十二 ガラスの棺

 ある晴れた日、お妃様と白雪姫は家庭教師やお供を連れて森の小人を訪ねました。

 小人達は白雪姫が訪ねて来ないので心配していましたが、きちんと授業を受ける為ときき安心したのでした。


「ねえ、一郎さんは? まだ、目が覚めないの?」


 キイチゴのパイをほうばりながら白雪姫が訪ねました。小人達はお妃様がお土産に持ってきたたくさんのミニケーキやサンドウィッチを好きなだけ食べています。


「一郎とは?」とお妃様が尋ねます。


 白雪姫が言いました。


「この先の洞窟に男の人が眠っているの。本当は死んだんだけど、でも、今は眠っているの。ガラスの棺に入れていたら、怪我が治ったんですって」

「ほう、それは見てみたいの」


 デルサム・トップは言いました。


「お妃様、あなた様は大変魔力の強い方と存じ上げます。あなた様ならガラスの棺の謎を解いて一郎さんを目覚めさせる事ができるかもしれません」

「ふむ、その者、一郎というのか?」

「はい、とてもうまいラーメンを作る男で、ぜひ、そのラーメンを食べてみたいのであります」

「ラーメン! ラーメンとな!」


 側で聞いていた侍従長も驚きました。


「お妃様! あのラーメン屋でしょうか?」

「これは一刻も早く確かめねば」


 小人のデルサム・トップが、怪訝そうに尋ねました。


「あのー、お妃様は一郎さんをご存知で?」

「いや、直接は知らぬが、ラーメンを食べた事がある。実にうまいラーメンであった。しかし、そもそも、あのラーメンが原因であった」

「は?」

「なんでもない。さ、その洞窟に案内致せ」


 デルサム・トップは早速お妃様を洞窟に案内しました。

 洞窟の奥ではガラスの棺の中で一郎が横たわっています。


「侍従長、いかがじゃ。あの者か?」


 侍従長はしげしげと一郎を見ました。


「はい、あのラーメン屋でございます。多少面変わりしていますが、確かにあの男です」

「ふむ、そうか」


 お妃様はガラスの棺を調べました。

 

「なるほど、エネルギーが足りぬな」


 お妃様は振り返ってお共の人達に言いました。


「皆の者、この棺を丘の上へ」


 お妃様の指示により棺が持ち上げられました。ゆっくりと運んで行きます。洞窟を出て、丘の上にそろりそろりと運びました。秋の日がサンサンと降り注いでいます。日当たりの良い場所に棺をゆっくりと降ろしました。


「ここを見よ」


 お妃様が棺の横にある模様を指差しました。

 太陽のマークが五つ並んでいます。五つの太陽の内四つの太陽が緑に輝いています。やがて、最後のマークが点滅を始めました。


「恐らく五つの太陽が全て緑になったら、エネルギーが満タンになり一郎は目を覚ますであろうよ」

「さすが、お妃様。素晴らしい英知でございます」


 皆、口々にお妃様を褒め称えます。

 待っている間に、五つ目の太陽が緑に輝きました。

 同時に、ガラスの棺の蓋がパンと開いたのでした。

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