第14話 見えてきた光明
「コタロウすごいじゃないかー。お前最強生物だな」
『ニャハハハ。ご主人サマそれは言い過ぎだニャア』
コタロウの急激なレベルアップによってすっかり有頂天になったオレとコタロウは、テンションが上がって浮かれた会話をしていた。
「あ、そうだアイ。今のコタロウだと9尾の銀狐との勝率はどうなっている?」
『はい。ちょっと計算してみますね』
また、しばらく後に
計算結果
単独での勝率 84.9% 2人での勝率85.0% (補正値 93.9%)と出た。
「マジか?楽勝じゃねーか。つうか単独で戦ってもオレが協力しても勝率0.1パーしか違わないってどうよ?」
まあ、どちらにせよこれなら大丈夫だろう。
「という訳でEDO行は中止で直接ZAOに行くぞ」
ところがここでアイが物申す。
『直接ZAOに行くのはオススメできません。』
「うん?なぜだ?」
『戦闘については、今のコタロウさんの攻撃力なら全く問題ありません。ですが、「最後の洞窟」は広大な敷地に複雑な内部構造となっており位置情報を獲得しなければかなり攻略に苦戦するかと思います。
更に言いますと、シュウさんもコタロウさんもこの世界のルールにまだ明るくありません。EDOに行き、冒険者として活動する傍ら、ここの生活環境に慣れて行く方が結果として近道になるかと愚考します。』
確かに現世でのオレは相当な方向オンチだった。車を運転するのに、カーナビは必需品だったので、広い洞窟に地図もなく入るのは怖いんだよなあ。
「うーん。でも1,000万イェンを稼ぐのは、大変なんじゃ?」
『今のコタロウさんの戦闘力なら高ランクのクエストも楽に達成できるかと思います。ですので、それ程時間はかかる事はないと思いますが…』
確かにアイの言う通りか。コジロウに一刻も早く会いたい気持ちは大きいが、急がば回れと言うしな。
「分かった。コタロウ、じゃあ予定通りまずはEDOに行くか」
『ニャ』
「あ、そう言えばEDOって人がたくさんいるよね?」
『そうですね。この国の首都ですから』
「聖獣であるコタロウがその辺ウロウロしてたら、大騒ぎにならない?」
『コタロウさんは、自分の力で姿を変えられるハズです。普段は、元の大きさになっていれば問題ありません』
さすが、聖獣様だ。色々な能力をお持ちだな。
「コタロウ、元の姿に戻ってごらん」
『ニャ』
と一言発するとコタロウは一瞬で元のネコの姿に早変わりした。
やはりコタロウはこのサイズが一番だ。オレはコタロウをダッコして頬ずりをする。
『ニャアご主人サマ、ヒゲが当たって痛いニャ、降ろして欲しいニャ』
とコタロウが身をよじる。
あ、このサイズになっても念話は使えるんだな。と思う反面、やはりダッコと頬ずりは断固拒否の姿勢に少しヘコむオレであった。
気を取り直して「よし、ではこれからの予定を確認するぞ」
1.EDOに行き、冒険者ギルドで冒険者登録
2.資金集め
3.携帯型WiFiを購入し「最後の洞窟」へ
だな。
「アイ、色々と世話になった。今度は、EDOの冒険者ギルドに着いた時だな。その時は引き続きよろしく頼む」
『こちらこそ宜しくお願いします』
『あ、それと』
とアイが続ける。
『もう夕方ですし今日は、コチラでお休みください』
え?と聞き返して辺りを見ると敷地の奥に社がある。その障子を開くと4畳半くらいの部屋があった。
『押入れの中に着替えも用意していますので、そちらにお着替え下さい』
押入れの中には、時代劇で町人が着ていそうな甚平とわらじが入っていた。着てみるとサイズも丁度良い。確かにオレの恰好は、この世界に渡ってからずっと上下のスウェットとスニーカーだった。特に違和感も感じてなかったが、この世界では異質なのだろう。
「重ね重ねありがとう」
と礼を言う。
その後は、アイに断って神社の境内にたき火を起こし、バーベキューにした。なんかバチ当たりな行為かと思ったが、この世界では神社は冒険者の宿泊施設みたいなもので普通のことらしい。山グリズリーの肉も食べてみたが、少しクセがある。コレは、単純に焼くよりも一工夫凝らした方が良さそうだ。
晩御飯を食べ、たき火などの後片付けをしたら社に入る。現世に比べたら質素な部屋だったが、久しぶりに建物の中でフトンにくるまって寝るのは、格別であった。
色々な出来事があって疲れていたのもあり、すぐに眠りに落ちた。そのまま朝までぐっすりと眠った。
翌朝目が覚めると、横でコタロウがすでに起きて伸びをしている。
「おはようコタロウ。よく眠れたか?」
『ニャア』
よーし。ではEDOに出発するか。でも一旦、ベースキャンプに戻らないと。
オレ達は、下山を開始する。途中、色々な動物に出会った。やはり主である山グリズリーを倒したことにより、今まで近寄れなかった動物たちが集まってきたのであろう。山ブタという森ブタによく似た動物がいたのでまた10匹ほど狩った。
「とうちゃーく」
オレ達は、ベースキャンプ(といっても大木にできたうろだけど)に帰ってきた。たった2日ぶりであるが、なんだか懐かしい。
異世界に渡ってきておよそ一か月、コタロウと共に過ごした日々を思い出す。長かったような短かったような…
辺りを見渡すと、たき火の跡といつも調理に使っていた石板が見える。毎日使っていたので、すっかり焦げている。そして周りには、オレが作ったヘタクソな湯呑やデカンタたち。
「コタロウ、今思えばここでの生活も悪くなかったよな?」
『ニャア。僕は楽しかったニャ』
そうかそうか。オレはコタロウにネコネコスティックをやりながらほっこりする。コタロウは相変わらず、ネコネコスティックを上げると夢中になってハグハグする。
コタロウは聖獣になっても通常運転だ。そう思うとなんか安心するな。
「早くコジロウに会いたいな」
「にゃあ」
オレはその場に腰を下ろしたまましばらく周りを眺める。そして、その光景を自分の目にしっかり焼きつけた後、立ち上がった。
「よし。じゃあ、行くか!」
『ニャア』
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