2 会話の基本は「さしすせそ」

「さ」-「さすがですね!」

「し」-「知らなかったあ。」

「す」-「すごーい」

「せ」-「センスいいんですね!」

「そ」-「そうなんだあ」

 男心をくすぐる言葉。めんどくせぇぇぇ!




 題名にも、書いた「さしすせそ」。

 婚活でも活用できまする。

 五十代の男性と見合いをした時のこと。

 その方に「ご趣味は何ですか?」と聞かれましたので、「読書です」と答えました。

「どんな物を読まれるんですか?」

 と聞かれたので、

「興味のあるジャンルは何でも読んでいます」

 と答えました。

 ええ。

 死んでも、BL読んでいるとは言いませんよ。

「そうですか。僕は、実用書しか読まないんです」

「あ、どんな物を読まれるんですか?」

「自己啓発の本です。○○○の言葉をまとめた本を読んでいます」

「ああ。あの方、すごいですよね」

 と、私は言いました。

 これくらいなら、知っていますよ。

 あえて伏せましたが、この方、有名ですもん。

 この程度、ネットに上がっています。

 でも、お相手の方、「違う、そんな話をしたいんじゃないんだ!」と言う表情をされました。

 その表情を見た瞬間、「えっ?」と私思いました。

 彼は、言葉を続けます。

「女の人は、あまり自己啓発本を読まれないでしょう?」

「あーそうですね。△△△とかの生き様は好きですけど、彼についての本はあまり読まないかなあ」

 と、それに私は答えました。

 △△△(←伏せてますけど)さんは、すごいなあ、と思っています。

 高校生の時、彼の生涯を追った「知ってるつもり!?」の本を読んで知っていたんです。

 でも、私の言葉を聞いたその瞬間、彼の表情は固まりました。

 ええ、そりゃあもう、見事に。

 そして、私はこの方には「お断り」をされました。

 基本的に、「一度会うだけじゃわからない」を婚活ではポリシーにしている私です。

 いったい何がいけなかったのか。

 答えは、結婚相談所の相談員さんにその時の様子を話して、わかりました。

「あのね、その時に彼が欲しかったのは、『○○○がすごい』とか、『△△△の生き様がすごい』って言葉じゃなかったのよ」

「え? 何がいけなかったんですか?」

 私としては、お相手に合わせてお話しをしたつもりなのですよ。

 ですが、相談員さんは首を振ります。

「あのね、彼はあなたが○○○とか△△△なんて何も知らない人だと思ったのよ。だから、その名前を出したの」

 私は、その意味がよくわかりませんでした。

「『すごーい、私よくわからないけど、そんな難しいのよく読めますね』とか、『そんな難しいの読んでいるなんて、すごいですね』とか、言って欲しかったの。でもあなたは、『○○○ってすごい』とか、『△△△はすごい』とか言ったんでしょ?」

 はい、言いました。話を広げるために言いました。

「あなたは、そんな彼の鼻っぱしを、見事に折ってくださったのよ」

「えっ?」

「つまり、彼は『俺ってすごいでしょ!』と言いたかったのに、あなたは『全然すごくないわ!』と一途両断、真っ二つにしてしまったってわけ」

「ええええええええええええ!」

 そんなつもりはありませんでしたよ、本当に。

「見事に男のブライドをつぶしてしまったってわけです」

 そして、教えてもらったのが、題名冒頭の「さしすせそ」です。

「男の人と話す時は、「さしすせそ」の言葉を使って、良い気持ちにさせなきゃ。男はね、いつだって『自分はすごい』って思われたいんだから」

 とのことでした。

 まあ、そうですね。うん、それはとても大切なことですよね。

 でも……ちゃちい男に、それ言わないといけないんですかね?

「俺ってすごいでしょ!」ってやって、「うん、すごいね!」って言われたいんだったら、行動で示すことって大切なんじゃないかな。


 ちゃちい男に「すごいね!」って言うの、めんどくさいんですよ、本当に。


 



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