第19話 EDOの街を探索してみた
「おいコタロウ行くぞ」
「ニャア」
ギルドを出たオレは
『ハチベエさん、ありがとうございました。本当に助かりました』
と礼を言う。
『良いってことよ。たまたま近くに念トモがいて丁度よかったぜ。また何かあったら、言ってくれ』
『はい。またよろしくお願いします。ではまた。』
気のいいオッチャン達かと思ったら、結構な有名人だったんだな。
そして念話友達のことを念トモって言うんだな。オレの念トモはコタロウとハチベエさんの2人か。
そんな事を思いながら、その辺を探索する。
まずは、WiFiが使える場所を探そう。アイには色々と聞きたいことがあるからな。
EDOの街並みは、まるで時代劇のセットのようだ。あるいはどこかの温泉街か?
舗装されていない道に粗末な木造の建物が並ぶ。色々と店があり、八百屋や魚屋などで女性が買い物をしている。時間が夕方ということもあり、往来にはたくさんの人が行き交っていた。
そんな中、いかにもな茶店を見つけたので入ってみる。店先には《WiFi使えます》と書いてあった。
中に入ると看板娘っぽい女の子から「いらっしゃいませ」と元気よくあいさつをされる。
「一人と一匹ですけど」
「奥へどうぞ」
と席へ案内されメニューを渡された。コタロウと席に座り、メニューを見る。
「オレはお茶と饅頭にするけどコタロウが食べれそうなのがないな」
『ニャ。僕もご主人サマと同じものにするニャ』
と言うのでお茶と饅頭を2つずつ頼む。
「お待たせしましたー」
早速、2人で饅頭をほうばる。
「うんめー」
異世界に来てから一か月以上甘味を食べてなかった。久しぶりに味わうと身震いするほど美味い。
味も現世で食べてた饅頭と同じ味だ。というかこっちの方が美味いかも。
見るとコタロウもムシャムシャ食べてる。現世では決して食べさせなかったんだけどなあ。まあ、いまは聖獣だからいっか。
(ブゥン)と音がしてウインドウが開く
『何かお伺いしましょうか?』
「うん。まず今回受けた依頼について、説明が欲しいかな?」
『はい。依頼書によりますと、(口臭街道の途中に女郎グモが巣を作ったために通行ができなくて困っている。)とあります』
なんか臭そうな道路の名前だなあ。
『ターゲットの場所ですがヒノモト橋から口臭街道を100キロほど下ったところで、行ったらすぐ分かるそうです。』
現世で言うところの日本橋のことだな。各街道の起点となってたって聞いたことあるな。
「ところでその女郎グモってかなり大きなクモなの?人を襲ったりするような」
『もともとの大きさはそれほどではありません。ところが長く生きることにより、普通のクモが妖力を持ち、妖怪となるのです。』
なるほど、言われれば9尾の銀狐もそうか。納得するが、まだ疑問点はある。
「依頼内容は、クモを討伐すればいいだけ?オレが倒したって証明は誰かしてくれるの?」
『今回のような高ランクの依頼だと証明する必要はありません。女郎グモが討伐された時点で依頼を受けた人の手柄となります。』
「え?そうなの?だって通りすがりの勇者が討伐するって事あるでしょ?」
『そういった事例はほぼありません。無報酬で命の危険を冒す人など普通いませんので』
なるほど。そう言えばそうか。じゃあ、依頼の件はこれくらいでいいか。
では次の疑問だ。
「ヒノモト国以外の国のことと、その関係を教えて」
『はい。この世界には、ヒノモト国以外になかつ国、ダルシム国、それと最大の強国であるユナイテッドステイツがあります。』
『まず、なかつ国ですが人口が一番多い国です。人種は我々ヒノモト人と区別がつかないくらい似ていてルーツは一緒だと言われています。次にダルシム国、この国は人口が2番目に多くて黒人と言われる肌の色が黒い人種が住んでいます。最後にユナイテッドステイツ、この国は他の2国に比べれば人口は少ないのですが、ダントツでお金持ちの国です。白人と言われる肌の色が白い人種が住んでいます。』
と予想通りの説明がなされる。
『この3国は、ヒノモト国に比べて広大な国土を持っており、人口も少なく国土も狭いヒノモト国は最近まで相手にされていませんでした。ところが今から10年ほど前、今の殿様に代が替わってから交流が開始されたのです。』
文明開化ってヤツだな
「なるほど、色々とよく分かったよ。あ、今夜寝る場所はどうしよう」
『こちらは冒険者向けの安宿ですが。食事なしで1泊4,500イェンです。』
ディスプレイ上に地図が表示される。見てみるとこの付近を案内していて丸印がついている。なるほど、ここから割と近くだな。よーし。明日は早いし、今日は早めに寝るかな。
「あ、でも宿には食事がないのか。コタロウどこかその辺でごはんにしよう」
『ニャア。僕はニクが食いたいニャ』
オッケーオッケー。
オレ達は茶店を出た。
食べ物屋を探す。結構多いな。
居酒屋っぽい店もあれば、うどん屋もある。焼き鳥屋やうなぎ屋もあるな。
でも、その中でも目に留まったのが牛鍋屋だ。
「コタロウ、すき焼き食おうぜ」
『ニャア。牛肉食べたいニャ』
牛鍋屋は往来にいくつもあった。その中の1つに入ってみる。
「いらっしゃーい。」
「1人と1匹ですけど」
と言うと店主らしきオヤジが、
「お客さん、ウチは動物お断りなんだよ。よそ行ってくんな」
と入店拒否された。
そうですか。じゃあ、よそに行くか。幸い、牛鍋屋は他にも沢山あるからな。
30分後、
「なんだよ、どこも入店拒否じゃねーか」
「にゃあ…」
オレ達は入店をことごとく断られ、町はずれまで来ていた。
すると目の前に牛鍋の看板が。
「あ、ここも牛鍋屋みたいだぞ。コタロウ、だめ元で行ってみるか?」
「にゃあ」
「すみませーん。1人と1匹なんですが…」
店を開けると、お客は一人もいない。夕飯の“書き入れ時”に誰もいないとは。こりゃヤバいな。
すると「いらっしゃいませー」と奥からオッサンが出てくる。
オレ達は退散しようと踵を返すが、「どうぞどうぞ」と強引に席を勧められる。
断り文句で「あのーネコがいるんですけど」と言うも
「かわいいネコちゃんですねー。このコもご一緒ですか?」と言った具合だ。
「しょうがない。期待はできないけど、コタロウも入れるしもうココでいいか?」
「にゃあ」
という訳で牛鍋を2人前注文する。
「ありがとうございまーす。」
30分後、奥に引っ込んだ店主はそのまま出てこない。
「お、遅い。遅すぎないか?」
「にゃあ」
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