#12

離婚が決まりかけた時にアイツと初めて会話したのを覚えている

本社の15階にある社員食堂は夜になるとBarに変わり酒が飲める


料理も出してたので出て行った女の余韻が蔓延する家に帰る前に食事をとってから帰るのがあの時の日課になっていた


出社前の朝独特の喧騒は寂しさを微塵も感じせないが帰宅後の夜の静けさは応えた


同じ会社働いてるが喋らない社員もいる中で顔だけは知っている1人だった小野寺理沙


隣でタブレットを開きながら食事をする彼女と現実逃避しながら晩飯を食べる俺

金曜日の夜は油断が隣にあって弱った俺は酔いが回ったのか焼きが回ったのか


酒の勢いを借りて理沙に話しかけてた


思ってた以上に離婚のダメージは大きく

淋しさを日に日に思い知らされた自分を見て俺も人の子だなと俯瞰してみたものの

淋しさは増幅する一方だった


一気に坂を駆け上がるようにアイツとの距離を縮めて週2日泊まりに来るようになった


習慣は人間性が出るのは仕方ないが俺もアイツも思いやる事が拙いかもしれない

歳を重ねても答えが出ないものに固執している


アイツも俺も昔の俺も


駐車場に着き車のドアを開けた時声が聞こえ


「そろそろ始まるぞ本当の痛みが」


周りを見渡しても誰もいなかった

空耳か、週の始めで疲れてないのにこれかよ

よっぽど朝の事がストレスだったのか

行くも地獄行かぬも地獄だな女は




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