第11話 温度

で、しばらくこの世界に留まる事にした。


「でも、あやめさん」

「何?忠雄くん」

「あっちの世界、こっちの世界じゃわかりにくいね」

「うん、なら名前を付ける?」

「うん」

一応考えていたほうがいいだろう。


「君と、美里もだけど、本来いる世界が、動の世界。こちらが静(せい)の世界」

「ひねってないね」

「文句ある?」

「ありません・・・」

他にないし、それでいいや・・・


「じゃあ、まとめるね。忠雄くん」

「うん」

「静の世界にいる時に、生の世界に戻りたければ、睡眠前に私を召喚して。

目が覚めたら、戻ってるから」

「逆もだよね」

「うん。生の世界にいる時は静の時間が、静の時間にいる時は生の時間は動かない」

「うん。わかった」

「動物がいない以外は、基本は同じだけど、静の世界では死や病気の概念はないから」

僕の頭では、理解できないが、まあ、わかるだろう・・・


「後、食料だけはリンクしているから、食うには困らない」

「電気、ガス、水道もだね」

「うん」

「じゃあ、私はこれで、美里によろしくね」

「うん」

あやめさんは、去って行った・・・


さてと・・・


「美里さん、いるんでしょ?」

美里さんは、見ていただろう。

僕とあやめさんのやり取りを・・・


「気がついてたんだね」

「まあね」

美里さん、少し複雑な表情だ。


「本当にいいの?」

「うん」

「やはり、君は違うね、いい意味でも、悪い意味でも・・・」

「それが、僕です」


美里さんは、微笑む。


「じゃあ、改めてよろしく。美里です」

「こちらこそ、忠雄です」


差し出された手を握る。

あたたかい。


人の温もりが、そこにはあった。


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