3 頼ってあげると喜ぶよ。
「男の人は、頼られると喜ぶよ」
これは、婚活の基本中の基本。
ゆえに、デートの時は、男の人にナビゲートしてもらうと、もう張り切ってくれるそうです。
うん。でもねえ、「自分の思い通りになること」が前提なんだよね。
って言うか、「周りが思い通りになる」って疑いもしないんだよ。
★
同世代の方とお見合いをした時のこと。
この方とは、ちょっと右曲折ありまして、最初一度目に会った時にお断りされたのです。
曰く、「自分ばかり喋って疲れた」とのこと。
いやー、でも。
君、私に質問ばかりして、私に質問させてくれる隙与えてくれなかったじゃん。
しかし、「仕事の話をしている時の笑った顔が良かったってあなた言っていたじゃない。それを聞いて、またお会いしたいってことになったの」と、相談所の方に言われましたので、会う事にしました。
でも、その「仕事の話」は私がタイミングを計って入れた数少ないもの。
正直どうなんだろう、とは思ったけれど、「来るもの拒まず去るもの追わず」がポリシーの私。
会ってみることにしました。
で、まずはラインで連絡して交流開始。
「先日は失礼しました」とメッセージが来ました。
私としては、婚活はお互い様だと考えています。
断ったり断られたり。だから、「お互い様です。」と返しました。
そしてご飯を食べに行くことになりました。
順調です。何の問題もありません。
初回。彼から、
「何処に行きましょうか?」
とラインです。
まあ待ち合わせしやすいように近辺のショッピングモールで会って、食事はどうしましょうか?と提案しました。
その通りになりました。
んでもって、その食事の時に、
「紅葉を見に行きませんか?」
と言われました。季節は秋です。
「良いですね。私、○○の紅葉が見たいです」
私がそう頷いて返事した瞬間、彼は「え?」という表情になりました。
まあ、一瞬でしたけど。
「良いですね、そこに行きましょうか」
そう彼は言ってくれました。
でも、これってハードル高いよなあと、正直私は思いました。
なんせ、彼はガチガチに緊張してて、食事の時でこれなら、二人きりの時はどうなるか。
だから、提案したんです。
物事に大切なのは「慣れ」です。慣れたら彼もリラックスするだろう。そこに行く前に食事でも行こう、と。
もちろん余計なことは言わずに彼と別れて、翌日にお礼を伝えるラインで提案しました。
「良いですね、行きましょうか」
と彼から返事が来まして、早速日程調整です。
幸い私が平日の休みの時に会うことができるようになりました。
「どこにします?」
と、彼からライン。
私としては、彼と私の自宅の真ん中ぐらいがお互いの負担が少ないかな、と思いました。
何せ彼はお仕事の帰り。
あまり負担をかけてもいけません。
そこで、その辺にあるお店を一つ提案しました。
すると、「そこの閉店時間九時ですよ」との連絡。
あわててホームページを見ると、その通りでした。
ではと、次のお店を連絡しました。
私は、食べるのが大好きなんで、気になるお店は予算が許す限り行くようにしているんです。
だから、自分の家から比較的近いお店には足を運んでいるんです。
『では、そこにしましょうか』
とラインのメッセージが来て、その次に書かれていたメッセージは、『迎えに行きますよ』でした。
それを見た時、「いや、ちょっと待て」と思いました。
まず、君の仕事の時間が終わるのは夕方だ。
それから私の家まで来ると、逆方向も良いところになる。
そして何よりも、まだ知り合って間もない人に自宅を知られることは、避けたい。
さらに、さらに。
君はあれだけ緊張していたでしょうが、それなのに、二人っきりで車に乗れるの!? いやもう、無理でしょうがっ!
と、突っ込みました。
慌てるな、何事にも順序と言うものがある。
そう思いながら、私はこう返信しました。
『大丈夫ですよ、自分で行きます。夜の七時で良いですか?』
と。
『わかりました』
と言う返事が来て、当日。共に夕食を食べました。
「すいません、僕はなかなかお店とかわからなくて」
と、帰り際に彼が言いましたので、
「大丈夫ですよ」
と私は返事をしました。だって、わからないなら、しょうがないです。
食事のお店については、私の方がわかるなら、それも良し。
私としては、全然気にする要素ではありませんでした。
しかし、数日後。
『□□に行きませんか?』
とのラインが仕事中に入りました。
仕事中ですから、すぐに返事をするわけにはいきません。
しかし、それ以上に。
私はおいおいおい、と彼に突っ込みを入れずにはいられませんでした。
前回の食事の時はだいぶんマシになったとは言え、君はまだまだ私といれば緊張するでしょうが!
□□は私達が住む県から軽く片道三時間はかかります。
往復六時間車の中。二人っきりです。
いや、無理だから。と言うか、無謀だからっっ。
まだ水に顔を付け始めたばかりの子どもが、海の沖に向かって泳ぐぐらい無謀なことだからっっっ!と、私は仕事中ずっと突っ込んでいました。
そして、自宅に帰り。さて、どうしたものかと考えていると、彼からラインが入ります。
『すいません、約束の日に仕事が入りました』とのメッセージ。
ありゃ残念と思いながらも、私は
「わかりました。でも、もしお時間があるなら、映画でも行きませんか?」とお返事をしました。
正直、ほっとしたのも事実です。
二人っきりのドライブは、もうちょっと打ち解けてた後が良いよなあと思っていたので。
そして、この後日程調整もして、映画鑑賞もしました。食事もして。
そして映画を見た翌日。
「焼き肉に行きましょうか?」
とのラインが入りました。彼からの提案は、□□の提案以外では、初めてです。
最初の提案をスルーしていますから、ここは乗るべきだろう、と思いました。
だから。
「良いですね。何処にしましょうか?」
と、私はお返事をしました。すると彼から来たラインに、
「それが、僕はよくわからなくて……」
と書いてあり、私はふむ、と思いました。
私の自宅の近辺には、美味しいと評判の焼き肉屋さんがあります。
でも、彼の家からは遠いです。
どうかなーと思いながらも、提案してみると。
「ちょっと遠いですね」
と返事が来ました。
まあ、そうだよねぇと思い、私はショッピングモールの中にあった焼肉屋さんを思い出し、そこはどうでしょうか?と提案してみました。
そうして、しばらくして。と言うか、翌日の夕方。
「僕はあなたとは付き合えません。あなたと一緒にいると、男としてのプライドがぐしゃぐしゃになってしまいます」
とのラインメッセージが来ました。
それを見て、「は?」と私はなりました。
男のプライドって何? えっ? ぐしゃぐしゃって???
正直、彼が何を言っているのか、私には理解できませんでした。
そもそも、プライドって何?
それを後日、幼馴染の子に(女です)電話で言ってみると。
『ああ、たぶん、彼はあんたを誘う前に、自分でシチュエーションを想像していたのよね。こうやってあんたを誘って、こうやって話そうって』
幼馴染は、納得したように言いました。
「はい?」と私はなりました。
『つまり、最初っからシナリオを決めていたのよ。『紅葉を見に行きませんか?』と言った時も、あんたが『良いですね』と言って、『ここが良いんですよ』って持って行くつもりだったんじゃない? でも、あんたは自分が行きたい場所を言ったから、彼にしてみれば、自分が思ったようなストーリーじゃなかったんだよ』
何ですか、それは。
『『迎えに行きましょうか?』って提案も、その後のシチュエーションも想像してたと思うよ。でも、あんたは『いいですよ』って、ぶった切ったんでしょ?』
いや、だって。どう考えても、反対方向ですよ!?
約束の店通り過ぎて、私の自宅に来て、店に行くって、どう考えても時間のロスじゃないですか! それに、知り合って間もない人に自宅は知られたくないし。
『うん、あんたの言い分もわかる。それは当たり前のことだってね。けど、彼は自分の考えたプランを全部否定されたように感じたんだよ。で、あんたに同じことしたつもりだけど、あんた全然気にしていないでしょ。そりゃあまあ、プライドぎったんぎったんにされるよね』
すいません、よくわかりません。
ただわかるのは、私は彼の想像通りに動かなかったら、振られたと言う事。
「……それって、ときめきメモリアルやってろって話じゃない?」
『いや、そうじゃないよ。真面目な人だったと思うよ? 一生懸命あんたと過ごす方法を考えてたんだよ』
「店は知らない、段取りも悪い、しかも緊張していたのに!?」
だからこそ、色々と考えて配慮していたのですが、私は。
なのに、「男のプライド」って。
何だ、それは。
つまり私は、相手のプライドを傷つけぬように配慮して、相手が「俺はちゃんとできた!」と思わせなきゃ行けなかったってこと!?
現実はちっともできていないのに!?
仕事だったらありえませんってば!
『ちょっとした工夫だってば。相手が「迎えに来ましょう」とせっかく言ってくれたんだから、「ありがとうございます」ってまずは返せば良かったのよ。そして、「でもお手数かけますから、自分で行きます」ってメッセージ送れば、相手もそこまで「否定された」って思わなかったかもよ』
いや。
そもそも、彼は水に顔を付けたばかりの幼児ですよ、婚活に関しては。
それなのに海の沖に泳ぎに行こうとしていた、無謀者ですよ!?
あのまま□□に二人で車で行ったら、どんなデートになるかは、火を見るよりも明らか、沈黙の艦隊が二人を支配することは想像に容易い。
それなのに。
「でもそれなら……彼は自分が考えた通りに、事が進むって考えてたってこと!?」
でも、彼はそうではなかった。
「自分の考えていた通りにできる」と考えていたってことになる。
『まあ、そうだろうね』
私の言葉に、幼馴染は苦笑しながら答えてくれました。
顔を水につけ始めたばかりなのに、海の沖まで泳げると思っていた。
何の根拠もなしに。
何、その万能感。
『まあ……ご縁がなかったんだよ。あんたにとっても、彼にとっても』
幼馴染の言葉が、無性に心に響きました。
別に、段取りが上手くなくても良いんです。
お店を知らなくても良いんです。
女慣れしてなくても良いんです。
でも、できないのに「できるよ」と言う顔をして、「できていない」ことを自覚させられたとたん、「男のブライドが!」と言われるんなら、「ちょっと待たんかい」と言った気分にもなりますわ。
プライドって何?
中身のないプライドほど意味はないよ。って言うか、そんなことで「男のプライドが!」って言うなら、段取りぐらいできるようになれ!!と切に思います。
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