第2話 説明お願いしてもいいですか?

「こんにちわ、ヴェンデルガルド・アンガ―ミュラーさん。」

「・・・こんにちわ。」


ゴットハルト・アンシュッツさんは冷徹というか、マジメそうで、裏では鬼とか呼ばれてそうなイメージを持った。

部下の人とかにすごい酷く当たってそう。

漆黒の髪と瞳、まったく笑わずに仕事を淡々とこなしていそうな雰囲気。

その全てが"冷徹"というイメージを生まれさせたのだと思った。


「まず、魔王についてはあなたも知っていますね?」

「・・・はい、一般常識の範疇は。」

「その程度で大丈夫です。あなたが知らない情報は、急所の角は十数分で再生しますが、角を両方折った状態でもう一つの急所である心臓を刺せば殺すことができるということくらいでしょう。」


急所が心臓と頭の角であることは、当たり前にみんなが知ってること。もちろん、私もローレンツもお母さんも村のみんなも。

ただし、角が十数分で再生するのは多分国家の人間くらいしか知らない。もしかしたら王都にいる人からすれば当たり前なのかもしれないけれど、ここら辺の人は多分誰もしらない。


「魔王の急所の事は知らなかったにせよ、魔王討伐パーティーについてはあなたが知っている通りであっていると思います。2日後に王都からの馬車が迎えに来ます。それまでにご準備を。」

「・・・あの。」


今まで私が言葉を発さなかったのにもかかわらず、突如声を出したからびっくりしたのか、アンシュッツさんは資料に落としていた目をこちらに向けた。


「何か?」

「あの、私10歳の時に受けたまりょく検査では全く反応しなかったはずなんですが・・・」

「はい。そうですね。そのように記録されています。」

「なら、どうして私が魔王討伐パーティーに?」

「あなたには魔力があるからですね。」

「まりょく?」

「違います、魔力です。」


「え?」


「魔力です。本来魔物が持つとされている力のことです。」


「え?」


アンシュッツさんは、私に淡々と告げる。もしかしてアンシュッツさん言葉が足りないってよく言われるたちかな。全くわたし理解できてないんだけれど。


「魔力って・・・なら私は魔物だということですか?」

「あぁいえ、そういうわけではありません。まれに生まれるんですよ。魔力を持った人間が。」

「まれに?」

「ええ。殿下のように色素が薄くお生まれになることもあるでしょう?それと同じようなものです。

大体100年くらいの周期で生まれ、その"魔力"を持った子が16歳になる年に限って魔王が動き出すんです。

貴方も今年、16歳になるでしょう。」


確かに、私は今年16歳になる予定。


「そして、魔力を持った子供は必ず赤とも紫とも言い難い異質な髪色をしているんです。あなたがそうであるように。」


この髪色、そんなに珍しいものだったんだ・・・

そういえば、さっき集まっていたのも村の人と言っていたけれど、子供ばかりだった。もしかして、村の大人は私が生まれた時から知っていた?


「この国では成人の際に王都に集まり国王から様々な話を聞かなければいけないという決まりがあるのは知っていますね?」

「はい・・・」

「その時に"もし子供が生まれた時、髪色が紫と赤を混ぜたような色だった場合、すぐに王都に連絡を入れるように"ということが伝えられるんです。

それを子供が知らないのは私達が口止めしているからです。」


私の想像はあっていたようで、

どうして口止めする必要があるのか、それも口止めされているようでアンシュッツさんは私が疑問に思っていることをわかっているはずなのに知らないふりをしているように感じた。


「わかりました。とりあえず、2日後にまた。」

「はい。呑み込みが早くて助かりました。ありがとうございます。それではまた。」


ぺこりとお辞儀をすると、丁寧にお辞儀を返してくれるアンシュッツさん。

流石宰相というか、礼儀はものすごくいい。私がそんなに上から行っていいような相手ではないと思うけれど。




というか、魔力って何ができるんだろう・・・。

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