たわわ


たわわなおれの部位が

さらなる膨張を開始した

たわわだ

かなりのな

どの方角から見てもたわわだった

口を挟む余地無し

おれは今、ホテルのバーでロマンティックな夜を過ごしている

恋人がカクテルを傾け、そっと呟いた

「あなたって、たわわだわ………」

グラスの中のスクリュードライバーが揺れる

確かにその通りなのでおれは頷く

おれは脊椎動物でそしてたわわだった

だからたわわではないなどとは口が裂けても言えないのだ

高校時代に友人の一人から言われた言葉をふと思い出した

「お前って、すごくたわわだよな」

放課後だった

おれは言った

「そうかなあ?」

友人は頷いた

「………多分お前って、自分が思っている以上にたわわなんだと思うぜ」

そいつはサッカー部のキャプテンを務めていて今は精神病棟で闇の帝国と戦っているらしい

………

何がたわわだよ

ふざけんじゃねえ

おれは突如、猛烈な怒りに身体を支配された

そしてたわわを引き千切った

おれのたわわだよ

おれがどうしようとおれの勝手だろ?

おれが死ねと言ったら死ね

恋人は隣りで絶句していた

よく見れば何の魅力も感じない人形のような女だった

おれはかつてたわわだった自らのそいつを見た

実際のところ何がたわわなのかよくわからなかった

不思議なたわわ

だがもう遅い

このたわわはそろそろ死ぬ


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