鈴の音が聞こえた気がした

@nemutaineko

夏の日の思い出

うだるようなある夏の日

空の青さに目眩がするような昼

私は、鈴の音が聞こえた気がした


新社会人として慌ただしい生活をしていた私は、お盆ということで実家へと久しぶりに帰省していた

荷物を自室に置き、久々にゆっくりしようとすると母の呼ぶ声がした

「兄さんのところにスイカ持ってって」

自分が持っていけばいいのに。と思ったが叔父のところにも寄ろうと思っていたことなので仕方がない、ゆっくりしたかったのだが...。

叔父は祖母の神社を受け継ぎ神主を生業としている

「梅ちゃんか!大きくなったなぁ。久しぶりに来たのだからゆっくりしていきなさい」

家にいてもおそらく手伝いをさせられるだろう。ここはお言葉に甘えて神社でゆっくりしていくか。


叔父の神社は森に囲まれており風鈴の音とミ-ンミ-ンと蝉時雨が聞こえて夏はいつもここが一番心地いい。小さい頃は毎日のように神社へ遊びに来ていた。

「梅ちゃんは小さい頃よくここへ遊びに来ていたな。誰かと遊んでいたのかい?」

そう言いながら叔父が冷えた麦茶を持ってきてくれた。

「うーん、そうだねぇ。叔父さん、私の昔話を聞いてくれる?不思議な女の子の話」

そう言って私は叔父に神社で会った不思議な少女の話をし始めた


私は幼い頃、とても人見知りの激しい子で一緒にどこかへ遊びに行く子もおらず

毎日のように祖母へ会いに神社へと足を運んでたの。

あるよく晴れた日にいつも通り神社へ行った私はセーラー服を着た少し上の女の子にあった。

その子がその不思議な女の子。

名前は鈴奈、名字は教えてくれなかった。

鈴奈は私を見るなり「綺麗」と一言言って抱きついてきた。

もちろん私の中での彼女の第一印象は「変な人」だったよ。

その日から私が神社に行くといつも鈴奈がいた。

1ヶ月が経つ頃には冗談を言い合うくらい仲良くなっていた。

鈴奈を不思議な子だと思ったのは、お婆ちゃんが倒れた時。

大人たちがイライラしていて怖かった私は鈴奈といつも遊ぶところへ行った。

するとやっぱり鈴奈はそこにいて

「お婆ちゃんの枕元にこれを置いてあげて」と言って

小さな鈴の髪留めをくれた。

人が寝た頃に、言われた通り置いてから寝た。

そしたらお婆ちゃんすっかり元気になって驚いたよ。

彼女はそれからも何度か不思議な力で私を助けてくれたりした。

でも中学校に上がってからは遊べないまま。




私が話を終えると叔父が何やら考えた後ニカッっと笑って

「もしかしたらこの神社の神さまだったのかもなぁ。」

と言った。


〜♪

電話の着信がなる。どうやらそろそろ家へ帰らなければならないようだ。

境内の掃除をしていた叔父に一声かけ鳥居を抜けた


ふとその瞬間

私は鈴の音が聞こえた気がした

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