風船と少女


わたしがいつもの時刻に

一人っきりの部屋の中の

小さな窓から外を眺めると

広場の噴水に

少女がぽつんと立っていた

その手には

ぎゅっと風船が握り締められていて

わたしはその子に見憶えがあった

一体、何処で会ったのだろう?

真っ赤な風船は風が吹いても微動だにしなかった

………

それからしばらくの間、毎日、決まった時刻になると

その少女を見かけた

そしてある日を境に姿を消した

もう二度と見かけることはなかった

わたしはいつの間にか大人になっていて

きっと何かに騙されているのだろう


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