第3話 いってきます!
アンシュッツさんが説明に来た2日後。私は王宮からの馬車に乗り込もうとしていた。
何がいるか、どこに居ればいいか、この先のルートなどは、アンシュッツさんが置いて行ってくれた書類にすべて書いてあった。
大体は少しの服とか、薬草が準備できる人はそれとか、後は普通にお金とか。まぁ普通にいるよな、と言ったものばかり。
因みに正装と呼ばれる服はアンシュッツさんが用意してくださった。
ただ一つだけ、私だけに持ってこいと言ったものがあった。それが、メガネ。
私はたまにメガネをかけることがある。目が少しだけ悪くて、本だったりを読むときにだけ使うのだ。
お母さんが買ってきたやつ。
それより、どうして私がたまにメガネを付けることを知っていたのか。まさかそれも"魔力"を持っている人の特徴?そんなことある?
最初は怪しんでいたけれど、国家の人だからな、という考えで思考を停止した。
「ヴェン、いってらっしゃい。」
いつもはそんなこと言わないのに、お母さんは笑いながら言ってくる。
「ヴェンにそんな大役できないと思うんだけどなぁ・・・」
とかなんとかぶつぶつ言いながらもお母さんと一緒に送り出してくれるのは私の弟、ヴァルター。(通称ヴァル)
そしてこいつも私と同じ色の髪と瞳を持っている。ということはこいつも"魔力"を持っている可能性が高い。
あれ、アンシュッツさん100年に1度って言ってなかったっけ。私のスペアいるじゃない。
あれ、私死亡フラグ立ってる?もしかして、もしかしなくても。
「がんばってこいよっ!」
「いってらっしゃい。」
「ヴェンちゃんなら大丈夫。」
たくさんの人が声をかけてくれる。嬉しくて頬が緩む。
「・・・うん、行ってきます。」
そういって馬車に乗り込むと、さらにみんなの声が大きくなる。
皆の顔が見たかったけれど、窓の外に身を乗り出すのは危ないと思ったから、手だけを出してふった。
それでも同乗していた騎士さんには変な顔をされたけれど。
===
道中ずっと考えていた。
これから会う人たちは、1人を除きみんな貴族みたいなものだろう。貴族じゃなかったとしても、相当教養はいいだろう。1人を除いて。
さっきから言っている"1人"というのは勇者様の事だ。
勇者様とは、一般的に"まりょく"の成長が著しい人の事である。もちろん、10歳のころは微量のまりょくだったものが16歳くらいになった時に異様に成長し、規定値を超えている人の事。そして、勇者様はみんな髪が緑色。これは私の髪色が異質なのと同じようなものらしい。
勇者様は10歳の時に規定値以上になっていないが故、学園に入学できない。つまり教養がない。私も一緒だけれど。
それでも勇者様と私は天と地ほどの差がある。
勇者様は教養はないものの、パワーは普通の人間よりもある。
私は教養もない、使い方もわからない、見た目も異質。パワーなんてむしろ人以下。私、ほんとに必要?
===
王宮についた。
騎士さんの手を借りて、馬車から降りる。馬車なんて今日まで乗ったことなかったから少しお尻が痛い。
これからずっとこういう生活なのかなと思うとちょっと嫌になる。
それ以上に、貴族の人たちと過ごさなきゃいけないのが一番嫌だけれど。
「ヴェンデルガルド・アンガ―ミュラーさんですね?」
「はい。」
「私はアンシュッツ様の部下、バシュです。よろしくお願いします。」
「お願いします。」
「私が王宮の中をご案内します。」
バシュさんは、あのアンシュッツさんの部下とは思えないほどかわいらしく、ほんわかとした雰囲気をまとった犬みたいな人だった。
やはり、私の髪の色は異質なようで王宮の廊下でも、たくさんの人からジロジロと見られた。
「ホントにあの色の髪あるんだ」と言ったこえも聞こえた。
「つきました。」
そういわれて、意識をこちらに持ってくる。
「ありがとう、ございます。」
「では、どうぞ。」
バシュさんは、にこりと笑ってドアを開けてくれた。
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