#3

信号は赤のままなのでスキンヘッドに微笑んでみようと思い左を向くとさっきのスキンヘッドではなく見えるのはトラックのドアになっている

おかしいさっきは隣に止まっていたのは白いステーションワゴンだったのに

呆気にとられてトラックのドアを見てると後ろの車からクラクションを鳴らされた


車を走らせながらさっきの事を考えていた

おかしい確かに隣は白のステーションワゴン

ドライバーはサングラスをかけたスキンヘッドの男

ぱっと見てわかる筋骨隆々な体


都会の大通りで白昼堂々と幻でも見たのか俺は

そんな自問自答をしながら運転してると会社に着いた

朝に見た幻?蜃気楼?いやスキンヘッドの事が頭から離れなかった

あれ程クリアーに目にうつってたのに一瞬にして消えた男の微笑み


仕事中も思いだすあのスキンヘッドの男の事


まるで一目惚れしたように何度もあの男の顔が脳裏によぎる

惚れたのか?あの男に

40目前にしてゲイだったことが発覚したのか

男を見て性的に興奮したことなどないのに

そんな事を考えてると無意識に自嘲の笑みを浮かべていた


パソコンに映った自分の不敵な笑みを見て

今朝見た幻は疲労からくるものだと思うようにした

エレベーターで喫煙所のある地下2階に向かった

途中8階で止まり作業服の男が乗り込んできた

服の上からわかる筋骨隆々な上半身と帽子の上からわかるスキンヘッド


意識したものは目につくのが人の性

ニコチンで気分を落ち着かせれば

朝の出来事など記憶から薄れていくだろう


下降するエレベーターは1階で止まった

ドアが開き作業服の男が降りてドアが閉じかけ始めた瞬間

作業服の男が振り向き笑いながら何かをつぶやいていた


一瞬にして呆気にとられドアが完全に閉まる


完全に朝に見たあいつだった


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