3文字しかしゃべれない魔王ってどうよ。
@matunami0131
第1話 なんで私が魔王討伐パーティーに?
この世界には"魔法"と"まほう"の二種類のマホウが存在する。
平仮名の方は、私達人間が使う方。漢字の方は、魔物が使う方。
この世界は、魔法の量とまほうの量の合計が釣り合うことによって成り立っている。しかし、それが崩れることが100年くらいに1度ある。100年くらい、というのもそれを決めるのは魔王の気まぐれだからだ。
魔王とは、魔物の中で一番魔法の量が多い人。だいたいは血筋だけど、先代の魔王は子孫がいなかったため、魔物がすむ地域内での話し合いで決められたと聞いた。
魔物や魔王については普通の人なら誰だって知っている話。
___魔王の気まぐれ___
そんなものでも私達人間は滅びてしまえる。だからこそ、私たちはその魔力の根源である魔王の命を絶たなければいけないのだ。
魔王を倒すために結成されたパーティーを"魔王討伐パーティー"と呼ぶ。そのまんまだけど、それが一番分かり易くていいと思う。
それには数名の選ばれし者が入る。メンバーを決めるのは全部お偉いさんがやるから、私達普通の人間には関係のない。よほど多くのまりょくを持っていなければ、こんなド田舎から魔王討伐パーティーのメンバーが選ばれるはずがない。
少なくとも、今10歳以上の人間はだれもそのメンバーになれるようなまりょくを持っていないことは確かだった。
確かだった、はずなんだけどな・・・
===
「魔王討伐パーティーのメンバー決定!」
でかでかと見出しに書かれていたその文字。魔王討伐パーティーの決定が知らされた。まだ情報機器の発達をしていないこの村では、勿論レディオ(ラジオ)などはなく新聞で配達された。
王都からの情報は、私たちのもとには3日後に届く。3日もたっていればむしろ噂の方が広まるの早いんじゃないかなというほどだった。
と、そういうことはどうでもいい。
「ヴェンデルガルド・アンガーミュラー・・・!?」
一応、確か、これは私の名前だったはず。
なんで、私の名前がここに乗っているのかが意味不明だった。
なんで、私の名前がこんな豪華なメンバーと_知られてはいないにしろ、勇者として王都で一躍人気者であろう人と_一緒に書かれているのかよくわからない。
まりょくは貴族の方が多いとされていて、私は10歳のときのまりょく検査でも他の子と何ら変わりない数値を出したはずだった。というか出した。
私にはまりょくがないとわかって、どこかほっとした表情の母が印象的だったから、割と強く覚えている。
なんならお隣のローレンツに聞いてもいいくらいだ。
「おい!ヴェン!!どういうことだよ!これ!」
ノックもせずに入ってきたのは、ローレンツだった。
「わかんないよ、私だって今知って吃驚してるんだから」
「とてもビックリしてるようには見えないわよ。」
「あ、おばさん。」
感情が表情には出にくい方である私は、あまり感情をわかってもらえないことが多い。それでも、この村の人たちはみんな私にやさしいから。甘えられる。
「それより、これ、どういうことか説明して。」
「いや、お母さん。私にそんなこと言われたってわかるわけないでしょう?」
コンコンッ!
ドアが揺れた。お母さんが「観てくる」といってドアの方へ行く。
その間、私とローレンツの間に少しきまづい空気が流れた。
「もし、」
話し出したのはローレンツだった。
「もし、これがホントにお前の事だったら、お前どーすんの?」
「え?」
「お前、ここから離れんの?」
「・・・まぁ、それは・・・」
離れるしかない。魔王討伐パーティーはお願いではなく命令。
そう、選ばれたものなどに拒否権はないのだ。大体の人は喜ぶというよりは、それが当たり前だと言わんばかりの態度で王宮に出向くのだけれど。
「そうするしかないんじゃない。」
そういうと、ハァ・・・と隣でため息が聞こえた。
ローレンツ?
「まぁ、そりゃそうだよな、仕方ないか。」
ローレンツは、いったい何しに来たのか。仕方ないか、というとすぐに立ち上がってじゃあな、といって帰って行った。
ホントに何がしたかったんだろう。
「ヴェン。ちょっと来て。」
一息ついた私を呼んできたのはお母さんだった。
次から次に大変だなぁ・・・これが私じゃなくて同姓同名の誰かだったら大笑いだよね、ほんとに。
「こちら、宰相のゴットハルト・アンシュッツさんよ。魔王討伐パーティーの件についての説明らしいわ。
私は、外のガヤを沈めておくから、ちゃんと話を聞くのよ。」
お母さんの言葉に深く頷いて、私はアンシュッツさんの正面に座った。
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