第4話 『からくりサーカス』

 はい、前回冒頭で言いました通り、次は藤田和日郎先生の超大作『からくりサーカス』について書きたいと思います。

このからくりサーカスを手にとったのは、やはり『うしおととら』の作者である藤田和日郎先生の作品だからです。

また熱い物語が繰り広げられるんだろうな、と思ってました。ですが裏切られました。いい意味で。



 『からくりサーカス』、正直読んでいて途中で、「これ大丈夫?最後畳めるの??」ってなるくらい、途中からストーリーが壮大になります。実際、最終巻は43巻です。しかも最終巻だけなんか分厚い。

しかし、この物語の大きな魅力は、その壮大なストーリーが見事に収束していく終盤にあると思います。

次々と入場、退場を繰り返す登場人物が織りなす物語は、筆舌に尽くし難いものがあります。


 さて、ここで『からくりサーカス』の主人公を紹介します。

 それが、小学五年生で、父親から多大な財産を相続した才賀勝(さいがまさる)です。

この少年、最初はとても気弱で、見ていて不安になる主人公ですが、段々とストーリーの中で変貌を遂げていき、やがては熱い心を持つことになります。

私は最初、『うしおととら』のような物語、を想定して入ったので、勝を見たときには、ちょっと拍子抜けした思い出があります。しかし、彼が真の主人公に育っていく姿は、まさしくこの大作に相応しいものでした。


 次に、メインキャラクターの二人を紹介します。

 メインキャラクターと言うか、もう一人の主人公と呼んでいい、加藤鳴海(かとうなるみ)18才。外見はがっしりした男性で、20代後半に間違われる場面も漫画では登場します。この加藤鳴海は、幼い頃中国へ移り住み、とある病にかかるまでは、拳法を学んで育った、腕っぷしの強い男らしい男です。彼もまた、ストーリーの中で変貌を遂げていきます。


 最後に、ヒロイン、と呼んでいいのか、なんと表記していいのか迷いますが、あえてしろがね、と表記します。

このしろがね、表情があまり表に出ない銀の髪と銀の瞳を持つ謎の女性です。ついでに言うならナイスボディ。そのボディ、欲しいです。

この3人が、出会うところから物語は始まります。



 ストーリーの入り口を簡単に説明しますと、拳法で強くなったはずの鳴海でしたが、謎の奇病に掛かってしまいます。その奇病の発作が起こった時、鎮める方法は唯一つ。「人を笑わせること」です。拳法にばかりのめり込んでいた鳴海が、その奇病の為に、人に少しでも笑ってもらおうと、ぬいぐるみに入り、サーカスのビラ配りのバイトをしていたところ、大きなトランクを持った少年に、「サーカスに、連れて行ってくれませんか…」と言われます。そこで漫画の中で選択肢が出てくるのです。「無視する」「話をする」の2択。

この表現は後々、随所にでてきます。


 この物語は壮大なストーリーが何よりもの魅力ですが、私はあえて、二人の登場人物に焦点を当てたいと思います。


 一人目は、「ギィ・クリストフ・レッシュ」です。女性を侍らかす色男として最初入場します。

しかし彼こそが、主人公の一人鳴海を、壮大なストーリーに導くキャラクターであり、そして、ヒロインのしろがねにとって、とても重要な役割を持つキャラクターです。

私はこのギィが、後述するルシールと同じくらい好きです。

そして彼が『からくりサーカス』の舞台から退場の際、彼の持つ、とてもとても優しい慈愛が垣間見えます。

第一話の『伯爵カインシリーズ』で書いた通り、私は『掛け値なしの愛』というものに弱いです。

このギィの、『掛け値なしの愛』を見た時に、私は静かに泣きました。


 二人目は「ルシール」です。彼女は、やせ細っている老婆で、黒い服をきていて、一見お伽噺にでてくる魔女のようにも見えます。しかし、物語を読み進めていく内に、彼女の人生は、長い長い人生は、殆どが真っ黒で塗りつぶされていることが解ります。

このルシールが、退場する時に残す長台詞があるのですが、その長台詞を、私は涙なしには読めません。

彼女の人生を思い、彼女の心境を思い、そしてなによりも、その退場を彩るように降る赤い雨が、どうしても涙腺を決壊させるのです。


 ですのでどうか、この『からくりサーカス』を読むときには、途中で『からくりサーカス』の舞台から離れてしまわず、ルシールの退場、そしてギィの退場までまで見届けてください。

そして、一緒に涙してくれたら嬉しいです。

二人の人生を想って。


さて、ここであなたに問います。


さあ、あなたは、あなたのサーカス(人生)に


→とびこむ


→とびこまない


是非前者を選択して、彼らのサーカスを見届けてください。

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