第15話 冒険者ギルドへ
「コタロウ着いたぞ、ココが冒険者ギルドだ」
『ニャ』
オレとコタロウはある建物の前に立っていた。その建物は、西部劇の酒場そのもので入口は両開きの木の扉だ。それを両手で「バーン」と開けて中へ入っていくのだろう。
「いやあ。ここまで来るのに苦労したなあ」
『ニャ?あっと言う間だったような…』
そう、コタロウの言う通りである。距離的に800キロくらいあるのでこりゃー大変だと思ってたら、聖獣ヴァージョンのコタロウが
『ご主人サマ、僕の背中に乗るニャ』
と言うので乗ってみた。聖獣verのコタロウは相当大きい。車で言うならSUVくらいの大きさだ。その背中に乗った途端、音もなく走りだしあっと言う間にトップスピードに達する。乗り心地は恐ろしく良い。現世でオレの父親が退職金で買ったレクサスのセダンよりも良いくらいだ。
振動もないし、とても静かだ。
「コタロウ、凄い快適だよ」
『良かったニャ。闘気でガードして外気を遮断したんだニャ』
やはり聖獣様は、すごい・・・
そういう訳であっと言う間に、EDO近くまで到着したオレ達だったが、さすがに人里が近くなるとそれなりに人ともすれ違うだろうと思い、ソコからはネコverになり2人で歩いて来たのだ。結局、赤木が原からEDOまでわずか2日で着いたのである。
「よし、中に入ってみるか」
『ニャ』
と言いながらなかなかふんぎりがつかない。
酒場っぽい外見の建物は、年期が入っていてちょっと薄汚れている。両開きの木の扉は、片方の蝶番が取れかかっていて風が吹くたびに「キイ、キイ」と音を立てる。
そして、その扉の奥は、昼間なのに薄暗い。
コレ絶対、扉開けたら昼間っから酒飲んでるならず者たちに絡まれるパターンじゃねーか。
そう思うと、なかなか扉を開ける勇気が湧かないのだ。
『ニャ、ご主人サマ早く入ろうニャア』
「お、おう」
コタロウに促されてオレは意を決して扉を開けて中に入っていく。
「ギイ」
中は薄暗い。
想像通りに、酒場になっていて4人掛けくらいの木の丸テーブルが並んでいる。そこに3人の男たちがやはり昼間っから酒を飲んでいた。
その3人であるが、50代くらいのガテン系の気の良さそうなオッサン達だった。けっしてスキンヘッドだったり、刺青をしてたりとか、体中ムキムキだったりとかトゲトゲのついた皮ジャンを着てたりはしてない。3人とも純和風の顔といでたちであった。
ホッとしていると、彼らはオレに気付く。
とそのうちの一人が奥に向かって
「おーいママー。客が来たぞー」と叫んだ。
すると
「こら、私のことはギルマスって言いなさいな」
と言いながら、奥から女性が出てくる。
年のころは30前後くらいであろうか?
薄紫色の留袖(でいいのかな?)を着こなしキチンとセットされた長い髪を1本のかんざしで後ろにまとめている。
色っぽい大人の女性って感じだ。現世で、銀座の高級クラブにいても全く違和感がなさそうだ。
その女性は切れ長の目でオレの事をじっと見つめた後に、ニッコリ笑いかけながら
「あら、こちらさん初めてよね?今日は何の用かしら?」
と話しかけてくる。
女性経験が少ないオレは、テンパってしまい
(今日は冒険者登録をしに来ました)と心の中で返事をしながら
「ふわー。めっちゃいい匂いがするんだけど…」
と言ってしまった。
すぐに間違いに気づき、「あわわわわわ、緊張し過ぎて本音と建て前が逆になっちゃった。」
一瞬の沈黙の後、爆笑に包まれる店内。
「わははははは。面白いニイチャンだな。気に入ったぜ、お前こっちこいや。今日はおごってやるぜ」
オッチャン達は大喜びでオレをご指名する。そっちに行こうかとしていると、
ママが、いやギルマスが
「あなた、何しに来たの?本当に私の匂い嗅ぐために来たわけじゃないよね?」
といたずらっぽく笑いかけながら質問するので、また緊張しながら
「は、はひ。冒険者登録を…」
と言うと
「やっぱりね。じゃあ、ちょっとこっちいらっしゃいな。」
と言いながら手招きをする。
ついていくと奥はカウンターになっている。ギルマスが中に入って
「はい、コレに利き手をかざしてみて」
とカウンターテーブルの上に置いてある、丸くて平べったい機械のようなものを指さす。現世でコンビニなんかに置いてあったカードリーダーみたいなヤツだ。
言われるまま右手をかざすと「シャリーン」と音がした。
するとギルマスが「はいオッケー。今あなたの情報を読み取ったから」
と言いながら、オレに赤褐色の金属製のカードを渡す。
「これ、冒険者カードね。失くしたら再発行に10,000イェンかかるから失くさないでね。」
と言われた。オレが頷くと
「あ、自己紹介がまだだったわね。私はここEDOの冒険者ギルドのマスターをしているアヤよ。みんなからは、アヤ姉って言われたりこのおっちゃん達みたいにママって呼ばれているわ。よろしくねシュウ君」
「なんで名前を?ってさっきの機械か」
とオレが言うと、アヤ姉が
「そうそう、でも安心して。名前とジョブクラスしか読み取らないから」
と言う。
カードを見てみると裏にオレの名前と種別:勇者 って記載してあった。
するとアヤ姉が
「じゃあ、説明を開始するわね。冒険者は、ポイントによってランク付けされます」
ブロンズ 0pt~
シルバー 1,000pt~
ゴールド 5,000pt~
「最初は、ブロンズから始まります。まずはゴールドを目指してください。冒険者としてゴールド以上が一人前と言われています。」
ゴールドから上には、プラチナとかダイヤモンドとかがあり、最上級はブラックという階級があるそうだ。
「このポイントですが、討伐にて獲得したアイテムを換金したり、依頼を受けたクエストで受け取った報酬が対象に10,000イェンに付き1ptが加算されます。」
なるほど、ゴールドランクになるには、5,000万以上稼がなきゃならないんだな。
「次にクエストについて説明するわね。当ギルドに依頼された案件は、一旦私が目を通します。依頼内容に見合った報酬を設定しそれを依頼主が許可して、初めて依頼として正式に受理されます。その受理された依頼については、クエストの内容を記載した依頼書を作成し、2階の掲示板に張り出します。依頼については、誰でも引き受ける事は可能なんだけど一つだけ注意があるの。」
「はい。なんでしょうか?」
「冒険者が掲示板から、依頼書を剥がした時点で依頼を引き受けた事になるので本当に引き受けるかどうか十分に考えて依頼書を剥がしてね。もし依頼書を剥がして依頼のキャンセルをした場合には、その依頼の報酬と同額の罰金があるから本当に気を付けてね。更に依頼を引き受けて結局、達成できなかった場合も同じ罰則があるの」
なるほど、この制度により冒険者は自分の身の丈にあった依頼しか引き受けない。結果として依頼主は、自分の依頼内容をより迅速により確実に引き受けてもらえるってことなんだな。
「以上で説明は終了。他になにか聞きたいことある?」
「ここに来るまでに獲得したアイテムを換金したいんですけど…」
オレはこの世界の金を持ってないからな。するとアヤ姉は、
「いいわよ。じゃあ、このカウンターに換金したいアイテムを出して」
と言う。このカウンターって言ったって…
「あのー。結構、たくさんあるんですけど」
「いいからいいから」
言われるままに、カウンターにまずは山グリズリーの毛皮を出す。
「あら、山グリズリーじゃない。なかなかいい物仕留めたのね。あ、しかもコレ樹界産じゃないの」
とアヤ姉は、それをアイテムボックスに仕舞う。
続いて山グリズリーの肉、森ブタと山ブタの肉、森ネズミの肉 と言う具合に出していくがそれらを全てアヤ姉はアイテムボックスに仕舞いこんでいく。アイテムボックスを使うなら場所を取らないってことか。
「コレで全部です。」
買い取って欲しいものを全部出すとオレはそういった。
「はい。じゃあ今から鑑定するのでちょっと待っててね」
言われるままにその辺に座って待っていると
例のオッチャン達から声を掛けられる。
「おーいニイチャン。待ってる間こっちに来て一緒に飲もうぜ」
まあ、こっちの情報も知りたいしちょっとお邪魔するか。
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