第6話 毎日のメッセージ、不思議な痛み
「お前やっぱ面白いよな、自慢の友達!!」
「本当? 嬉しいなぁ」
あれ、いつここに帰った?
普通に故郷の中学の風景だったから全く気にしなかったけど……え、中学? 今高校生の筈なんだが。
でも、目の前にいる男子は紛れもなく、中学の制服を着ている森川
懐かしい笑い声が教室に響く。僕ら2人の他に生徒はいないが、校庭からは陸上部の掛け声が聞こえる。
きっと古典の補習とかで、先生が来るのを待っている時とかそこいら。
樂と話しながら記憶を辿る。あんな会話があったような気もするようになってきた。
樂は社会と英語以外壊滅的で、僕は数学と理科以外壊滅的。中学時代はお互いに教え合ったりもしたものだ。
「よし、始めるぞ」
「うっわぁ、先生もういたんだ!? びっくりしたー」
「森川は敬語という物を知らんのか……」
ヘラヘラする樂。僕も笑顔になる。
「……ぶき。
この声、樂じゃない。この景色は……
「4限終わった瞬間眠りにつくなよ。昼休みあと3分」
「……まじ?」
「まじ。ちなみに次体育」
今度は勝手口の先の高校の教室。視界の大半が
さっきのは夢だったのか。通りで過去だった訳だ。
静止していると、奏太から急かされた。立ち上がり、体操服を取りに行く。
その時だった。
「ッ……!!」
どこも怪我なんてしていないのに、誰かに蹴られたような痛みが走った。
指の痛みなら背中よりかはまだ説明がつく。
だが、背中なんぞ骨折した事どころか打った事もないし、何か病気を患っている訳でもない。しかも、さっきのそれは誰かがわざとやった感じだった。
「おいおい、突然どうした? 体育見学する?」
「んー、多分大丈夫」
「なら良いけど……倒れるなよ、心配するから」
この世界に元々、今僕が操作している尾形伊吹という人物がいて、そのずっと前からこの体を操作している心の持ち主は早島奏太が大好きで、彼の優しさを何年も前から分かりきっているだろう。
その容姿端麗な尾形伊吹が知っている彼の優しさを、僕はこの短期間でとても体感している。
1日に何回も話しかけてくれ、様々な話題で笑い合う。一緒に帰っている時だってそうだ。
少しでも調子が悪かったりため息をつくと、すぐに気付いて心配してくれる。けれど、しつこく何かあったのかと聞くような事は無い。
僕や他の人の話は頷きながら聞く。しっかり声を拾ってくれていると分かるのがとても嬉しい。
話し上手で聞き上手、誰からも愛される人柄。彼はそんな人だ。
勝手口を開けて良かったと思う。奏太と出会えた事が本当に嬉しいのだ。
5限目が終わり、クラス全員の着替えが終わった。
約1時間前の静かな空間と同じ場所とは思えない程、話し声や笑い声が教室中に響いている。
僕らも、奏太の机の回りで彼や
そんな時、自分の頭の右下から小さな機械音が鳴った。
昨日と全く同じ音。また
近くにいる5人に断りを入れてから、ポケットからスマホを出して通知の内容を確認する。
やはり彼からのメッセージ。
『お願い、助けて。一瞬でいいから戻ってきて』
……助けて。
もし、さっきの痛みは樂の痛みなのなら。
そして、同じような痛みに毎日襲われているのなら。
そう考えた瞬間、戻りたい思いで頭がいっぱいになった。
幸い、今週は掃除当番ではない。僕は、今日放課後帰る事にしようと即決した。
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