もう隠すことはできません。
しかし、メールは返って来ず。
まあ、焦ってもしょうがないと夕飯の支度をして食べたり、家のことをしたりして過ごし、そろそろ寝ますかと言う頃に、彼からメールが来ました。
「あなたは、僕と一緒にがんばってくれるんじゃないの?」
と。
人生の先輩方、ビンゴでしたっっ!
このメールを見た瞬間、思ったのはそれでした。
彼は、養育費を払わなけれはならない子どもがいます。
そして、ご両親の面倒を見なくてはいけない、と思っています。
つまり。
自分自身が抱えている事情が、結婚することで妻にも抱えてもらい、負担が軽くなるのを期待していたのです。
まあ、わかってはいました。
わかってはいたのですが、イリノオモテヤマネコの希少者ゆえに、誤魔化していたところもあったのです。
「私にも、家族がいます。その家族のことも一緒に考えてくれますか?」
「実家から出たら、僕の給料ではやっていけません……」
と言うのが、私の問いかけメールの返事でした。
つまるところ。
その気はないってことです。
「まあ、仕方ないたい」
翌日。
人生の先輩方は、私の話しを聞いて、そう言われました。
「縁がなかったとたい。顔なんて三日もすりゃ飽きるけん」
「そぎゃんたい。顔で結婚はするもんじゃなか」
「顔で腹は膨れんけん」
人生の先輩方は、忌憚のない意見をくださります。
「でも、あんたも相手に『この女のためなら、家を出ても良い』と思わせられなかったってことも忘れなさんなよ」
忌憚なき過ぎて、グサグサ来ます。と言うか、魂砕かれます。
「まあ、がまだしなっせ(がんばりなさい)」
砕かれて、魂が瓦礫状態になった私に、先輩方は励ましの声をかけてくれました。
でもその通りではあるのです。
私も彼のために全てを捨てる気はありません。
だから、ある意味お互い様なのです。
「若い頃に婚活しろ」と言うのは、選択肢がそれだけ広くなりやすいからなのでしょう。
でも。
実はこれには後日談がありまして、数ヶ月後のクリスマスに、彼からのメールがありました。
「お久しぶりです。お元気ですか?」
と言う文面でした。
この文面を見て。皆様ならば、どう思われるでしょうか?
私ですか?
私は「プルータス、お前もかっ」
でした。いやーだって先の章でも出てきた彼と(正しい選択をしてください)、まったく同じでしたから。
きっと彼も私に見切りをつけて婚活したけれど、「同居」「バツイチで子どもあり」の条件がゆえに、上手く行かなかったのでしょう。
だから。
「お付き合い」をしていた私に、また連絡をして来たのです。
もちろん、それは私の勝手な想像です。
でも、私がこのメールに返事をしたとしても、何も変わらないだろうな、と思いました。
そう。きっと彼は私に「自分と一緒に頑張って欲しい」と思うだけで、私の人生とか、家族とか、友達とか、仕事には意識が向かない。
それは、彼が「見たいようにしか物事を見ない」人だから。
-と、言うのはかっこよいですが。
本音を言えば、「いや……今さら?」という思いが強かったのも事実です、実は。
私としては、もう「次」モードに行っていたので、「もう、いっか」となって、お返事はしませんでした。
クリスマスなんて、仕事で「何それ、おいしいの?」状態でしたし。
彼からは、年末にもメールが来ましたが、それは見もしませんでした。
結婚相談所の方から、「彼に連絡取ってないって言われたんだけど、もう未練ない?」と尋ねられて、「あ、はい」とお返事したところ、そこからは一切連絡も来なくなりました。
イリノオモテヤマネコ級の貴重なイケメン彼でしたが、私にはご縁がなかったです。
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