第22話

 色々と思うところはあるもののまずはこの国の国王に会わなくては話にならない。

 支部長のことを考えるのはそれからにしよう。


 翌日にカイは貰った鎧を着込んで王城へと向かっていった。

 一応バレたときのためにすぐ動けるように懐のナイフに手をかけながら……。

 それでもそんなことをしているとはバレないように表情は変えないまま近付いていく。



「ご苦労様です」

「おう、お疲れさん」



 挨拶をすると兵士も返してくれる。

 そして、そのままカイは城の中へと入っていく。

 すると突然兵士に呼び止められる。



「おいっ、ちょっと待て!」

「……どうしましたか?」



 笑みを浮かべながらもナイフを持つ手に力が入る。



「いや、今日の昼から手の空いてる兵士は訓練所で特訓らしいぞ」

「あぁ、助かる」



 用事はそれだけみたいなので、カイはそのまま城の中へと入っていく。



「なぁ、あんなやついたか?」

「かなり数がいるからな。全員の顔なんて覚えているはずないだろう?」

「それもそうだな……」



 兵士たちの笑い声を聞いてカイは少しだけ安心していた。





 城の中へと入っていく。

 兵士の格好をしているおかげでろくに怪しまれることなく見て回ることができる。

ただ――。



「おい、そこのお前。ちょっといいか」

「なんでしょうか?」



 突然知らない偉そうな男に声をかけられる。

 その男は恰幅が良く、服装は豪華なものでおそらく立場が上の人だろうと想像できる。

 相手が相手なので素直に返事をする。



「ちょっと食堂に行ってつまめるものを取ってこい」

「かしこまりました」



 こういった人物は逆らった方が時間がかかる。



「それでどちらにお持ちしたらよろしいでしょうか?」

「儂の部屋だ」

「かしこまりました」



 これで堂々と歩いていても疑われずに済む。

 さすがにただの兵士で身分の高い人がいる場所を出歩くのは目立ってしまうからちょうど良かったな。


 そう思いながらカイは食堂へと向かっていく。





 城の間取りは一応前もって確認してある。

 食堂までも迷うことなくたどり着いた。

 そして、そこにいる料理人の一人に声をかける。



「済まないが、何かつまめるような物を作ってもらえないだろうか?」

「……はぁ、またブラッシェ様ですね。かしこまりました、すぐにお作りいたします」

「ブラッシュ様?」

「はい、……新人の兵士の方でしたか。ブラッシュ様とは王位継承権第三位の国王様の三男です。とりあえず下の者を見下していることと、常に甘いものを食べているのであまり良いようには――。いえ、何でもありません。今言ったことは忘れてください」



 料理人は慌てて厨房へと入っていく。

 そして、数分待ったら料理が乗せられた皿を持って出てくる。



「こちらをお持ちください。で、では私はこれで――」



 料理人はそそくさと奥へと入っていく。


(あまり好かれている人物ではないようだな。そのうち依頼で来るかもな……)


 一応部屋の確認位しておいても良いかもしれないな。

 そう思いながら、ブラッシュの部屋へと向かっていく。


 そして、部屋の前にたどり着くと軽くノックをする。



「遅い!!」



 開口一番、怒鳴りつけてくるブラッシュ。


(なるほどな、これでは嫌われても仕方ないだろう)


 冷たい目で見ながらも表情は変えず、素直に謝る。



「申し訳ありません」

「ふんっ、わかれば良い」



 カイがもっていた皿を奪い取るとそそくさと部屋の中へと入っていく。



「では、私はこれにて失礼させていただきます。空いたお皿の方はまた後ほど取りに来させていただけばよろしいでしょうか?」

「気が利くな。それで頼む。私がいなかったら部屋の中から勝手に持って行ってくれ」



 それだけ言うとブラッシュは部屋の中へと戻っていった。

 さて、許可は貰ったことだし、後からじっくりと確認させて貰うか。

 それより先に依頼の方をやらないとな。

 国王の部屋は確かこのすぐ近くだったな――。

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