第十葉 「ソーシャルケア」は逃げ口上
ケアの定義との関わりで、ちょっと横道に逸れますが「ソーシャルケア」という言葉について少しだけ触れようと思います。
ケアマネジメントの教科書や解説書のなかには、ケアマネジメントというときの
「ケア」を「ソーシャルケア」に限定するものがあります。なぜ限定するのかについては通常記されていないので筆者の真意は分かりませんけれども、結論を言ってしまえば、そのような限定は誤りです。
ソーシャルケアという言葉を使いたがる人には二つのタイプがあります。一つは、WHO(世界保健機関)が定めたICF(国際生活機能分類)がバイオ・サイコ・ソーシャルアプローチであることから、ソーシャルを分離して守備範囲だと主張するタイプです。もう一つは、イギリスの社会制度の体系上ソーシャルケアという領域があるので、それになぞらえるタイプです。いずれのタイプにも言えるのは、ケア全体ではなくソーシャルに範囲を限定することで、ソーシャルワークを専門とする研究者が自分の縄張りを主張する、逆に言えば他の分野を専門とする研究者とぶつからずに住み分けを図って確実にお金儲けをすることが隠れた目的であるということです。
しかし、前者のICF(国際生活機能分類)で言うバイオ・サイコ・ソーシャルの別は、それぞれ分離可能な3つのものを足し合わせるという意味ではなくて、1つのものに3つの側面があるという意味ですので、ソーシャルだけ個別に取り出し得ると考えるのはICF(国際生活機能分類)の理解として間違っています。後者のイギリスの社会制度の方も、日本で言えば厚生労働省の医療部門みたいなところでNHS(国民保健サービス)というのがあって5カ年計画を打ち出しているのですが、それによればソーシャルケアの制度的な根拠でもあったこれまでのような縦割り行政を止めて人間を中心としたケアのしくみ、「パーソナライズト・ケア」と言いますが、そういうしくみに作り替えていく方針が示されています。したがって、いずれの意味においてもケアをソーシャルに限定する理由は全くないのです。ケアとは何かを正面から問わなければケアマネジメントを語ることはできません。そこから逃げるためにソーシャルという言葉を軽々に用いることがあってはならないとわたくしは思います。あっ、バイオだとかサイコだとかいろいろ難しそうな言葉が出てきてしまいましたが、本題からはずれることなので細かな説明はここでは略させていただきますね。このおはなし会のおわりのほうで質疑応答の時間を設けますので、もしかしたらそのときにもう少し細かなことをお話できるかもしれません。
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