第72話 骨と鱗

吸血鬼とは人間でなくても人型であれば血が吸える。しかし各自に好みがある。例えばロゼは効率が悪いはずの少女の血を好むし、フラウは美味しいのなら種族など細かい事は気にしない。ベルも種族は気にしないが面食いというか、見た目重視らしい。そんなわけでフラウとベルにとって健康的で見た目も悪くない蘇芳と撫子は吸血対象だ。ついでに言うと今クララにも目をつけている。


「そういえばロゼは? こっちに来たら会いにくるよう連絡を受けたんだが」

「ロゼ様なら忙しくしてるよ。さっきもすごい量の骨持って歩いてたし」

「ホネ?」


フラウの目撃証言。ロゼも吸血鬼なので忙しく働いているのだろう。しかし食器や食事などパーティに必要そうなものならばわかるがなぜ骨?と蘇芳は気になる。骨付き肉の料理を並べてるならまだしも、まだパーティが始まってもいないのに骨。調理で取り除いた骨なら料理人が処分するだろう。


「私が見たときには鱗の詰まった箱を持っていましたわね。各種料理から生まれた生ゴミ……ではなさそうですし」


ベルも怪しげなものを運んでいるロゼを見たという。やはり運んでいるものは謎だが、つまり彼女はとても忙しくしているようだ。


「でも私達が手伝おうとしたら大丈夫って言われたんだよね?」

「ええ、私達に頼めるようなお仕事ではないようですわ。なのであまり詮索はせぬようにしました」


ロゼが簡単に頼めないような仕事なら蘇芳にも頼めない仕事かもしれない。

それでも念の為、蘇芳は手鏡を開き連絡を取ろうとする。だがロゼの手鏡とは繋がらなかった。


「だめだ、繋がらない。よほど忙しくしているようだな」

「ロゼ様とは会場ですれ違うかもしれません。それまでどこかでお手伝いをしましょう」


このままぼうっとしてるわけにもいかない。撫子は切り替えて手伝いをしようと蘇芳に提案した。仕事をしていればそのうちにロゼとすれ違うかもしれない。それまで手伝うのもいいだろう。


「あ、じゃあ蘇芳さんにはここのお仕事お願いするよ。ここ、受付なの」

「お客様の名前を書いて貰って、魔王陛下へのプレゼントはここで預かってください。ここに蘇芳様がいらっしゃるとなればロゼ様とも合流しやすいかと」

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