#11

横浜の会社に出向くのもなれてきた

最近じゃ1人ではなく本社の人間と一緒に向かう


「最近寝言多いのは自覚してるの?」

悪戯っぽく少し笑いながら助手席の女からの質問に溜息を抑えながら答えた

「嫌なら1人で寝ればいいだろ」

「心配してるのよこっちは」


押し付けがましい心配よりも完全に楽しんでいるのが容易にわかる

肩肘をつきながらこちらを見ているのを視界に入れながら目的の場所まで向かっていた


「来週からソファーで寝たほうがいい?」

「別にそんなことしても意味ないだろ」

「決めてよアタシの家ではないんだし」

「朝から言い合いは勘弁してくれよ」


信号待ちで重たい空気に差し掛かった


「嫌いになった?」

「なってないけど」

「じゃーキスしてよ」

「もう着くぞ」


上手とか下手ではなく厄介な奴を引いた

ジョーカーしか持ってない相手とババ抜きをしている、まさにそんな女だ


「古川さんは料理とかするんですか?」

横浜の女性社員に人懐っこい子がいる

純粋無垢そうな彼女は仕事の合間に当たり障りない質問をしてくる

この質問が最近の癒しで、この癒しがなければ横浜に来るのが憂鬱になっていただろう


朝のジョーカーの質問とは大違いであっちは憂鬱そのもの、本人に言ったら十中八九噛みつかれる 正に言わぬが仏だ


「来週本社勤務になって小野寺さんのチームに入ることになりました」

「そっか良かったじゃん頑張ってね」

「小野寺さんてカッコイイですよね同じ女性として憧れます」


返す言葉が見つからず愛想笑いしか返せなかった


駐車場に向かいながら、さっきの会話が引っかかっていた

傍から見れば理想の女性かも知れないけど関係を持った男としては何とも言えない歯痒さがあった


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