エピローグ 〈無敗の女王〉

 ――六年後。

 セントラルで四年ぶりに雪が降った。

 四年前、雪が降ったその日は、雪のヘケル、スノウ・シルヴァソーロがオールメーラに入学した日だった。

 そしてこの日は彼女の卒業試合。

 舞い散る雪が彼女へのはなむけだと思えるのも当然だった。

 しかし試合の結果を見た者には、それが「彼女」を引き立たせるための演出と見えた。

 高い鐘の音が響く。

 雪が降り止み、雲間から陽の光が「彼女」に注いだ。

 オールメーラの青い制服を纏った背。そこに流れ落ちる藍色の髪。

 身に残る雪が光を受け、その姿をいっそう輝かせる。

 観衆の中に、「彼女」が己の弱さに泣いた日があったなど、想像した者はいないだろう。

 そこにいるのがまだ十一歳の少女であることも忘れ、感じずにはいられなかった。

 王者の威光を。

 未来さきの英雄を――


 これからなにかが起こるという、高揚を。

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