梅雨、長雨の降る
六月になっていたと紫雁が実感したのは、関東全域が梅雨入りしたと天気予報が騒いだ中旬のことだ。日付も曜日もランダムに詰め込まれる選考とバイトで生活していると、簡単に月日の感覚が狂っていく。週に一度、決まって木曜の三限にゼミがあるから、
明確な目標も未来像も持たない紫雁は、面接する人事としても扱いに難有りと判断しているようで、未だ内々定は無かった。根気良く、とポジティブにばかり考えていられるほど気楽な性質でもなく、焦りを押し殺しながら涼しい顔を取り
浮き世離れした雰囲気ではあるが人当たりの良い
新卒就活が佳境を迎えていると報道があったせいだろう。紫雁のスマートフォンには連日のように実家の文字が表示された。企業からかと手に取っては、画面を伏せてバイブレーションが止むまで耳を
着信拒否してしまうと後々面倒なのは分かっていたから、紫雁はひたすらに耐えた。不在着信の履歴と再生されない留守電が増えていく。
「
顔を合わせるなりそう言われる。珍しく律果が眉を
「寝ているのか? 食事は?」
「横にはなるしカロリーは
パウチのゼリー飲料と携帯食の数々がこれほど役に立つと思えたことは無い。微熱のように熱くぼんやりと
吐き出す息までも重い気がした。全身に溜まった
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