第18話 孤独な心 (11)
前書き
昨日は一日中慌ただしくて、編集ミスがないかどきどきでした。毎回毎回投稿ボタンを押すのは勇気が要ります。
「なろう」でも更新しているのですが、この前書きコーナーだけは、全て違います。普段昼間にネタを考えて、更新前に書くのですが、フォロー、ブックマークを頂いた日には二話分考えています。それが同じ日に重なった時は………もうね、頭がプチパニックですよ (笑)
決してフォローしてほしくない訳ではないので、良かったら、是非どうぞ♪
何度受け取っても嬉しいですし、いつも「ヒャッホー!!」と叫んでおりますので。
常時募集中です。
◇
ぱちりと目が開いて起きる時間を確認した後、隣の布団に眠る夕貴を見た。規則正しい寝息にほっとしながらも、体調が心配で額に手を伸ばそうとしたが、また起こしかねないと思って止めた。その代わり、いつの間にか私の方に伸ばされている手に触れる。細い手は今だに熱い気がして、そっと持ち上げると自分の頬に当ててみる。手の持つ熱が気持ち良くてしばらくそのままでいた後、反対の頬に当て、それから自分の唇に当てようとして………思わず動きを止めた。
「…………」
手を下ろし、静かに息を吸って吐く、それを何度かして呼吸を整えると、夕貴の傍から離れた。無意識にしようとした行動が信じられなくて動揺したが、何とか落ち着いたようだ。
少し距離を近づけ過ぎたかな、何となくそう思った。あの人と夕貴を重ねるつもりなんてないし、この子を性的な対象として見ているわけでもない。ただ何となく放っておけないだけだ。こんなに誰かと一緒にいたことなんてなかったから、距離感が掴めていないだけだろう、そう結論付けると寝る前にスマホで検索した事に取りかかるべくそっと立ち上がった。
台所にスマホを見える様に置いて手順を何度か確認した後で、材料を見る。おそらく買い忘れたものはないはずだ。まず、鍋に水を300cc入れる、そこでふと、家には調理器具がないということに思い至る。どうやって量れば良いのだろうか………
「何ずっとお鍋とにらめっこしてるの」
「!?」
振り向くと、夕貴が立って私を見ていた。普段なら気付かないはずはないのだが、余程集中していたらしい。
「…………料理?」
「何で疑問系?」
思わずといった様に小さく笑った夕貴が隣に来る。広げられた材料とスマホの画面を見て「悩む必要なんてないじゃん」と何故か俯きながら呟いた。
「夕貴、寝てなよ。顔赤いよ」
「うるさい!誰のせいだと思ってるの!
お粥作るんでしょう」
「私が作るわよ」
「出来なくて困っていたじゃない、セイ料理したことあるの?」
「…………ない」
「だから、私が作るから!」
「だけど、調理器具買ってくれば出来るはずよ」
「これくらいなら、なくても作れるわよ」
「そうなの?」
驚いた私にかまうことなく、鍋にご飯を入れてざっと洗うと水を目分量で計り、火をつける。沸騰すると火を弱めて調味料を入れた。
「調味料は計らなくて良いの?」
「何度か作ったから大体分かってる。時々混ぜて5分くらいしたら火を止めれば完成だから」
「分かったわ。あとは任せて」
それくらいなら大丈夫だろうと引き受けると、夕貴は再び布団に戻った。それでも私の方を向いたままなのはお粥の今後を心配しているのだろうか。言われた通りに火を止めて、しばらく冷ましておく間、ようやく買ってきた体温計で熱を計る。
「大分下がったわね。お粥食べる?」
「…………折角準備してくれたんでしょう」
「作ったのは夕貴だけどね」
「………別に」
布団から身体を起こした夕貴にお椀によそってスプーンを渡すと大人しく口に運ぶ。食欲があることに安心していると、不意に、夕貴が慌てた様に私を見る。
「セイ、仕事は?」
「今日は偶々休みなの。だから、丁度良かったわ」
「…………そう」
本当は昨日の夕方から休みを取ったのだが、それを言えばきっと気にするだろうと前もって考えていた言い訳を告げると、まるで見抜いているように夕貴は複雑そうに私を見た。仕事柄、ポーカーフェイスには自信があったのだが、何故か彼女には通用していない気がする。
「ごちそうさま」
綺麗に食べ終えたお椀を持って台所に向かおうとする夕貴を押し留めて薬を飲ませ、無理矢理寝かせた。あの後、先生から精神的にも身体的にも疲労が溜まっているので、ゆっくり休ませるようにと言われていたのだ。
「私、もう大丈夫なのに」
布団の中でぼやく夕貴を監視するよう傍に座ると、そっぽを向かれた。内心苦笑いしながらもそのまま座っていると、スマホが小さく震えた。画面を確認した後、しばらく悩んでからテーブルに置いてそのままでいると、布団の向こうからやがて小さく寝息が聞こえてくる。くすりと笑い、彼女からの暗黙の好意に甘えると、身支度を整えて寝息をたてる夕貴に小さく声をかけた。
「麗に会ってくるね。お昼までには戻るから」
「…………馬鹿」
ドアを閉める直前、部屋の奥からそんな声が聞こえてきた。
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