第47話 彼女が望んだ未来 (1)
前書き
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◇
暖かい日差しに目を細め、足を止める。世界がこんなに美しく見えたのはきっと気のせいじゃない。
「晴、傷が痛むの?」
微妙に違和感のあるイントネーションに苦笑しながら、隣に立つ夕貴に微笑む。
「ううん、大丈夫。ありがとう」
「やっぱり、車椅子借りてこようか?」
すっかり心配性になった夕貴の片手を取ってしっかり繋ぐ。
「セ、セイ!手!!」
「病院で支えてもらっている人なんて幾らでも見るじゃない。堂々としていれば大丈夫よ」
「……もう」
何だかんだ言いつつも嬉しそうに握り返す夕貴と並んでゆっくり歩き出すと、時折ふらつきそうになる身体を支えるように、夕貴が寄り添ってくれた。病院を出て、タクシー乗り場に向かう私達の後ろからクラクションを鳴らされ振り向くと、見覚えある車が目の前で停まる。
「案外、元気そうじゃない」
「お陰様でね」
「送ってあげるから乗って」
窓から顔を出した麗が繋いだ手に気づき、にやにやと笑うと、慌てて夕貴が手を離すのがおかしい。車に乗り込むにも一苦労で、随分身体が鈍っているのを自覚する。後部座席に座ると、車は見慣れた病院をゆっくりと離れていく。
「それで、どう? 新しい自分に生まれ変わった感想は」
「まだ、全然慣れないわよ。目が覚めて『立野晴さん』って呼ばれたときには、本当に生まれ変わったのかと思ったもの」
「あはははは」
麗がひとしきり笑った後、隣に座った夕貴をミラー越しに見る。
「折角二人で考えた名前なのにね、夕貴ちゃん」
「セイって漢字がなくて色々悩んだんだよ。最後に『晴』が良いと思って決めたんだけど…………嫌だった?」
不安そうな表情の夕貴が見上げてくる。
ああ、その顔は反則だ………
「夕貴が一生懸命つけてくれた名前を嫌いになるはずないじゃない」
「…………うん」
どことなく不安を拭いきれない様子の夕貴に笑いかける。目覚めてから今日まで私達はゆっくり話す機会がなくて、時折、夕貴が不安そうに思っているのに気づいていた。彼女と私の間には見えない溝が幾つも残っているのだろう。
「そういえば、麗」
「何?」
「どうして、私の刺された理由が愛人関係のもつれからの逆恨みなのよ」
「だって、他に思いつかなかったのだもの」
「思わず吹き出すのを我慢するの、大変だったんだからね」
「知らないわよ、そんな事」
「ふふふ」
夕貴の笑い声につられて笑うと、麗も笑っている。こんな穏やかな時間を三人で共有するなんて以前なら想像も出来なくて、夕貴の手に手をそっと重ねた。
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