第70話 パーティー準備
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蘇芳達にはカンヅメの救援などの仕事はなかったが、パーティの支度など忙しく過ごしていた。
パーティ会場の掃除や飾り付けなど、普段でかけていることの多い蘇芳と撫子であっても使われた。それにより魔王城に務める魔物達とも仲良くなれた。
さらには慣れない異国の礼服の準備もしなくてはいけない。とくに忙しかったのは撫子だ。いつまでたってもクララによるコーディネートは決まらず、新たに靴やカバンやアクセサリーを見に行ったり、化粧や髪を結う練習までしていた。
そして今日、パーティ当日はクララが早めにこ宿舎にきて支度を手伝ってくれている。慣れない礼服を着て、髪を後ろに流し小さなツノを出した蘇芳はひたすらに撫子の支度が終わるのを待っていた。
時折悲鳴や何かが聞こえたが、ようやく終わったのか扉が開く。
「できたっす。自信作っす」
満足そうに現れたのはゴージャスな美女、クララである。髪はきちんと巻いて結われ、露出の多い黒の光沢あるドレスを着ている。パーティ仕様の今の姿ならサキュバスと名乗られても納得だ。
「おお、ありがとう」
「いえいえ、こちらこそ楽しかったっすー」
クララは満足そうにため息をついた。どうやらコーディネートでかなり充実した時間を過ごせたらしい。
その撫子だが、彼女はそっと扉の影から蘇芳達を伺っていた。やがて自信なさげに、低めだが慣れないヒールをはいて部屋を出て来る。
結局は淡いグリーンのドレスを選んだらしい。そのドレスは体のラインに沿うようなものではなく、パニエでふんわりと広がったタイプのドレスだ。それに合わせた首飾りに髪飾り。髪飾りはブランのお下がりらしい。髪はいつものようにサイドポニーテールにしているが、毛先がゆるく波打っている。
「髪は緩めに巻いときましたー。なでチャン髪きれいすぎて下手にアレンジするとするりと取れちゃうんすよね」
「うん。いいんじゃないか?」
「良かった、保護者さんから『髪巻くのは下品』とかクレー厶あったらどうしようかと思ってたんで」
「そんな固い事は言わないさ。いつものまっすぐなのもきれいだが、波打つのも雰囲気が変わっていいな」
撫子はいつもきつく結っている。それは彼女の髪がさらさらとしていて、きつくないとすぐほどけてしまうからだ。
なのでいつもと違うゆるやかな結い方をしたいクララは撫子のコテで髪を巻いた。普段より柔らかな印象になった。蘇芳の反応もいい。というか、慣れない褒め言葉に撫子は挙動不審となった。
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