夜の底




懐古に絶え間なく恐れ

川の淵でつつがなく夜を終える

ぼかす視界の中で音を聞く

明治の道路を聞く

ああ彼人もこんな朝を生きたのだろうか、と

ファブリックの褄をなぞり

帰路につきかけた

帰り道などなかった

どうせ誰も知らない

薄青の白がかかった遠路など

あの引き戸は開けられない


振り向くことはできないのだ

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