第18話 ペロ鎧
生徒会室。
私達は大会前の最終調整を行っていた。
「それで参加者の方はどうなっている?」
「主催者側の私達。暗黒騎士達。聖騎士達。で三チーム。
そして一般学生達は既に学内予選を行いまして三チームが決定しています。
学外からは冒険者ギルドに協力してもらいまして、ギルド内で予選を行って頂きました。それが三チーム。
そして王国からも協力を取り付けまして招待選手が三チーム。
計、十二チームで争われることになります」
散華ちゃんの質問にツヴェルフさんが答える。
「それでチーム名は出ているのか?」
「はい。先ず我々から『聖天使様の花園』、『暗黒……」
「!! 待て……却下だ! 私は聞いていないぞ! この名前、ソニアお前だな!?」
聖天使様の花園……考えたついた時は完璧だと思ったのだが……
「ええ!? ダメなの? じゃあどうするの?」
「保留だ……後で皆で相談する」
それは散華ちゃんがそう言った直後だった。
「うっ……くっ……」
突然、散華ちゃんが苦し気に呻く。
「!! サンゲ?」
「!? どうしたの? 散華ちゃん!」
驚いたツヴェルフさんと私が声をかける。
散華ちゃんは凄く汗をかいていた。色っぽいなどと言っている場合ではない。
他の皆も一様に驚いている。
私は何故かこの光景は昔見た気がした。
「大丈夫だ……少し眩暈がしただけだ。くぅ……」
あまり大丈夫そうではない。
ツヴェルフさんも心配そうにしている。
「ソニア。サンゲを保健室へ。後は私が引き継ぎますので」
「わかった!」
「……はぁ……ツヴェルフ。すまないがよろしく頼む。……ぐっ」
肩を貸すようにして、私達は後をツヴェルフさんに任せると保健室へ向かった。
保健室。
散華ちゃんは寝ている。保健医の先生は簡単な処置を終えると別室へ戻った。
今は安定して寝息を立てている。
「散華ちゃん……」
私は思い出していた。あれは……昔、見たことがある。
あの症状は確か散華ちゃんのお姉さんも苦しんでいた。
女神の血によるものだと言っていたはずだ。強すぎる女神の血の力に身体がついていっていないのだと。
お姉さんはそのせいで髪が白くなったほどだ。だから当時、お姉さんは病弱だと思われていた。
それが散華ちゃんにも起こっている?
私がそう考えていると。
「う、うん……」
散華ちゃんがゆっくりと目を開ける。
「……ソニア。心配かけた。もう大丈夫だ」
「いつからなの? それ、女神の血のせいでしょ?」
「……まあ、お前なら気づくよな。そうだ。いつからかと言えば嘆きの鎧を着た時だ。強大な闇の力を前にして消えそうだった私の血が目覚めてしまった。必死に抗ったせいだろう。気づいたのはその後だが」
「そう……それで本当に大丈夫?」
「ああ。今でも姉様は生きている。私もしばらくは安定しないだろうが、じきに収まるだろう」
「うん。ならいい」
そう言ったものの、私は動揺していた。
私が散華ちゃんを見ていなかったということではないのか?
確かに散華ちゃんは自分の事は隠してしまいがちだ。だが、それでも気づくのが私のはずだ。
闇の教団の暗黒騎士達、聖騎士達。そして武闘大会の準備。
色々あったせいで少々舞い上がってしまっていたかもしれない。
私は冷水を浴びせられたような気持になっていた。
気を引き締めなければと誓うのだった。
†
散華ちゃんは大事を取って帰宅した。そのあと私はやることがあったのを思い出していた。
「言いづらい……とても言いづらい」
私は頼まれていた。
先輩と師匠に大会の事を伝える役目だ。アリシア先輩は既に知っていた。そして了解を得た。
問題は師匠だった。彼女は私と同じでこういう目立つことは嫌いだった。
断られるのが目に見えている。
「どうしたものか……言ってみるしかないか」
そう迷いながら聖堂へ向かった。
会って早々に話を切り出すと、案の定、師匠は言った。
「嫌です」
「ですよね。そこを何とか……」
「無理です」
「ちなみに顔を隠せば出られたりは?」
「しません」
取り付く島もないとはこのことか……
わかってたことだが、諦めるしかないか……
一人でも欠けると、恐らく勝てない。他を探すにしても、間に合うだろうか……
そう思っていると、そこへ救いの手が差し伸べられた。
「出てあげたらどうだね。良い経験になると思うのだが?」
「教授! いらしてたんですね」
私は驚いた。どうやら師匠と話をしていたらしい。
「ああ。でもすぐ帰るよ。ちょっと様子を見に来ただけだからね」
教授はここの神父でもある。一応、管理者として偶に様子を見に来る。
「それで、どうだね? 私としても君の活躍は見ておきたいのだが」
「はあ……分かりました。教授がそうおっしゃられるなら。何かあるのですか?」
「いや、私にも分からない事はあるよ」
ん? 何の話だろう?
「ただ、気をつけなさい。とは言っておく。では失礼するよ」
そう言って帰り際。
「大会、頑張りなさい。私も楽しみにしているよ」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます」
教授はそう言って去った。
教授のお陰で師匠の参加が決まった。
拳を握りしめて私が喜んでいると。
「ソニア。顔を隠すとか言っていましたね?」
「あっ!」
自分の失態に気づいた。
だが、どうせ私もアレを着なければ参加できない。
私だって目立つのは嫌だ。つまり大会でどうせバレるのだ。
私は師匠に話すことにした。
「ここではちょっと……できれば師匠の部屋で」
あまり人が来ない場所とはいえ、警戒を怠ってはならない。
「わかりました」
師匠の部屋で私はそれを取り出した。
「それは! まさか嘆きの鎧ですか!?」
師匠が驚いている。結晶部分を見て気づいたようだ。
「はい。今は割ったので八分の一程度になっていますが」
「ソニア。貴方は……確かに破壊しろとは言いましたが、何故装飾品になっているのですか?」
「それを今からお見せします。」
私はそれを舐める。
師匠を見ながらレロレロと。
背徳感が半端ない。
「!! ちょっと、待ちなさい! 何してるんですか!」
師匠の顔が赤い。驚くのも無理はない。
私だってちょっと恥ずかしい。
一度口を離すと唾液が糸を引く。
「見ていてください」
そう言って師匠を制すると私はもう一度舐めた。
ペロペロ。
次第に激しく。
師匠は訝しんで今にも止めに入りそうだ。
するとペンダントの闇が濃くなった。
影が私を包む。
そして。
現れたのは闇の戦乙女。黒地に青の装飾の鎧。
「!! ソニア! 大丈夫なのですか!」
「はい。問題ありません。恐らく散華ちゃんを苦しめたのは女神の血のためでしょう。」
「! なるほど。確かに大丈夫そうですね」
「それに割ったせいで闇の力も弱まっています。戻れ!」
私が命令すると鎧がペンダントに戻った。
そして私は下着姿だ。
「これが代償です。服が無くなります。欠点と言ってもいいでしょう」
私は替えの服を鞄から取り出して着る。
同時にもう一つのペンダントを取り出して師匠に渡す。
「師匠にも差し上げます。いえ、これはドロップ品なので皆で分けましょう!」
「うう……あまり受け取りたくない物の気がします。」
私は強引に手渡す。
師匠はそれを渋々受け取ると。じっと観察している。
私は促すように。
「さあどうぞ! 私が見ています。危なくなったら止めます」
「え? いや、今じゃ無くても……」
師匠は躊躇している。
これは私が背中を押してやらねば!
「私が見たい! ……ではなくて今なら私が指導できます!」
しまった本音が。師匠に冷たい目をされた……素敵!
「はあ……分かりました。舐めます」
師匠はため息をつくと意を決するように宣言した。
そして顔を赤くしながら舌を伸ばす。
ぺろっ。
「まだです!」
ぺろっぺろっ。
「その調子です!」
だがそこで我に返ったのか止まってしまう。
口を離したせいで師匠の綺麗な唾液が糸を引いて光る。
「うう……私は何をやっているのでしょう。女神よ私はとても愚かな行為をしているのではないでしょうか?」
師匠が半泣きだ。可愛い!
だがここは心を鬼にして。
私は師匠のペンダントを掴むと迫った。
「さあ私が持っています。どうぞ」
「うう……強引ですね……」
可愛いけどやめてあげないのです。いえ、むしろ可愛いからやめてあげないのです!
師匠はもう一度挑戦する。
ぺろっ。
ぺろっ。ぺろっ。
「そうです。その調子です! さあ、激しくしましょう!」
そう言いつつ間近で見る師匠はとても綺麗だった。
私の心音がやばいくらい激しく鳴っている。師匠も同じだと思う。
レロレロ。
「さあ、もっと!」
師匠は目を伏せて一生懸命に舐める。
レロレロレロ。
すると。
闇が濃くなった。
私が離れると闇の影が師匠を締め上げる。
「うっ、くっ……これはっ…………くあっ……」
師匠は私より苦しそうだ。大丈夫か心配しながら見る。
そして黒地に銀の装飾の鎧姿になった。
美しい闇の戦乙女だ。
だが、膝をつき、苦し気に呻いている。
「はあ。はあ。はぁ……」
「師匠! 大丈夫ですか!」
師匠は息を整えると。
「大丈夫です。ですがこれはきついですね。私も女神に仕える者だからでしょうか? 光魔法が使えなくなっている気がします」
「そうなのですか?」
「ええ。まだ馴染んでいないせいかもしれませんが。これは練習が必要ですね」
「大会には着られそうですか?」
「ええ。間に合わせます」
師匠は努力家だ。間に合わせるだろう。
「ちなみに練習は私も見たいのですが?」
「ダメです」
無念。断られました。
「戻し方は、念じる様に言葉にしてください」
「戻りなさい!」
師匠の鎧がペンダントに戻った。
師匠が下着姿だ! 綺麗です!
師匠はすぐにクローゼットから修道服を取り出して着てしまう。
「何気に服が無くなるのは困りますね」
「そこが良いのです。……間違えました。そうですね。です」
師匠に
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