第四十六話「東京決戦」

遂に、スティンクホーが大規模攻撃を仕掛けてきた。

東京の街に、鬼性獣の大軍団を放ったのだ。

 

その、鬼性獣軍団の出現地点の中央。

スティンクホーの本拠地とされる王慢タワーにて、あろう事か、光とCコマンダーの反応が検出された。

 

そこに光がいる。

僅かな希望を胸に、セクサーチームは鬼性獣軍団蠢く東京へ向けて飛翔した。

 

今、地球最大の決戦が始まろうとしていた。

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

「くそっ………くそっ………!」

 

空自戦闘機の中で、その士官は毒づいていた。

否、怯えていたというべきか。

 

 

臨時設立された新政府は、東京を制圧したスティンクホーに対し、日米条約に基づき自衛隊と在日米軍の連合による反撃を決定。

各地の駐屯地から戦力が結集し、首都奪還作戦が開始された。

 

 

各地の自衛隊が一挙に集結したのだ。

その力は絶大な物だろう。

 

だが、それを差し置いても、侵略者の力は圧倒的であった。

戦車は踏み潰され、戦闘機は叩き落とされた。

作戦開始から五分で、早くも自衛隊勢力は、その半数を削られた。

 

彼の所属する戦闘機部隊もそうだ。

仲間の機体はほとんど撃墜され、次は自分の番が来ようとしている。

 

「くそっ………何が最新モデルだよ!これじゃまるで鉄の棺桶だ!」

 

彼の機体は、決して悪い機体ではない。

元より軍備に厳しく、さらに王慢党の事業仕分けによって予算をギリギリまで減らされていた空自で、現行機の老朽化を理由に少数だが買い付けた新型機。

 

もし、これが対人のドックファイトなら有利に事は進んだだろう。

 

ただ、問題があったとすれば。

 

PIEEEE!!

KIKIッ!KIKIKIKI!!

 

彼が相手をしているのが、人間ではなく鬼性獣だったという事か。

巨大な身体と、より早い反応、そして戦闘機の攻撃など豆鉄砲程度にしか思わないほどの装甲。

 

いくら最新の機体でも、勝てる相手ではない。

 

KIKIKIKIKIKIKIKI!

 

嘲笑うように口を開き、鬼性獣・ウゾーマが戦闘機に迫る。

 

「うわあ!来るな!来るなぁ!」

 

パニックになる士官を他所に、ウゾーマの翼が、戦闘機に叩きつけられようとした。

その時。

 

………KIッ!?

………PIEッ!?

 

何かが、上空からウゾーマを蹴り潰した。

何かが、パリピジョンを真っ二つに切り裂いた。

 

「………ろ、ロボット!?」

 

彼の眼前にいるもの。

それは、二体の鬼性獣を撃破しながら降下してゆく、三機のロボット。

そうだ。

他でもない。

 

セクサーロボだ!

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

PIEEEE?!

KIIIIIIIIAAAAAA!?

 

二体の鬼性獣の断末魔と共に、今や鬼性獣の占拠する街と化した東京に三機の機影がズワ!と土煙を立てて降り立つ。

 

「セクサービィィーーーームッ!」

 

何事か?と、鬼性獣軍団の視線が集中する中、土煙の向こうから射出される光の一閃。

射線上にいた鬼性獣が次々と貫かれ、爆発する。

 

「ダブルリスカタァーール!うおりゃああ!!」

 

土煙の中から飛び出すは、両手にリスカタールを展開したセクサーギャル。

 

GIEEEEE!!

POGYAAAA!!

 

すかさず、近くにいたボルトヨガンとギンスダンが光線を放った。

しかし、セクサーギャルはそれをものともせず、距離を詰めてリスカタールを振るう。

 

ズワーッ!と降り下ろされたリスカタールにより、二体の鬼性獣は真っ二つに切り裂かれ、爆発。

 

LOLOLO!

SHAAAAAAA!

 

間髪いれず、地上のセクサーギャル向けて、空から迫るジラージャとウーバリブ。

空中戦用の鬼性獣が相手なら、セクサーギャルは不利だ。

 

「………ヴィランソード」

 

だが次の瞬間、ジラージャの身体が縦真っ二つに切り裂かれる。

ジラージャは断末魔をあげる間もなく、ズワォ!と爆散。

 

LOLOLO?!

 

驚くウーバリブの眼前で、爆煙を切り裂いて現れるスリムな機影。

ヴィランソードを構えたセクサーヴィランだ。

 

LOLOLO!

KIKIKIKI!

 

我先にセクサーヴィランを討ち取らんと、高速回転したウーバリブが迫る。

その背後には、同じようにセクサーヴィランに向かうウゾーマやオオトモモンガをはじめとする空飛ぶ鬼性獣の群れ。

 

準はその姿を捉えると、セクサーヴィランのマスクを下げさせる。

迫る鬼性獣向け、セクサーヴィランの各部にある刺が展開。

そして。

 

「セクサープラズマーーッ!」

 

刺からバリバリと放たれる雷の嵐。

それは刃のように鬼性獣達の体表を切り裂き、その場に迫っていた空飛ぶ鬼性獣の群れの大半を撃破。

花火大会のように空に無数の爆発を起こす。

 

BUUUUUUM………!

 

離れた場所にいた鬼性獣の中で、二体のアマルジンガーに動きがあった。

その巨大な首を起こし、目を赤く輝かせる。

ミサイルの標的を定めているのだ。

 

一体はセクサーギャルに。

もう一体はセクサーヴィランに、それぞれ狙いを定める。

 

その口許が嘲笑うようにニィィと上がる。

そして。

 

VAOOO!!

 

咆哮と共に、二体のアマルジンガーの背中に生えた刺=ミサイルが、一斉に放たれる。

 

二機のセクサーロボに迫るミサイルの雨霰。

だが。

 

「ミサイルヘイル!」

 

気の抜けた叫び声と共に、アマルジンガー達とは別のミサイルが射出される。

それは、セクサーギャルとセクサーヴィランに向かっていたアマルジンガーのミサイルに命中し、相殺する。

 

VAO?!

BUUM!?

 

驚くアマルジンガー。

その片方の脚が何かに捕まれ、引きずられてゆく。

アマルジンガーを掴んでいたのは、蛇腹状の延びた腕。

その主は。


「必殺!六甲竜巻落としーーー!」

 

朋恵の操る、海のセクサーロボ・セクサースイマー。

延びた腕で重く大きいアマルジンガーをぶんぶんと振り回し、もう一方のアマルジンガー向けて投げ飛ばす。

 

VAO?!

VUMM!?

 

放り投げられたアマルジンガーは、もう一方のアマルジンガーに激突。

押し倒されたように、近くのビルに向けて倒れ込む。

 

「ビッグバスターミサイル!」

 

そこに、セクサースイマーの胸から放たれるビッグバスターミサイル。

高威力を誇るそれは、動けないアマルジンガー二体に向けて飛び、命中。

周囲の鬼性獣諸共、大爆発の中に飲み込んだ。

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

「見えるか?」

「はい」

「………あのロボットだよな」

「はい」

 

遠方に待機していた自衛隊・米軍の陸戦部隊からも、鬼性獣相手に大立ち回りを演じるセクサーロボの猛威は見えていた。

 

自分達の装備では歯が立たなかった鬼性獣を千切っては投げ、千切っては投げ。

 

『………隊長!上です!』

「なっ?!」

 

後方にいるオペレーターからの通信に、陸戦部隊の隊長がハッと上を見る。

 

GEGEEEEEEEN!!

 

雲を切り裂いて鬼性獣オオトモモンガが、陸戦部隊めがけて急降下による奇襲を仕掛けてきた。

恐らく、セクサーヴィランが撃ち漏らした個体だろう。

 

「迎撃は!」

「ダメです!」

「回避!」

「間に合いません!」

 

そもそも、この部隊自体鬼性獣との戦いで満身創痍なのだ。

逃げようにも、間に合わない。

 

GEEEEN………!

 

オオトモモンガの口許が、ニィィと上がる。

その時。

 

ズワォ!

 

突如横から飛来した弾丸により、オオトモモンガに爆発が起こる。

撃破とまではいかなかったが、そのボディを吹っ飛ばし、付近のビルに激突。

 

「今のは?!」

 

突如の事に驚く隊長。

弾丸の方角には、戦車も砲撃兵もいないハズだ。

なら、あの弾丸は?

 

『自衛隊の皆さーん、お仕事ご苦労様でーす』

『ここから先は我々ラッキースター小隊にお任せを!』

 

陸戦部隊の前に、見た事ないロボットが降り立つ。

ラッキースター小隊の操る、Cトルーパー・アサルトジャケット仕様だ。

 

PALOLOLOLO!

SHAAAAAAA!

 

そこに、地面を這いながら迫るモジョーズと、低空飛行で迫り来るジラージャ。

 

『来るよ!』

『攻撃開始!』

 

アサルトジャケットからのミサイルや、手にした専用ビームライフル、ロケットランチャーで迎え撃つラッキースター小隊。

 

「すごい、これがCトルーパー………セクサーロボの力」

 

ケーオンとは比べ物にならないCトルーパーの力を前に、ヒナタは息を呑む。

 

ビームから実弾に至るまで、セクサーロボと同じようにゼリンツ線を纏った攻撃。

それは鬼性獣を容易く貫き、粉砕する。

 

「これならいける………やれる!」

 

爆音を立て、ラッキースター小隊が突撃する。

彼女達もまた、スティンクホーの支配により苦渋を舐める事になった者達。

 

これで十年にも及ぶ王慢党の支配と、スティンクホーの侵略にピリオドを打つ。

ヒナタのCトルーパーの放ったビームが、その場にいた鬼性獣を貫いた。

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

「う、撃て!撃てーっ!」

 

場所は変わって、敗走中の部隊。

鬼性獣の驚異を前に戦力の大半を失い、追っ手を撒こうと必死に逃げ回る。

 

背後に向けて、戦車が弾丸を吐き出す。

その爆発の向こうから、一体の鬼性獣が現れる。

 

GAOOOOO!

 

リスカタールをも弾いたガシボの強化体・ヴォルケーノガシボだ。

 

頑丈な体表で戦車の砲弾を弾き、ヴォルケーノガシボが部隊に迫る。

最早ここまでかと誰もが覚悟を決めた、その時。

 

「レッツパーリィィーーーーーッ!!」

 

直後、一発の弾丸がヴォルケーノガシボを貫いた。

断末魔を挙げる間もなく、ヴォルケーノガシボが爆発する。

 

「ヒューッ!流石はヘリントン砲!鬼性獣など恐れるに足らずだぜ」

 

敗走中だった部隊が見上げる。

 そこには、バイク型の支援メカ「マシンガミネイナー」に乗り空を飛ぶ、大型ビームキャノン「ヘリントンキャノン」を構えた、一機のスーパーロボット。

 

「ニッポリエースだ!」

 

部隊の一人が、現れた救世主の名を叫んだ。

そう、そこにいるのはアメリカのスーパーロボット。

かつてセクサーロボと共に戦った、ビリーとコナードの夫夫(ハズバンズド)の駆る、ニッポリエースだ。

 

彼等もまた日米条約に従い、助太刀に駆けつけたのだ。

 

「エネルギー出力安定、行けるよ」

「よっしゃ!日米条約に従い、助太刀させてもらうぜ!セクサーロボ!」

 

再び、ヘリントンキャノンが火を吹く。

ターゲットは、なお迫り来る鬼性獣の大軍団。

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

セクサーロボとラッキースター小隊、そしてニッポリエースによる介入により、劣性だった自衛隊・米軍の連合軍は優勢に傾きつつあった。

それだけ、彼女達の猛威は凄まじかった。

一つの戦場の戦況を、丸々塗り替えてしまう程に。

 

「王慢タワーまであとどれぐらいある!?」

「あと300キロ!」

「よっしゃ!」

 

立ち塞がる鬼性獣を、バッサバッサと斬り倒してゆくセクサーギャル。

ヴィランソードをヴァイパーウィップに変形させ、数体の鬼性獣を一度に切り裂くセクサーヴィラン。

持ち前の火力で、鬼性獣を群れごと吹き飛ばすセクサースイマー。

 

「てめぇらが数で来ようと知ったこっちゃねえ、こっちはこれまでの戦いの中で成長を重ねて来たんだ!今更過去の強敵なんか出されたってなんともねーんだよ!」

 

涼子の言うとおり、セクサーチームは何度も戦いを重ね、成長してきた。

だが、成長してきたのはパイロットだけではない。

 

セクサーロボも、何度も戦いを重ねる中でアップデートを重ねてきた。

ロールアウトしたての頃とは、もはや別の機体と呼べるほどに。

 

今更、かつての強敵である鬼性獣が、たとえ束でかかってきたとしても、最早問題ない。

 

「準!朋恵!一気に決めるぜ!」

 

舞い上がるセクサーギャル。

何をするかは、残りの二人にも解っている。

言わなくても解るのだ。


「ええ!」

「まかせて!」


続き、空に舞い上がるセクサーヴィランとセクサースイマー。

彼女達の狙う先は、自分達に迫る鬼性獣軍団。

 

セクサーギャルの額が、セクサーヴィランの目が、セクサースイマーの指が桃色に光る。

そして。

 

「トリプル!」

「セクサぁーっ!」

「ビィィィーーーームッ!!」

 

セクサーギャルの額から、

セクサーヴィランの瞳から、

セクサースイマーの指から放たれる、ゼリンツ線の閃光。

 

合計13本の光のシャワーが、鬼性獣軍団を次々と貫き、撃破する。

巻き起こる爆発。

飛び散る破片。

そして、その中を悠々と駆け抜ける三機のセクサーロボ。

 

「待ってろ光!今いくぜーーッ!」

 

鬼性獣を蹴散らしながら、涼子が叫ぶ。

王慢タワーまで、あと少しだ。

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