第一章 学園編
第15話 合宿終わり。その後。
合宿七日目。合宿の最終日だ。
明日からは学園。
なので今日は朝から皆で片付けをしていた。
私は手伝ったのか邪魔をしたのかよく分からない事をしていた。そんなことをしていたらすぐに午後になった。
解散の時間だ。皆が私にお礼を言ってくれる。
「世話になった。とても有意義な時間を過ごせたよ。ありがとう」
そう言う散華ちゃんはこの一週間で一番苦労したかもしれない。
「楽しかったわ。ありがとう。また呼んでね」
アリシア先輩も満足そうにしていた。
「楽しかったです。ありがとうございます」
ツヴェルフさんは少し心配だったが、大丈夫な様子だ。
「ええ。とても楽しかったです。ありがとう。また誘ってください」
何と! 師匠はあの時、とても嫌がっていたとは思えないくらいだ。良かった。
そして一息ついて散華ちゃんが締める。
「それでは合宿を終了する。今後は各自、励むように。解散!」
そうして皆が去った。少し寂しい気持ちになったが、また明日がある。
私は気持ちを切り替える。
皆と別れると、時間が空いてしまったので私は馴染みの鍛冶屋へ向かった。
「おう。ソニア。どうした?」
いつものように店へ入ると一人のドワーフのおじさんに声を掛けられる。
白髭禿頭で筋骨隆々。この店の店主だ。お婆ちゃんの知り合いでもある。一般にドワーフは鉱物の扱いが上手と言われている。なので鍛冶屋が多い。
「ドヴァンさん。これを見てもらえますか」
そう言って私は例の
「何だこりゃ。これ呪われてるだろ?」
ドヴァンさんは優秀な鍛冶屋だ。鑑定もできる。
「そうなのですか? ではこれを加工したりはできませんか?」
そう言えば師匠もそんなことを言っていただろうか?
「できないこたぁないが、やりたくはないな。呪われるかもしれん」
「じゃあ、呪われなければいいですよね?」
「まあ、そうだが。……何か方法があるのか?」
「私が呪い除けをします。そこで作ってもらえますか?」
無理を承知でお願いしてみる。
「う~ん。まあいいだろう。ソニアの頼みだしな。それでどうしたい?」
「ペンダントを六、いえ八お願いします」
六あればパーティーメンバー分は足りるだろうがギリギリなので予備として八にした。
「分かった。じゃあ奥の鍛冶場へついてきな」
「はい」
そうして私は呪い除けを鍛冶場に施した。念のためにドヴァンさんの仕事を見ている。
流石にプロなので仕事が早い。いや、ドヴァンさんだからかもしれない。
夜になるころには形になった。装飾は出来ていたものを取り付けてもらった。
呪い除けの効果で特に呪われることはなかった様子だ。
「まあ。こんなものだろう。ソニア。どうだ?」
「はい。綺麗です。ありがとうございます!」
私は綺麗なペンダントを八本、手に入れた。支払いを終えてお礼を言い、家へ帰った。
私は自分の部屋へ戻ると早速試してみる。特注なのでお値段はそこそこしてしまったがやむを得ない。
私の狙いが当たればこれはお守りになるはずだ。
自分の分の一つを取り。後はしまう。
その一つに舌を這わせる。舐めるのはペンダントの結晶部分だ。
ぺろ。
ぺろっ。
緩急をつけて。
音楽を奏でるように。
私は飴を舐めているだけなのだ。そう言い聞かせる。
そして。
それは起こった。
闇の影が私を締め付ける。
「おおおお!」
そして収まると私は闇の鎧を着ていた。
服の影響なのか黒地に青の装飾だ。しかも以前より露出部分が増えている。
「八つに分けたせいか。闇の力も八分の一程度になっているな」
散華ちゃんに渡すなら、これで良かったのだろう。ここまでは成功だ。
でどうやって戻るんだ? とりあえず。
「戻れ!」
命令してみた。
すると先の現象を巻き戻すようにペンダントに戻った。
「やった! ちゃんとペンダントに戻った! 成功だ!」
お金が無駄にならずにホッとする。しかし……
「服が無くなるのは問題だな。でも下着は残ったか。これも割ったせいか?」
もし失敗していたらそれはそれで師匠の望み通り破壊した事になる。だからこれで良かったのだろう。
私は下着姿でそう思った。概ね満足の結果だった。問題はいつ渡すかだったが……
先ず散華ちゃんには非常に渡しにくい。皆もこの鎧にあまりいい印象が無い。
「しばらくは無理だな……」
何かきっかけさえあれば渡せるだろうかと思うのだった。
次の日から授業が始まった。
授業が終わると師匠の下での剣の修行や、ギルドへ依頼を受けに行ったりする。
そんな感じでいつも通りの数日が過ぎた。
その間にグランさんとアンナさんに会った。
二人はパーティーを組んでいた。所属部隊が壊滅してしまったためだ。
まだ本調子では無いようでリハビリに軽い依頼をこなしているそうだ。
二人はこの間のお礼がしたいと言っていたので今度、皆で食事をすることになった。
そうしてしばらくきっかけも機会もなく、ペンダントは渡せずにいるのだった……
†
とある闇の会合。
複数の闇の仮面達が円卓で話し合う。彼らは闇の幹部達だ。
上座には一人の女騎士。
黒を基調とした武具に青の装飾。顔は目元まで兜で見えない。
闇の戦乙女だ。
闇の戦乙女が問う。
「では報告を聞こうか? 聖騎士達の様子はどうだね?」
対して答えたのは幹部の一人だ。
「はっ。聖天使様をお守りするはずの聖騎士達ですが最近、ますます増長している様子です。」
「ふむ。増長とは? 何があったのだ?」
「昼食時にお弁当を分け合うことだけでもおこがましいのに、聖天使様にあろうことか「あ~んして?」などというふざけた口を聞いていた輩がいるのです!」
その報告を聞いた他の幹部達から声が上がる。
「なんだと!」
「戦争だ!」
私も怒っている! 聖騎士どもめ。図に乗りおって!
私は同じことをしょっちゅうしている気がするが、それはそれだ!
だが私にも立場がある。一軍を率いる者が不用意に戦争などしてはならないのだ。
「私も憤慨している! 近いうちに必ずや罰が降るであろう。だが今はその時ではない。いずれ聖騎士共から聖天使様をお救いする機会が必ず来る。その時を待つのだ!」
私の言葉に皆が「「ははッ!!」」と了承をするのだった。
†
パーティーメンバーのミーティング。
いつも通り学園では生徒会長執務室だ。
「あれ? 散華、ソニアは? まだ来てないの?」
「ああ。今日は用事で来れないそうだ」
アリシアが私に聞いてきたので答える。そう言えば理由は聞いてない。
「そう。珍しいわね。散華より用事を選ぶだなんて」
「そんなことはないさ。あいつにもやることがあるからな」
「そうかしら。でも最近ソニアの様子がちょっと変な気がするのよね」
「そうなのですか?」
アリシアにツヴェルフが聞いている。最近のアリシアはソニアのことをよく見ているようだ。
「うん。どこがとは言えないけど……散華は何か知ってる?」
「いや、何も。ソニアが変なのはいつも通りではないのか?」
「う~ん。散華がそう言うならそうなのかしら」
そうは言ったがまだ納得していない様子だ。
「それに妙な噂も聞いたし」
「妙な噂?」
「知らない? 学園に聖天使様を祀る宗教ができたって噂」
「何だそれは! そんなものを許可した覚えはないぞ! それに聖天使ってなんだ?」
何という事だ!
生徒会長の私の知らない間に、そのようないかがわしい宗教などが作られるなどあってはならない!
「噂よ。私も詳しくは知らないわ」
「ふむ。それは生徒会として調べねばならんな。アリシアとツヴェルフも何か聞いたら教えてくれ」
「分かったわ」
「了解です」
その日のミーティングはそれで解散した。皆が去って私は一人残る。
椅子に深く座ると、自然にふうとため息が漏れた。
「一体何が起こっているんだ?」
私はその噂に不安を覚えずにはいられなかった。
翌日、私は生徒会室に生徒会メンバーを集めた。先の件を相談するためだ。
「最近、学内で妙な噂が流れている。なんでも聖天使がどうとか。何か知っている者は?」
その問いに副会長のツヴェルフが手を挙げた。
彼女が出世して副会長になったのである。前の副会長はまだ旅から帰って来ないままだからだ。
「会長。調べてきました。自らを『闇の教団』と名乗っている様です。なんでも「聖天使様を聖騎士共からお救いするのが我々の使命だ」と言っているそうです」
「どうしてそんなわけのわからない宗教が流行っている?」
「わかりません。ですが噂では今、集会の最中の様です。現場を取り押さえればわかると思われます。場所は地下の空き教室です」
副会長となったツヴェルフはとても優秀だ。いや、優秀だからこそ副会長となっている。これには私も驚かされるほどだ。
「なんだと!? いや、よくやってくれた。では皆、迅速に現場を押さえるぞ! 出陣!」
そうして私達は集会とやらの現場に急行した。勿論、気づかれない様に慎重にだ。
私たちは目的の場所へ近づくと中の様子を
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