桜とさくら

ミント

第1話

僕は、桜が嫌いだ。


電車で、登校する高校生。異国の正装かのように新たな制服を着て、期待に満ち溢れた瞳の新入生。そんな彼らを祝福するかのように、駅の風景に鮮やかな色彩を加える桜。舞い散る花弁が自然と道標となる。


そんな風景を横目に自分は脇にそれ、まだ人気のない商店街を通る。まるで、そこだけが切り離された異空間のように人気のない商店街を。

それでも、桜の花弁は風に吹かれてくる。


眼前を横切った淡い桃色を払い除け、顔を顰める。

自分はどうやら、未だにあの日を忘れられていないらしい。そんなことを思った自分に笑えてくる。


桜が好きだと言った君のことを。僕は何時まで覚えてるのだろう?











君とあったのは一昨年の夏で、君が死んだのは、丁度去年の今くらい。だから、半年くらいかな。君とすごしたのは。


病名は愛だったなんて言ってみる。実際は分からない。君は教えてくれなかったかし、聞こうとしなかったから。


なんで君と会えたんだっけな。……あぁそうか。

通学路に君が入院している病院があるからか。だから、先生に手紙を届けてくれって頼まれたんだ。そうだそうだ。それから、毎日のように君の元へ行ったんだ。


桜が綺麗だと。病室の窓から見える桜が好きだと。2人で花見に行きたいと。そう言って笑っていた君。好きな花の名前を付けてくれた両親に、感謝していると言っていた君。


思えば、君は何時も笑っていた。

こんな日が続く、なんて夢物語を見ていた。


結局、君は実に呆気なく死んだ。君は最後まで笑っていた。桜が満開に咲いていた日のことだ。











それでも。君はまだ居ると。また逢えると。そう思うこともあるから。そんなことを思ってしまう自分がいるから。


だから、嫌悪してしまうのだろう。桜を。君が居ないことを示すようだから。君の最後を思い出させてしまうから。笑っている君じゃなくて、眠っている君を。


きっと君のことを、何時までも覚えているだろう。君に伝えれなかった言葉を何度も言うだろう。



僕はさくらが好きだ。

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桜とさくら ミント @kannzakiAoi

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