第65話 庭園の座談会 その1
「ここ、アキリズ聖堂は、世界で一番大きい聖堂です。
マッキントッシュの私設騎士団、
「へぇ、そんなに古いんだ」
「えぇ、そうなんです。その昔、この辺りには、
「まぁ、恐ろしいわ」
隣に座るレイチェルが、ぎゅっとホリーの
「えぇ、恐ろしいのです。当時の人々もそれはそれは畏れていました。そこで、立ち上がったのが、大英雄オーディン閣下です」
「待ってました」
トーマスが、うまい具合に合いの手を入れた。どうやら、彼はこの話を既に知っているらしい。
「オーディンは、
「「「おー」」」
3人の歓声を待ってから、ケビン隊長は、続けた。
「大英雄オーディンの
「要塞って?」
レイチェルの問に、ケビン隊長は頭をかく。
「あぁ、これは失礼しました。要塞というのは、敵国と戦う際の拠点です。マッキントッシュ家がまだ、ブリテン王国と対立していた際に使われていたのですよ」
「まぁ、マッキントッシュ家は、王様と仲が悪かったの?」
「昔の話ですよ。今となっては、王とマッキントッシュ家に
「よかったわ」
ホッと胸を
「でも、不思議ね。こんなに大きな建物を、そんな昔に建てられただなんて」
「お、いい質問ですね、ホリーのお嬢ちゃん。確かにこれだけ大きな建造物を当時の技術で建てることは不可能です」
「じゃ、どうやって?」
ホリーが尋ね返すと、横でレイチェルが、パッと顔を明るくした。
「あ、わかったわ! きっと妖精さんが建てたのよ。それだけ昔なら、妖精さんもいるものね」
「ははは、そうかもしれません。ただ、もっと単純な方法でこの建物は造られたのです。トーマス坊ちゃんなら、おわかりですかな?」
ケビンに問われて、トーマスは、にこりと得意げに微笑んだ。
「えぇ、龍の骨を使ったんです」
「その通り」
ケビンは、眼前に見えるアキリズ聖堂の上面を煙草でなぞってみせた。
「このアキリズ聖堂は、怒龍トールの骨組みをそのまま使って建てられたのです。どうして龍の骨を使ったのかには、諸説ありますが、トールを倒すことはできたのですが、当時では、龍の骨を加工することも破壊することもできなかったので、こうして、建物としたというのが有力ですね」
「へぇ、だから、こんなへんてこな形なのね」
ホリーは、もう一度、アキリズ聖堂を
ただ、龍の腹の中で結婚式を挙げるというのも、別の意味でどきどきする話だ。
「あ、もう一つ質問。どうしてアキリズ聖堂というの? オーディンを称えるための建物なんでしょ?」
「ん? あぁ、それは様々な陰謀論がありますが、ただ単に、聖堂への改修工事の費用をいちばん出した貴族の名だそうです」
「……あ、そう」
聞かなきゃよかった、とホリーは、なんだか夢から覚める思いであった。
ちょうど、ケビンのお話が一区切りついたところで、タタタと足音が近寄ってきて、ちょうどホリー達の前で止まった。
「どうして追って来ないのですか!?」
そこで息を切らして立っていたのは、マッキントッシュブラザーズの世話役メイド、サラ・リネハンであった。
どうやら、今の今まで、ホリー達がとうに飽きてやめた鬼ごっこをしていたらしい。
ホリーは、無駄に息を荒げているサラを見て、素朴に思った。
あ、忘れてた、と。
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