#4. 黄色
もし。世界から色が無くなったならば。
僕はぼんやりと考えてみる。色がなくなるとはどういう事だろうか。
目が進化して、光の反射を見分けられなくなったなら。
世界は真っ黒になるのだろうか。
あるいは、物々の光の吸収率が一定になって、色という観念がなくなったなら。
世界は真っ白になるのだろうか。それとも、ほかの色に染まるのだろうか。
何にせよ、闇の中に浮かんだ星が、大きな恒星に照らされて光を得るように、
月や地球が、太陽光を反射して青く、白く光るように、光は現実と切って離せない。
この世界には、光を作りだす生物がいる。
それは虫であったり、化学物質の塗料だったり、紫外線に反応しての結果だったりするのだけど。
そう考えてみると、これはすごい話ではないだろうか。
自分からあの光を出すなんて。太陽と同じような、燃える火と同じような光を灯すなんて。
人は、これだけ進化しておいて、目や頬や血や汗を発光させることが出来ない。
それなのに、人は光が無ければおかしくなってしまう生き物である。
虫のように、深海の魚のように、自ら光るすべを手に入れてしまえば、あるいは、扱いに困る電気や火を手に入れずとも視界を確保できたはずなのだけど。
電気や火は、ほかの使い方もあるが、それにはいまだにリスクが付きまとう。
今日土の中で眠っている蛍は、羽化の夜、あの光を見せてくれるだろうか。
季節が巡るまで彼らは光らない。
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