アメリカンユースカルチャー


日曜日

ベッドから転げ落ちたトム

首が捻られて

下を見れば尻の割れ目が確認、出来ると粋がっていた

「それってかなりやべーぜ」

おれは言った

なんだかんだでトムはその状況を楽しんでいるように見えた

ぷりぷりの尻をおれの方へと提示した

(太陽はいつ爆発するのだろう………?)

おれはなんとなく思った

明日か明後日ではないことは確かだ

おれの孫の孫の孫の孫ぐらいの奴が頑張ればそれで良いという結論に達した

そもそもおれに孫を作成、出来るかどうかは怪しいものだった

トムは相変わらずケツと表情が同じ場所を向いたまま

「おい、どうすりゃいーんだ?」

尋ねてきた

おれは言った

「ウエハースでも食うか?」

おれの話しの逸らし方にトムは愕然とした

大してうまくもないウエハースを実際、おれたちは食べてみることにした

ウエハースは流行の最前線

「ウエハースを片手に美女と湾岸伝いをドライブ!」

これがナウなアメリカンヤングにバカウケ

セックスに持ち込める率がかなり高いと超お勧めだった

だからカリフォルニアシティーには今、ウエハースが無い

何処にも無い

欲しいのに存在しないのだ

それは若者たちの荒ぶる魂の行き場を失わせ暴力的な破壊衝動へと駆り立てた

「ウエハースよこせよっ」

強盗殺人事件が起こった

あんな軽い物のためにもっと軽い人命が投げ捨てられたのだ

「ウエハースさえあれば、他には何も要らないね♪」

そんな若者たちの気持ちを代弁してくれる歌がヒッツ! ヒッツ! 大ヒッツ!

その人気はもちろんアメリカの支配下にある日本国にも飛び火した

老舗の寿司屋の引き戸を開ければネタとしてウエハースが乗っかっているのだ

「大将、マグロ」

その注文を聞き大将は不愉快そうに顔を歪める

「………いいウエハースが入ってるよ」

客の注文を無視してシャリにウエハースを乗せた物体を提出するのだ

それが旨いものを食べてもらいたい一心からくる心遣いだから客も黙ってそれを食べる他ない


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