第71話 吸血鬼メイド再び

「あ、あの、蘇芳様も、お似合いです! これがツースなのですね」

「ありがとう。スーツな。怖いくらいに寸法ぴったりだったが、たまにはこちらの格好もいいかもしれないな」

「そうして髪を上げているのも、いいと思います。その、鬼のツノがよく見えて」


挙動不審だが撫子は蘇芳の格好も褒めた。違う国の服なので良し悪しわからないが、髪型はいいと思う。いつものもっさりした前髪があげられて、涼し気な目元やツノがしっかり見える。眉の動きもわかりやすく、普段より表情豊かにも見えた。


「お二人さん、そろそろ行くっすー。うちらお客だけど、地元魔物なんで手伝えるような事あればしといた方がいいでしょーし」

「そうだな。行こう」


三人はパーティの招待客ではあるが、まだまだ若く下っ端だ。もてなす側も顔見知りだし手伝える事はしておいたほうがいい。

宿舎から徒歩五分。三人は慌ただしい雰囲気の魔王城の玄関ホールにやってきた。

大理石の床に椅子と机を置いて、受付を作っている。来客はここで記帳するようだ。

その受付玄関ホールには二人のメイド服を着た少女が居た。ぴょこんぴょこんとポニテとツインテが揺れている。


「あーっ!蘇芳さんと撫子ちゃんだ!」

「お久しぶりです」


二人は蘇芳と撫子の顔見知りである吸血鬼の少女達だった。吸血鬼は血を吸うため、人間など吸血対象には生活管理するなど世話焼きだ。いかにも貴族ですという美しさを持つのにいつもメイド服を着ていて、こういうパーティには手伝いに自ら来るという。


「フラウにベル。君達も招待をされていたんだな」

「招待はされてないけど勝手に手伝いに来ちゃった。パーティの準備ってわくわくするよねっ」

「蘇芳さん、撫子さん、今日のパーティにはお肉が牛羊豚鳥魚など、たくさんあるのです。是非食べて血を増やしていってくださいましね」


はしゃぐフラウに抜け目ないベル。さすが常にメイド服か執事服を着た種族。世話焼きが行き過ぎてこういう場に対して積極的だ。しかし下心もあるのだろう。大勢の魔物が集まるこの場を吸血の機会と考えているらしい。


「おっと、おにーさんの知り合いすかこの二人。かわいーすね。紹介してくださいよー」


蘇芳をからかうように肘でつつきクララは言った。するとそれを期待していたのか二人は蘇芳よりも先に答える。


「フラウだよ。血は美味しければなんでもいい派の吸血鬼だよ。よろしくねっ、サキュバスのお姉さまっ」


ポニーテールの活発な方、フラウが言った。


「ベルと申します。血は美形であれば吸いたい派の吸血鬼ですわ。サキュバスのお姉さまもお美しいのでぜひお肉を食べて血を増やしていってくださいまし」


ツインテールの高飛車な方、ベルが言った。

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