第四十一話「強烈!エビルセクサー出現」

神野恵は、崖っぷちにいた。


度重なる作戦の失敗により、女帝から怒りを買ったのだ。

これ以上失敗すれば、女帝は間違いなく自分を殺すだろう。

 

よくても、自分もスティンクホーの「入れ物」にされるのがオチだ。

神野は、それが恐ろしい。

 

これは、セクサーチームを倒すための最後の賭け。

イケメン工場まで見つかるのは想定外だったが、余計に彼等を見逃す訳にはいかなくなった。

 

「ふふふ………“エビルセクサー”とでも名乗りましょうかね、今まで邪魔した分、きっちりお返しさせてもらうわ!」

 

エビルセクサーのコックピットに座った神野が、目を見開いてニヤリと笑う。

今まで、セクサーロボとの戦いで蓄積したデータ。


アメリカに潜り込ませていたスパイから回収した量産型セクサーロボの設計図。

その二つと、スティンクホーの持つ技術を掛け合わせて作った、“スティンクホーのセクサーロボ”。

 

エビルセクサーが、そのセクサーギャルを思わせる風貌で、セクサーチームの前に立ち塞がった。

 

「はん!何がエビルセクサーだ?ようはアタシらのパチモンだろ!」

 

対するは、サーバル号から負けん気の強いリアクションを飛ばす涼子と、ラッキースター小隊を廃工場前に降ろし、戦列に戻った光とCコマンダー。

 

「偽物は本物に勝てねーって事、教えてやろうぜ!な、光!」

「はい!涼子さん!」

 

直後、空に舞い上がる二機の機影。

そして。

 

「ユナイテッド・フォーメーション!」

 

光の掛け声と共に、Cコマンダーの合体プログラムが起動。

ジョイントを展開し、その姿を合体形態へと変える。

 

「チェェーーンジッ!!セクサァーーギャァァルッ!!」

 

そして涼子の咆哮と共にサーバル号の各部が展開。

Cコマンダーと重なり、それぞれの大事な所が連結する。

 

「くぅっ………♡」

 

腕が飛び出し、足が飛び出す。

ボディとバストが、ぶるるんっ!と展開し、形作られる。

 

「かはぁっ………♡♡」

 

サーバル号の機首が頭部に変形し、最後に腰に半重力マントがはためき、合体が完了する。

 

「「あああぁぁ~~~っ♡♡♡」」

 

二人の快感と共に、虎のように大地を駆ける黒きセクサー・セクサーギャルへの合体が完了した。

 

 

ズンと土埃をあげ、降り立つはセクサーギャル。

対するは、そのセクサーギャルを模して造られた、エビルセクサー。

 

まるで、西部劇の決闘のように、にらみ合いが続く。

そして。

 

「リスカタール!」 

「エビルカッター!」

 

両者の手首より展開し、互いにぶつかり合う刃。

 

これまで数多くの鬼性獣を倒したリスカタールだが、セクサーロボを模して造られたエビルセクサーには、やはり一筋縄ではいかぬようだ。

 

ガキンガキンと刃がぶつかり合う中で、次第に押されてゆくセクサーギャル。

どうやら、パワーは彼方の方が勝っているようだ。

 

「この野郎が!」

 

このままでは埒があかぬと、涼子は弾き飛ぶように、エビルセクサーと距離を取る。

そして。

 

「セクサービィーーム!」

 

飛び道具ならどうだ。

と、セクサーギャルの額から、ピンク色のセクサービームが放たれる。

 

「エビルビィーーム!」

 

しかし、エビルセクサーはそれすらもコピーしていた。

しかも、放たれたその光線は、セクサービームを弾き飛ばし、セクサーギャルに着弾。

 

「ぐわっ?!」

 

致命傷にこそならなかったが、セクサーギャルのセクサービームよりも威力が高い事が解った。

 

「ビームでまであっちが上かよ!」

 

パチモンのくせにこっちより強いのか?と悪態をつく涼子。

 

「涼子さん!パワーが上なら、こちらもパワーです!」

「だってよ、朋恵!」

 

光の提案に従い、セクサーギャルをドッキングアウトさせる涼子。

そこに割り込むように入ってきたのは、朋恵のアター号。

 

「ユナイテッド・フォーメーション!」

「ちぇいーんじっ!セクサースイマああーーっ!!」 

 

アター号の後部が展開し、そこにCコマンダーが突っ込む。

 

「はぁぁん♡」

 

同時に、突き上げられるように、アター号上部が変形し、ふっくらぽっちゃりした女のような上半身を形作る。

続いて、白い饅頭を思わせる下半身が変形。三つのキャタピラを持つタンクモードへと変わる。

 

「あああっ♡あっ♡」

 

最後に蛇腹状の腕と、スクリューから 爪(クロー) の付いたアームが延び、合体は完了する。

 

「「ひああああ~~~っ♡♡」」

 

二人の快感と共に、鯨のように大海原を行く緑のセクサー・セクサースイマーへの合体が完了した。

 

 

「どおりゃああ~~!!」

 

朋恵の気の抜けた雄叫びと共に、土埃をあげながら突撃するセクサースイマー。

 

「ビッグアームクローーっ!!」

 

頭部のビッグアームクローが唸り、エビルセクサーを殴り飛ばす。

流石にセクサースイマーのパワーには勝てなかったか、弾き飛ばされるエビルセクサー。

だが。

 

「そう来ると思ったよ………!」

 

直後、エビルセクサーの背後から迫る一機の機影。

アター号を角ばらせたようなその機体は、操縦席に金髪の男性の姿。

イケメン工場で量産されていたイケメンの中の一つと、同じタイプだ。

 

「“オキタ”!合体よ!」

「はっ!ご主人様!」

 

「オキタ」と呼ばれるイケメンの乗ったマシン「ガウェイン号」がパーツごとに分離する。

 そして。

 

「チェンジ!ガウェイン!」

 

神野の掛け声と共に、分離したガウェイン号のパーツがエビルセクサーと合体する。

 

「う、嘘………」

「合体した?!」

 

驚く朋恵と光の前で、ガウェイン号が変形した胸部と腕を覆うアーマーを纏うエビルセクサー。

 

「エビルセクサー・グラップルモード………叩き潰してやるわ!」

 

神野が目を見開き、エビルセクサー・グラップルモードが突撃する。

 

「この!」

 

対するセクサースイマーも腕とビッグアームクローを構え、それを受け止める。

 

「ぐううっ?!」

 

しかし、エビルセクサーのパワーは先程とは比べ物にならないほど上がっていた。

そのまま押されてゆくセクサースイマー。

 

「セクサースイマーがパワーで負けるなんて!」

「そんな物かしら?セクサーロボ!」

 

腕とビッグアームクローを掴んだまま、エビルセクサーがセクサースイマーを持ち上げた。

セクサー全身形態で最も重いはずのセクサースイマーを。

 

「ふん!」

「きゃあ!」

 

エビルセクサーはセクサースイマーを軽々と投げ飛ばす。

ズオ!と投げ飛ばされたセクサースイマーは、そのまま廃工場に突っ込んだ。

 

「こ、このぉ………!」

 

瓦礫の下になるも、なんとか起き上がるセクサースイマー。

その先には、得意気に笑うように見えるエビルセクサー。

 

「もう許さないんだから!ミサイルヘイル!」

 

瞬間、セクサースイマーのキャタピラの脚部が展開。

内部に内蔵されていた無数の小型ミサイルが、一斉に射出される。

 

雹のように降り注ぐミサイルで敵を爆砕する「ミサイルヘイル」。

流石のエビルセクサーもこれなら、と朋恵は思ったのだろう。

 

だが。

 

「ふん、エビルミサイル!」

 

エビルセクサーの追加装甲が展開。

こちらも、無数の小型ミサイルを放ってきた。

 

上空で両者のミサイルがぶつかり、セクサースイマーのミサイルヘイルは相殺されてしまう。

 

「ミサイルでもダメなの………!?」

 

ミサイルすら効かず、焦る朋恵と光。

瞬間、上空から降り注ぐ弾丸が、セクサースイマーに迫るエビルセクサーを遮る。

準のオウル号だ。

 

「光君、ヴィランに替わって!空中戦で行くわよ!」

「は、はい!ユナイテッド・オフ!」

 

準の提案を聞き、セクサースイマーがアター号とCコマンダーに分離。

 

「チェンジッ!セクサァーーッ………ヴィランッッ!!」

 

準の叫びと共にオウル号の後部が展開する。

上からのし掛かるように、Cコマンダーとそれぞれの大事な所が連結する。

 

「はぁっ………んっ♡」

 

突き上げられるように各部が延びて展開。

ムチィッと引き締まった女の形を作ってゆく。

 

「んひぃっ………んっ♡♡」

 

機首のドリルが髪のようにはためき、端麗なマスクが現れ、合体が完了する。

 

「「あああぁぁ~~~っ♡♡♡」」

 

二人の快感と共に、鳥のように大空を行く紫のセクサー・セクサーヴィランへの合体が完了した。

 

 

「キューティクルバーニア・全開!!」

 

唸りをあげて、キューティクルバーニアを吹かせ、セクサーヴィランが夜空に舞い上がる。

 

「空中からの攻撃なら!セクサービィーーム!」

 

空から牽制するように、セクサーヴィランの目からセクサービームが放たれる。

地上のエビルセクサーに当り、爆発が起きる。

エビルセクサーのダメージは、追加装甲のお陰でほとんどない。

しかし、傷はついており、何発も当たればタダでは済まないだろう。

 

準は、これを狙っていた。

空中から、空を飛べないであろうエビルセクサーを、一方的に攻撃する。

今のエビルセクサーには、セクサースイマーに使ったミサイルもある。

が、空を主戦場としているセクサーヴィランなら回避も迎撃も容易い。

 

これで勝てる。

何度もセクサービームを撃ち込みながら、準は確信した。

だが。

 

「来なさい!“ソウジ”!」

 

神野が呼ぶと、エビルセクサーの前に新たな機影が飛来。

ステルス戦闘機に似たそれは、セクサーヴィランのセクサービームを弾き、エビルセクサーを守った。

 

「嘘?!」

 

セクサービームを弾く強度に、驚く準。

その前で、その「ソウジ」と呼ばれたオキタと違うタイプの量産イケメンが、自分の機体をエビルセクサーの後ろに回らせる。

そして。

 

「チェンジ!ランスロット!」

 

神野の掛け声と共に、その「ランスロット号」の翼が大きく変形し、エビルセクサーの背部に合体する。

エビルセクサーに、翼が生えた。

 

「エビルセクサーに翼が?!まさか!」

 

驚く準の前で、エビルセクサーが翼から怪しげな光を発しながら、舞い上がる。

 

「そう!飛べるのよ!このエアロモードならねぇ!」

 

地面を抉るようなバーニア噴射と共に、エビルセクサーの巨体が舞い上がる。

エビルセクサー・エアロモードが、神野の笑い声と共にセクサーヴィランに迫る。

 

「こ、のぉ!」

「あーはははは!」

 

夜空を舞台に、何度も斬りあうセクサーヴィランとエビルセクサー。

 

空中戦に特化したセクサーヴィランだが、エビルセクサーは徐々にセクサーヴィランを追い詰めてゆく。

 

そして。

 

「エビルミサイル!」

 

エビルセクサーより放たれた無数のミサイルが、セクサーヴィランに命中・撃墜する。

落下したセクサーヴィランは、廃工場の一角に墜落。

このドッグファイトを制したのは、エビルセクサーだった。

 

「エビルビィーーム!」

「きゃああ!」

 

さっきのお返しだと言わんばかりに、地上のセクサーヴィラン向けて放たれる、光線の雨。

何発か撃ち終わると、ダメージで各分から火花を吹くセクサーヴィランの前に、エビルセクサーが降り立つ。

 

「男一人に女複数………そんな、童貞の書いた出来の悪い気持ち悪い駄文のようなセクサーチームの時点で、私に勝のは無理な話………」

 

まるで、ボロボロのセクサーヴィランを嘲笑うように神野の声が響く。

 

「くっ………好き勝手言ってくれるじゃない、自分だって、自分に従うよう弄くったイケメン味方にして、調子に乗ってるくせに………!」

 

緊急事態を告げる赤いランプに照らされたコックピットで、準が毒づく。

 

「………イケメン?」

 

単なる、意味のない愚痴。

しかし準の放ったその一言が、光の中で反復する。

 

………おそらく、政治家である神野は、ロボットの操縦においては素人同然。

いくらエビルセクサーの性能があるとはいえ、それがここまでセクサーロボを追い詰めたのは何故か?

 

そう。ランスロット号とガウェイン号のイケメン二人組だ。

おそらく、戦闘に対応できるよう、あらかじめ調整しておいたのだろう。

 

なら、それが失われれば?

 

「ラッキースター小隊、聞こえますか?ラッキースター小隊」


光は、ラッキースター小隊に通信を飛ばす。

 

『どったの?光くん』

 

受け取ったのは、小隊隊長のヒナタ。

一番話が解る人でよかった、と胸を撫で下ろし、光は言葉を続ける。

 

「エビルセクサーを倒すために、少し手伝って欲しいんです!」

 

光の言う、エビルセクサーの攻略方法。

それは………。

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