第4話  訪問

「さあ、入って」

美里さんに案内される。


「誰もいないから」

美里さんに念を押されるが、確かにこの世界には、僕と美里さんしかいない。


リビングに案内され、待つように指示される。

少しして、美里さんがお茶を持ってきた。


「あらためまして。浪岡忠雄くん。私、佐久良美里」

「よろしくお願いします」

社交辞令だな・・・完全に・・・


「さっきも言ったけど、君のような草食男子は初めてだよ」

「以前は、肉食系だったんですか?」

「うん、見るからにナル男で、陽キャラだった」

「でも、美里さんくらいの、年頃だと、そういうタイプが好きなのでは?」

「以前はね・・・でも・・・」

「でも?」

それっきり、美里さんは、その話題には触れなかった。


「忠雄くんは、私をどうやって連れ戻してくれる?」

「冷静に見て、僕には無理でしょう」

「どうして?」

「僕が、『一緒に帰ろう』と言って帰るのなら、美里さんとは、今、会話をしていません」

「わかってるね」

褒めてないな・・・


「で、どうするの?君もここで暮らす?」

「それこそ無理です。アダムとイブには、なれません」

「本当に、草食系だね」

「ええ、自覚しています」

話が進まないな・・・


「ところで、美里さん」

「何?」

「あやめさんとは、お知り合いなんですよね?」

「まあね」

お茶を、静かに口に含んだ。


ふーふー言ってるが・・・猫舌か・・・


「あやめさんからは、何て訊いてるんですか?」

「私を連れ戻す男の子を派遣するから、今度こそ、戻りなさいって・・・」

「そうですか・・・初耳です」

「さっき、言ってたね、ただ探してくれと言われたって・・・」

「ええ」

僕で10人目と言ってた。

他の9人はどうしたんだ?


「前の9人は、私に根負けした」

「根負け?」

「うん。そしてあやめに願い出て、生き返ったよ」

確かに、なかなか難しいタイプかもしれない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る